2021.9.2
~ 巨額赤字にリストラで対応 ~
この度公表されたデータに基づき、カンタス航空(QF)の2021年度6月期決算を概括します。
QFは6月決算で、前期(2019.7~2020.6)は後半にコロナの影響を受け、当期はフルに受けました。
・ 数値は主にコロナ前(2019.6月期)と比較、財務状況も当期までの2ヵ年推移でみています。
・ 金額はAU$=80.56円で換算して、円貨表示にしました。
(はじめに)
QFは傘下にLCCのJetstarを持ち、内部にコミューター事業(カンタスリンク)を抱えている。
さらにJetstarは海外に関連会社を持ち、Jetstar-Japanもその系列である。
株主は、豪系投資会社(4.99)が筆頭で、以下小口に分かれている。
1.収支状況; 減収とリストラ損で大幅赤字
(収入)当期の旅客収入はコロナ前(2019.6月期)に比べて▲76%減の約3000億円。
他の収入(カンタスロイヤリティと他社の受託等)も▲34%減。
貨物収入のみ+36%で1000億円超となった。
(損益)特殊要素を除去した税前損益では、コロナ前が781億円の黒字、後半に影響を受け
た前期が▲56億円の赤字、当期が▲1381億円の大幅赤字であった。
(特殊要素反映後の損益)大幅なリストラ損の計上により、前期は▲2182億円、当期は
▲1894億円の税前赤字であった。
(リストラ費用)2ヵ年にわたって総額2600億円を計上している。
・ 約1200億円;機材等の減損(うち1000億円がA380関連)
・ 約200億円;子会社等への投資減損
・ 約500億円;燃油/通貨のヘッジ損
・約700億円;雇用関連(人員削減▲9400人等)
(回復の見通し)QFの見通しは以下のとおりであるが、実際はもっと厳しそうだ。
・ 国内線; 10-12月には5割強に、年明けにはコロナ前に回復とみている
・ 国際線; 年明けに、コロナ前の半分程度とみている。
2.機材状況;
大型機減、貨物機増、国内線シフト
・ A380は全12機を米国にストレージ中、
うち2機は退役させる。
・ B747は全機退役
・ 旅客用A321の全3機を貨物機に改造して
当期に導入した。
・ A320を国際線(Jetstar)から国内線用に
シフトさせた。
3.輸送実績;
国内線はコロナ前の4割、国際線はほぼゼロ
・ 当期の国内線実績(旅客㌔)はコロナ前
の4割程度であった。
・ 国際線は、長距離メインのQFの実績はほ
ぼゼロであった。
・ Jetstarの国際線(主に中距離)もコロナ前の4%であった。
・ 全体として座席㌔はコロナ前の19%、旅客㌔は15%であった。
国際線、特に長距離の実績が壊滅状態で
あったことによる。
4.財務状況;
(キャッシュフローの概要)
前~当期の赤字総額(税前ベース)は▲4000億円ながら、減損等キャッシュ流出を伴わないものが約半分。
流出の▲2000億円を、増資(1000億円)と借入金拡大(1000億円)で賄った。
(借入金と手元資金等の概要)
・ 借入金(含リース債務)は、コロナ前より約1000億円増えて、6600億円となった。
・ 手元預金は、ほぼコロナ前水準の1800億円。
・ 純資産は、赤字による棄損(税引後で▲3000億円)を増資(1000億円)で補い、
債務超過転落を回避して、当期末は400億円となった。
以上(赤井)