全国一宮 第19回「武蔵国一宮 小野神社・氷川神社」                             前編「小野神社」(2015年)

2016年11月28日

 

(写真・文、 光岡主席研究員)

 

 東京都内のある唯一の“一宮”はどこかご存知ですか? 
 京王線・聖蹟桜ヶ丘駅から近い多摩市にある「武蔵国一宮・小野神社」です。
 社務所に神主も常駐しない規模の小さい“村の鎮守様”といったささやかなお宮です。
 今では、「武蔵国一宮」は、誰もがさいたま市(旧大宮市)の「氷川神社」を思い浮かべますが、実は史実をたどると、中世以前は間違いなく、「小野神社」が「武蔵一宮」でした。「氷川神社」は元来「武蔵国三宮」で、広く信仰を集め「一宮」と称するようになるのは近世以降です。
 根拠は・・・、
 古代、赴任した国司が国内の主なお宮を参拝して巡るのを簡略化するため、国府の中に主なお宮の分霊を集めた“神社”を作りました、これを“総社”と言い、現府中市(古代の国府があった)にある「大國魂神社(おおくにたまじんじゃ)」がそれです。
 この神社は、古代、「六所宮(ろくしょのみや)」と呼ばれた創建以来今も「一宮を小野神社」、「三宮を氷川神社」としてお祀りをしています。

小野神社 鳥居

小野神社 拝殿


 小野神社」の祭神は、「天下春命(あめのしたはるのみこと)と「瀬織津姫命(せおりつひめのみこと)の2神。
 「天下春命」は四宮/秩父神社の「八意思兼神(やごころおもいかねのかみ)の息子と伝えられ、一説では
“秩父国造”の祖とも言われています。
そして、武蔵国小野郷に住んだ小野氏の氏神とも言われます。いずれにせよ、関東一円(武蔵、秩父)に根付いた豪族の神であったのでしょう。

 もう1神の「瀬織津姫命」は、「天下春命」が祀られる以前、このお宮の唯一の祭神であったとも言われています。
 古代、多摩川流域を開拓してきた民が、「水の神」「川の神」「治水神」「祓えの神」である「瀬織津姫命」に、洪水氾濫をもたらしてきた暴れ川「多摩川」を鎮め祀った・・・原始信仰が始まりだったのでしょう。
 今や小さなお宮ですが、歴史を感じさせてくれます。

随神門

京王線「聖蹟桜ヶ丘駅」

随神門 装飾「雷神」

随神門には素敵な装飾がありました

随神門 装飾「風神」

 

番外編

 

 ジブリのアニメで、1番好きな“初恋物語”、
「耳をすませば」の舞台が、「聖蹟桜ヶ丘」です。
 武蔵一宮「小野神社」より、有名かもしれません。

 

 駅前に、
 「耳をすませば」の舞台を巡る“
 散策MAP”の看板が立ってます。


 

大國魂神社(おおくにたまじんじゃ)
 
 先に書いた通り、古代、武蔵国に赴任した国司が国内の有力な“六つのお宮”の分霊を集め祀った「武蔵国総社/六所宮(ろくしょのみや)」が起源です。
 
 「大國魂神社」の祭神は、「大國魂大神(おおくにたまのおおかみ)」と「一宮」から「六宮」まで“六柱の祭神”です。
 そして、「大國魂大神」は、出雲大社に祀られる「大国主命」と同一神です。
 これは古代、“武蔵国造”となった出雲族の「兄多毛比命(えたもひのみこと)」が、一族を率いてこの地に移住、出雲大社から一族の祖神を分霊迎えて氏神としたことによると伝えます。
 
 「武蔵国総社」であったため、中世以降も、源頼朝や徳川家康等代々の将軍家から信仰厚く、今も広大な境内を有し、歴史を感じさせる大きなお宮です。

 

 参拝した時も「七五三」で訪れる親子で賑わっていました。

武蔵国総社「大國魂神社」 鳥居

大國魂神社 拝殿


 

武蔵国総社 六所宮

随神門

中雀門