2022年10月2日

数字で読み解くAIRDOとソラシドエア(続)

  2021年度の国内線市場と両社の位置、そして持株会社効果は?

 

前回の続編として、2021年度の国内線旅客市場と、そこにおけるAIRDO、ソラシドエアの位置づけに

ついてみていきたい。(データは国交省資料による)

また最後には両社統合メリットについて私見を述べることにします。

 

1.2021年度の国内線旅客数

 2021年度の国内線旅客数は、コロナ前と比べると半分※にすぎないが、これを会社別に並べると

 下図のとおりである(単位千人)。

            ※2018年度104百万人↘2021年度50百万人

 

(コロナ前比でみた特長)

     LCCPeachSKYJetstar-Jを抜いて、一躍3位に。

 ANAグループ戦略に沿ってネットワークを拡大、コロナ減便も少なく、積極的に販売したため。

     一方で、コロナ減便が多く、路線撤退もあったJetstar-Jが低下。

 

     ネットワークを拡大した地域航空のFDAが、僅かながらスターフライヤーを抜いた。

     大手では、大幅減便をしたANAと、比較的に減便が少なかったJALとの差が縮小した。

 

 

     そんな中で、AIRDOとソラシドは約110万人でほぼ並んでいる。

2.2021年度の旅客シェア

 

  ANA37%に対し、JAL33%。

 

 LCCPeachSKY8%)を抜いて9%に、Jetstar-J6%。

 

 

 AIRDO、ソラシドは夫々2%強。

2021年度の旅客単価

 

  ・大手ではANAの単価が高い(JALが低い)

   が、推定理由としては、

   JALは短距離路線が多いことに加え、減便が

   比較的少なかった→低価格販売の影響も

   あったと思われる(ANAはその逆)。

 

 ・ スターフライヤーの高さは、ビジネス客割合が高い

       ことと関係していると思われる。

 

  ・ LCC2社は各段に低価格ながら、ここでは

       LCC特有の付加収入が含まれていない

     (国交省統計)ため、実質的にはこれに

       1000円程度のかさ上げが必要であろう。

4.羽田の発着枠

 

  現在の国内線発着枠は465便相当で、会社別内訳は右図(460便相当)の

    とおりである。 

    他に新規航空会社引当等の特別枠の

    流用や、深夜早朝時間帯を利用した

    臨時便もある

 

 

  注目すべきは、コードシェア便も含めるとANAの枠は過半を占めているということ

    であろう。

5.AIRDOとソラシドの発着便(10月定期便)

 

  両社の路線に対応するJALANAの発着便をみると;

JAL79便に対し、ANA58便と少ないが、両社とのコードシェアを含めると108便と

なってJALを大きく上回る。

 

  特に羽田=札幌便はJALのほぼ倍となる。

   またANAは未就航路線であっても、 AIRDOの機材と乗員でANAのネットワークを確保できている。

(さいごに)AIRDOとソラシドの、今回の統合効果は? 私見を述べる。

 

   まず両社がおかれている環境を見渡すと;

 

「高運賃フルサービスの大手2社」と「低運賃」のLCCとの狭間にある。

大手2社は今後の伸びる余地は大きいとは言えない市場をしっかりと掴んで収益性を確保していくこととなろう。

伸びる余地はLCCにあり、低価格とそれなりのすっきりしたサービスで市場を拡げていくであろう。 このため大手2社は、傘下や系列のLCCを事業拡大の核に据えていくことになる。

 

その中で中堅の両社は立ち位置が窮屈といえよう。

事業モデルとしては大手と同じFSC(フルサービスキャリアー)で、「羽田」というドル箱発着枠を活かした堅実な稼ぎをコアに、ローカル線にも選択的に拡げていくことになり、販売/コスト両面で工夫を凝らした運営が求められる。

羽田からLCCを実質的に閉めだしている効果は、中堅FSCにとって大きい(大手にとっては更に大きいのであるが)。

また収益性安定のために、コードシェアによる座席販売収入への依存は今後も続けることになろう。

 

  ② 両社の今回の持株会社による統合効果は?

 

持株会社が中心となって2社を経営することにより;

業務運営を効率化することでコストがよりスリムになる。
(組織に屋上屋を作らないことが前提だが)

 

・機材や乗員繰り、訓練や整備業務、システムや間接業務など

・財務面の一体運用

 

また戦略や経営判断をより大きくできることもあろう。

 

・市場やサービスの一体運用や企画による販売面での効果。

ブランド効果(地方区→全国区的)や社員意識効果もあるのでは。

 

③ しかしながら、置かれている環境と事業モデルからは、かじ取りは易しくはないであろう。

場合によっては事業モデルそのものの変革も含めて考えていく必要があるのではなかろうか? 

そのためにも持株会社制度による一体経営はプラスにはなろう。

 

 

                                               以上(赤井)