2022年7月14日
・JALへの貨物スペース提供増で収益性は改善
・180億円の出資金、手元24億円に
JALの中長距離LCCであるZIPAIR Tokyoがこの度発表した2021年度決算について概観しました。
ここでは就航した2020年度から2021年度までの2ヵ年の状況を中心にみています。
(設立) 2018年7月 JALの100%出資(180億円)で設立
(運航開始)2020年6月 BKK線に就航(当初は貨物のみ、10月から旅客搭乗)
(現在の路線)BKK、ソウル、HNL、SIN、LAX
(現在の機材)4機;全てJALからのリース
1.収支状況
・ 2021年度の収入は69億円だが、その殆ど(約9割)がJALへの貨物スペース提供収入で、
旅客収入は7億円。
・ 2020年度との比較では、営業費用は1.6倍(136億円)、収入は3.4倍。
費用増率(≒供給増率)より収入増率が高く、収益性は改善された。
・ 2021年度の営業損益は▲67億円で前年とほぼ同規模、2ヵ年累計では▲131億円。
・ 将来の利益からの法人税等の繰延効果(約40億円)を見込み、2ヵ年の最終損益は▲91億円
となった。
・ ZIPAIRの赤字の一方で、その貨物スペースを利用してJAL本体が稼いでいる貨物事業の利益が
どれだけあるかはわからない。
2.財務状況
・ ZIPAIRはJALからのリース機に依存しており、有形固定資産はわずか1億円、
ほかに無形固定資産(主にソフトウエア)が13億円。
・ 手元資金は2020期首からの2年間で114億円減少して2021期末には24億円。
・ 同2ヵ年で未払債務は34億円、未収入金は19億円増加、ネットすれば未払いの15億円増。
・ 2ヵ年の営業損益(▲131億円)と、手元資金減(▲114億円)+未払増(ネットで
▲15億円)はほぼ一致する。
即ち営業損益の赤字が手元資金の減少に直結することを示している。
・ 2022年度も赤字が続けば、近々資金の追加投入が必要となろう。
・
利益剰余金は▲128億円であるが、これは将来利益で税金圧縮効果(繰延税金資産
39億円)を反映させてのものである。
今後JALはZIPAIR Tokyoをさらに拡大強化していく(2024年度10機体制)が、途中で必要な
資金的支えはかなりの規模となろう。
以上(赤井)