2022.11.2.

米国LCC、業績急改善(7~9月実績)

  主要4社収入、コロナ前を大きく超え、黒字基調に

  燃油高騰を運賃UPで減殺

 

米国の主要LCC4社について、最近(202279月)の業績を概観しました。

回復顕著な国内線が主事業であり、3社がかなりの黒字に復帰した。

 

1.  主要4社の規模概観; Southwestが図抜け、3社が追う

 

 4社ともにLCCとして採算の取り易い小型機を採用。

   SouthwestSW)はB737系統、他の3社はA320系統の機材による。
但し、JetBlueはリージョナル機を併用している。

 

  機数規模と収入規模をみると、SWが圧倒的に大きく、JetBlueはその約4割、

SpirtはSWの1/4程度、Frontier15%程度である。

即ちJetBlue以下3社合わせてもSWの8割程度ということになる。

 

  リース機への依存はSWが2割弱と最も低く、JetBlueは約3割、Spirit4割、

     そしてFrontierは全機がリースである。

 

  (各社の特徴)

  SWは給与レベルが格段に高く、LCCとしては高コストであるが、独特で旺盛なサービスカラーで

     高い収入単価と高搭乗率を得て高収益会社となっている。

   JetBlueは座席数を減じてプレミアムサービスを提供、やはり高単価、高コストな会社といえる。

 

   SpiritFrontierは「ウルトラLCC」と呼ばれているように、文字通り超低コスト・超低単価の

     典型的なLCCLCCモデルである。

 

2.  主要4社の財務力比較

 

  資金力はSWが圧倒的に強く、手元資金が借入金(含リース債務)の規模を上回っている。 

   その額は収入の1.7ヵ月分程度である。

 

  他の3社はいずれも借入金が手元資金を上回っており、その規模はJetBlueが収入の▲2.3ヵ月

   程度、Frontierが▲6.6ヵ月程度、Spiritが▲8.1ヵ月程度である。

 

 

  純資産額もSWが最も大きく、収入の5.6ヵ月分程度、JetBlueSpirit4.8ヵ月分程度、Frontier1.8ヵ月分程度である。

 

3.  最近3か月間(79月)の収支実績(コロナ前の2019年及び前2021年との比較)

 

 コロナ前は4社ともに利益率が高く、いずれも10%を超えていた。

  2021年は軒並み赤字であったが、政府の給与補助金の効果で3社が黒字計上した。

 

 当期は全社の旅客収入規模がコロナ前を大きく上回った(+7+36%)。

  燃油高騰の影響を強く受けて費用も増加したが、収入増が効いた。

 

  損益は、Spiritのみ赤字で残ったが、他の3社はいずれも黒字化した。

 

4.  最近3か月間(79月)の収益性指標(コロナ前の2019年及び前2021年との比較)

 

  供給・需要ともに全社がコロナ前の規模以上となり、搭乗率もコロナ前に遜色ないレベルとなった。

 

  燃油高騰によるコストアップが大きいものの、旅客単価の上昇でそれを減殺した。 

しかし旅客単価UPもコストUPを「相殺」するまでに至らず、B/E(採算ライン)は611ポイント

上昇し、収益性向上の足かせとなっている。

例えばSpiritは、搭乗率83%を達成したが、B/E86%とそれを上回るレベルまで悪化したため、赤字から抜け出ることができなかった。

 

   燃油UPを吸収する運賃UP、運賃UPの中での搭乗率UP、そしてコストの引下げ、

 

FSCとの競争のみならずLCC間の競争も更に激しくなりそうである。

 

以上(赤井)