2022年10月1日
共同持株会社「リージョナルプラスウイングス」を設立して提携を強化
AIRDOとソラシドの数字的読み解きと私見
北海道の翼AIRDOと九州の翼ソラシドエアはこの10月3日に共同持株会社「リージョナルプラスウイングス」を
設立して提携を強化する。
これまでも乗継利便等で提携関係はあったが、今回はそれを更に発展させようとするもの。
今回はAIRDO、ソラシドエア(以後ソラシドとよぶ)両社について、主に2021年度の決算値や輸送実績値
をもとに数字で読み解いていきたい。
※ コロナの影響が強く残っている数値であることに留意。
※ 両社の公表資料によるが一部に筆者推算値を含む。
〈両社が直接統合して1社化しないのはなぜ?〉
国内線のドル箱である羽田路線は当局がその便数(発着枠)を管理している。
1社化すればその配分に影響を受ける(=減枠)可能性があるため、現在の2社体制を存続させると
いうもの。
両社はほぼ全便でANAとコードシェアしている⇒ANAはそれを含めれば現実的に羽田枠の過半を有して
いるが、減枠はそれにも影響することになる。
1.AIRDOとソラシドの株主構成
・ 政投銀(日本政策投資銀行;DBJ)とANAが主要株主。
・ これに北海道、九州の地場企業が続く。
・ 両社の株主は、10/3以降は株式交換により持株新会社の株主となる。
2.機材と従業員
・ 両社はほぼ同規模。
・ 但し機材は、AIRDOは中型のB767と
小型のB737-700(短胴型)の計12機で総
席数は2300席弱。
ソラシドは小型のB737-800x14機で
総席数は2400席強。
・ 従業員も、運航乗務員/客室乗務員/
総人数ともにほぼ同数。
3.路線と便数(2021年度)
(2021年度の運航便数÷日数で、1日当りに換
算したもの、コロナ減便の影響を受けている)
・ 両社羽田路線がメイン(収益源)で、便数の7~8割を占めているが、
その羽田依存度はAIRDOが特に高い。
4.収支、財務規模
・両社ともに、収入は270億円規模、赤字は
▲50億円規模と類似。
・ 総資産も両社450億円前後。 但し資金的
にはソラシドエアの方がややきつく、政投銀から
の借入も多くなっている。
・ 株主出資額はAIRDOがやや多い(政投銀
出資も大きい)が、資本金を「1億円」に減資
して中小企業化(税務上の効果考慮)して
いることは同じ。
5.ANAへの依存
・ 両社ともにほぼ全便をANAとコードシェア※している。
※ 両社が運航する便の座席をANAに販売、ANAはANA便として顧客に販売。
そのANA席の割合が高い(平均3割強)ことも特徴的。
・ 2021年度では、両社がANAから得た座席収入は110億円超で、これは総収入の4割を超す。
・ 両社ともに、ANAから出資を受け、強い提携関係により事業運営面でも支援を受けている。
・ 例えばAIRDOの機材の多くはANAから移行されたもので、整備業務をANAに委託している。
また両社は航空燃油ではANAから転売を受けている。
・ 地上業務(地方の旅客カウンターやグラハン等)もANAに委託しているが、何といっても大きいのは
旅客の予約販売業務で、ANAのシステムに依拠していることである。
また収入金の大半はANAの口座を経由して入金されている。
6.2021年度の輸送実績
・ コロナの影響を強く受けて(減便および旅客
減)の実績であるが;
便数はAIRDOが19千便、ソラシドが25千便。
年間総供給席数(推算)はAIRDOが
約370万席、ソラシドは約440万席。
・そのうち約34%の座席をANAに販売し、
66%が自社旅客用。
・ 自社旅客数は約110万人で両社並ぶ。
但し供給席数との関係で、発着搭乗率は
AIRDO48%に対し、ソラシドエアは38%と
低かった。
7.収益性の指標(2021年度)
・ 平均席数は中型機を持つAIRDOが193席とソラシドエア(174席)より多い。
また搭乗率が比較的に高かったことで、平均旅客数もAIRDOが多かった(61人)。
・ 便当り収入はAIRDOが144万円、ソラシドが103万円。
ANAからの座席収入(AIRDO62万円、ソラシド45万円)を差引いた自販収入は
AIRDOが82万円、ソラシドが57万円。
ともに約▲25万円の赤字。
・ 1席当りのコストはソラシド7300円に対しAIRDOは8700円とかなり高い。
(この差は機材→運航費用に起因していると筆者は考えている。)
ANAへの座席販売価格(推算)はソラシド7700円、AIRDOが9400円。
旅客単価は両社ともに13000円程度であるが、搭乗率が低いために、
座席当りの収入にするとソラシドが5000円、AIRDOが6400円となる。
次回(続編)にて、国内線市場における両社の位置を紹介し、
また両社の統合メリットについて私見を述べる。
以上(赤井)