2019年4月6日
(マラソン講座)データから読み解く航空事業
(第2回:2019年4月6日)
国内航空会社の系譜(概説)
前回の図表の概説です。
① 1985年時点; 日本の航空事業領域を定めた45/47体制の下で、日本の航空事業は実質
3社に限られていました。
・ 国際線と国内幹線を受け持つ日本航空(JAL)とその系統会社、
・ 国内幹線・ローカル線および近距離国際線チャーターの全日空(ANA)とその系統会社、
・ 国内ローカル線と一部幹線の東亜国内航空(のち日本エアシステム;JAS)とその系統会社
・ ほかはごく小規模な地方航空会社があるのみ
(JAL系統)
・ 沖縄の地域航空会社としての南西航空(のち日本トランスオーシャン航空となる)
・ 日中国交回復で中国路線を担うJALから分離して日台路線を担う日本アジア航空
(ANA系統)
・ 地方路線を運営する日本近距離航空(のち業域を拡大してエアーニッポン、更には実質的にANAグループの小型機材の運航を担うANAウイングスに進化)
(JAS系統)
・ 鹿児島県の離島路線(主に奄美)を担う日本エアコミューター
(国際貨物専用便会社)
・ ANAと日本郵船等物流会社が設立した貨物専用機による国際貨物事業の日本貨物航空が1985年5月に就航(のちANAは離脱して独自で貨物専用便事業を開始)
(その他地域航空)
・ 調布と伊豆諸島を結ぶ新中央航空(~94年まで新潟=佐渡線も運航)
・ 伊豆諸島ヘリ輸送をメインとした東邦航空
② 1986~1995年; 45/47体制廃止と規制の順次緩和で、主要3社はそれぞれ業域を拡大
(1993年には関西空港が開港)
・ JALは国内ローカル線に、ANAは国際定期便に、JASも国内幹線拡大や国際線への道が開けました(国内線ではダブルトラックやトリプルトラックなどの基準緩和)
・ JAL/ANAは機能別に系列の新規航空会社を立ち上げるなど事業を拡大
(JAL)
・ 西瀬戸エアリンクを受けついでコミューター事業(JALフライトアカデミーの一部門)を開始
・ 南西航空を日本トランスオーシャン航空と改称、Jet機を増強して本土線に進出
・ 沖縄離島路線を運航していた琉球エアコミューターが南西航空の傘下に
・ 外人乗員を使い、国際チャーター便やリゾート路線を担う低コストのジャパンエアチャーター(のちJALウエイズ)を設立
(ANA)
・ 国際線チャーター会社としてワールドエア-ネットワークを設立(のちエアージャパンへと変転)
・ 日本近距離航空をエアーニッポンに社名変更してJet機を順次増強、国際線にも進出
・ 中日本エアラインサービス(のち中部開港に合わせエアーセントラルに);名古屋空港をベースとしたコミューター会社としてANAと名鉄で設立
・ エアー北海道; 北海道内離島路線を運航、北海道/ANAの共同出資で設立(のち廃業)
(地方航空)
・ 長崎航空(のちオリエンタルエアブリッジ); 長崎県等の出資で設立、長崎県の離島便を運航
③ 1996~2001年; 参入規制撤廃 ⇒スカイマークなど新規航空会社が相次いで誕生
2000年改正航空法施行で需給調整規制撤廃、運賃規制も緩和(認可制→事前届出制)
新規航空会社が相次いで誕生
しかしながら大手の対抗価格設定、整備等の体制虚弱、羽田発着枠の少なさ等で相次いで経営
難に陥り、スカイマークを除いてはANAとの提携で立て直すことに
・ スカイマークエアラインズ(SKY;のちスカイマーク);1998.9月、羽田=福岡線に就航
・ 北海道国際航空(のちAir Do); 1998.12月、羽田=新千歳線に就航
・ ファエアリンク(のちIBEX); 2000.8月、仙台=関西線に就航
・ スカイネットアジア(のちソラシドエア); 2002年8月、羽田=宮崎線に就航
(JAL)
・ JALエクスプレス; 小型Jet機による運航を受け持つ航空会社として1997年に設立
・ J-air; JALフライトアカデミーのコミューター部門を独立させ、リージョナルジェット機を導入して事業拡大
・ 北海道エアシステム; 北海道/JALの出資で設立、1998.3月就航
・ ジャパンエアチャーターがJALウエイズと名称変更し、定期リゾート路線に拡大
