2021.7.29.
~ 2021年4~6決算 ~
この度公表された資料をもとに、米国ユナイテド航空のQ2(4~6月)決算を概括しました。
(注)金額はUSD=110円換算で、円貨で表示しています。
(要旨)大幅赤字(税前損益 実質▲1660億円)赤字ながら、将来の見方は強気。
機材も拡大志向。
1.Q2の収支状況;
売上高はコロナ前の2019年対比で半分に届かず(48%)。
回復が進んでいる国内線が他の主要2社より少なく(収入割合62%)、遅れている大西洋/
太平洋線が多いこともある。
営業損失は▲300億円、これに金利負担増(支払利息470億円)、関連企業の投資利益等を
加味した税前損失は▲620億円。
但し政府からの給与補助金1000億円を調整すれば実質▲1660億円の赤字。
(強気の見通しと計画)
・ 長距離国際線、業務渡航の回復の兆しを根拠として、Q3、Q4には実力ベース(補助金を前提としない)で黒字化を予想、2023年には需要が完全に回復するとみている。
2.旅客実績;
・ 座席供給(席マイル)はコロナ前の2019年対比で54%まで戻した。
・ 需要(旅客マイル)はそれより下回る45%であった。
・ 搭乗率(72%)もある程度回復したが、コロナ前(86%)に比べるとなお低い。
3.収入内訳;
・ 旅客収入は4800億円であり、コロナ前の1.15兆円対比で4割強。
国内線とラテンアメリカ路線で回復はみられるが、大西洋/太平洋路線では遅れている。
・ 貨物収入は2019年を大きく上回ったが、付帯収入は下回った。
4.機材の変化;
2020.12月時点での保有機数を、コロナ前(2019.12月)と比べると;
・ リージョナル機は▲106機減(▲18%)となっているが、大型~小型機は寧ろ増えている。
(但し大型B777の52機は非稼働駐機中)
・ そんな中で、270機を追加発注した(B737MAXを200機、A321neoを70機)。
既発注を含めると総数500機になる。
・ また全小型機を改修して、プレミアム席を+75%増やし、機内エンターテインメントも充実させる。
・ 新興のハートエアロスペース社に出資し、電気飛行機※を100機を発注した。
※ 「ES-19」; 19人乗り、航続距離250マイル(基本)。
提携関係にあるリージョナル会社のMesaも100機を発注。
5.財務状況の変化とキャッシュフロー;
コロナ前(2019.12月)からこれまでの1年半で、財務状況がどう変化したかをみた。
(1年半の財務状況変化とキャッシュフロー)
・ 当初の純資産1.27兆円は赤字のために棄損(約1兆円)したが、増資(ワラント実行を含め
2900億円)で補って、2021.6月末の純資産は約5400億円となった。
・ 借入金はコロナ前に既に2.25兆円あり、さらに約2.16兆円増えて4.41兆円となった。
・ 増資は約2900億円。
・ 設備投資はこの1年半で約3300億円。
・ キャッシュフローをまとめると; 当初の手元資金は約5400億円。
増資、借入金で調達した2.45兆円は、設備投資(3300億円)や赤字による流出の補填
(減価償却・減損や政府支援金をNetして▲3100億円※)に使われ、1.8兆円が手元資金に
積み上がって、この6月末には2.34兆円となった。
(政府からの支援金;2021年Q1~Q2)
・ 2021年に入ってから6か月間に受けた政府支援金は58億ドルであり、うち29億ドルが給与支援金、
残りが融資等(ワラント実行による資本化約5億㌦も含む)である。
・ Q2決算では、9.5億ドルが給与助成金である。 その他は負債科目(次四半期の給与助成分)で処理されているようだ。
(所感)UAの将来への積極性が、結果にどうつながるだろうか?
・ UAは他の2社(DL/AA)に比べて回復基調にある国内線の割合が低めで、回復が遅れている
大西洋/太平洋線の割合が高い。 これが2社より収益性が低い原因となっている。
にもかかわらず、Q3には自力での黒字化を予想している。
・ DLとAAは一旦規模を縮小(大中型機や旧式機を縮減)し、収益性を担保してから再拡大を
図るという構図になっている。
・ それに対し、UAはリージョナル機(地方路線)を縮減する以外は、従来なみの機材構成であり、
むしろ機材拡張に積極的で、270機もの新鋭小型機を追加発注し、加えて100機の電気飛行機も
発注している。
このような楽観的、積極的な方向性が今後どう機能していくか、注目していきたい。
以上(赤井)
2021年x月x日