(地方航空)
・ 旭伸航空; 1996.4月中日本エアラインサービスが撤退した新潟=佐渡線に就航(のち運休)
・ 天草エアライン; 熊本県などの出資で設立、2000.3月就航
④ 2002年~2010年; JAL/JAS統合、ANAは新規会社と提携強化⇒2強並立
(この間、中部国際空港、神戸空港、新北九州空港が開港された)
2002.10月、JALとJASが統合されて国内線・国際線ともに巨大な航空会社に
一方ANAは、経営に苦しむ新規会社と相次いで提携関係を強化
JAL/ANAグループともに、分社化で拡がった業域を2大基幹会社のもとに統合
(JAL)
・ 日台路線を受け持っていた日本アジア航空をJALに統合(2008.4月)
・ リゾート路線の運航を担っていたJALウエイズをJALに統合(2010.10月)
・ J-airの全便をJAL便化(実質JALの運航受託会社化)
(ANA)
・ 子会社として立ち上げたエアーニッポンネットワーク、エアーネクストをエアーニッポンに吸収すると同時に、ANAウイングスに改変(2010.10月)
・ 中日本エアラインサービスを子会社化してエアーセントラルに改称(2004.11月)、その後他のコミューター2社と同時にANAウイングズに統合
・ ワールドエアーネットワークをエアージャパンに改称してソウル/グアム/ホノルル線に就航(2002~2003年)、
その後貨物専用便や東南アジア線などANAの中型機運航受託で規模拡大
・ 日本貨物航空と袂を分かち、独自で貨物専用便事業開始(2005)
(その他の新規航空会社)
・ スターフライヤー(SFJ); 2006.3月、羽田=北九州線に就航、ANAとコードシェア開始
(2007)。
・ フジドリームエアラインズ(FDA); 2009.7月、静岡=鹿児島線等に就航、JALとコードシェア開始(2010)。
(地方航空)
・ オリエンタルエアブリッジ; ANAと提携を強めコードシェアを開始(2009.11月)
・ 旭伸航空(新潟=佐渡)、新規参入のエアトランセ、ギャラクシー(貨物便)も短期間で撤退。
⑤ 2010年~; JAL経営破綻⇒再建、ANA規模拡大⇒トップ企業に、LCC相次いで参入
(JAL)
・ 破綻(2010.1月)後、規模縮小と経営再建⇒高収益会社に
・ JALエクスプレスをJAL本体に統合
・ 貨物専用便事業から撤退
・ 8.10ペーパーの制約(再建後の規模拡大等の制約)→2017.4月;解放されて再び成長へ
(ANA)
・ 持ち株会社化して規模・基盤拡大、国際線でもJALを抜き名実ともに日本のトップに
・ LCC2社を傘下にして低価格市場も拡大へ
・ 唯一JALより弱いハワイ線にはA380を投入する
・ 国内線でも提携をさらに強化している
(中堅会社等)
・ SKY; 無謀な拡大で破綻(2015.3)のあと、ANA支援や戦略回帰で急回復
・ SFJ; 収益性悪化をANAの支援で乗り切り、強化された提携のもとで業績も回復
・ ADO、ソラシド; ANAとの強い提携関係下で堅実経営
・ IBEX; ANAの実質的運航受託会社に
・ FDA; JAL撤退後の小牧空港をメインベースとして成長、JAL提携も強い
(LCC)
・ 2012年LCC3社が就航; Peach Aviation(ANA出資)、Jetstar-Japan(カンタスとJALが出資)、AirAsia-Japan(AirAsiaとANAの合弁)
その後AirAsia-Jは、ANAがAA社との合弁を破棄したことによりANAの完全子会社(Vanilla Air)として再スタート
・ 2015年には新たにSpring-Japanが、2017年には前述と同名ながら全く別会社の
AirAsia-Japanが就航した。
・ なお2017.4月にはLCC優等生のPeachがANAの子会社となった。
(その他)
・ 天草エアラインはJALと全便コードシェア化(2014.4月)
・ 日本貨物航空; ANAと提携強化(含コードシェア)へ
次回(第3回)の予定です。
国内旅客の概観(1)~旅客数と事業構造~
新規会社相次ぐも、需要増効果は? LCCで10年前の規模をクリア
以上