2021.10.25.

米国主要3社の2021年Q3決算について

 実質的に赤字だが、政府支援金効果でQ3は全社黒字に

 

 

米国の主要3社であるデルタ航空(DL)、ユナイテド航空(UA)、アメリカン航空(AA)の2021年Q3決算(3ヵ月値及び累計9ヵ月値)における収支を概観した。

 

     ここではUSD=110円で換算した円貨で表示した。

     3社は事業の構造や規模が類似している。

     計上の時期ズレも含まれる(細部まで厳密とは限らないが、示す傾向は適正といえよう)。

 

1.税前損益の比較

 

       Q379月)の税前損益は、3社揃って黒字

・ しかしながら政府による支援(給与等への補助1000億円超)の効果が大きく、

     それなければ依然赤字である。

   ・ 状況は上向いてきている。

   ・ 収益性はDLUAAAの順であり、コロナ前から変わっていない。

  

       Q3累計(19月)の税前損益はDLのみ黒字。

 

・ 但し支援金がなければ全社大幅赤字(▲4千~▲6千億円規模)である。

2.旅客収入を路線別にみると

 

  3社ともに国内線比率は高く、旅客収入の67割を占めている。

(下図は2019Q3累計収入値における国内線割合)
・ 中でもAAの国内線割合が高くて73%、UAは最も低く62%。

・ 国内線はリージョナル会社への運航委託の果たす役割が大きい。

 

    路線別にコロナ前と比較(Q32019比減少率)すると、
・ 国内線収入は78割程度回復、ラテンアメリカ線は8割方回復。

      ・ 他方大西洋線、太平洋線の回復は遅れており、特に太平洋線は▲8割減の状態。

3.Q3(3か月間)の収支状況

 

全般的にみて、旅客収入はコロナ前の67割まで回復、貨物収入は増加、その他の収入は石油精製事業拡大のDLだけが増収。
・ 各社とも有利子負債増→支払利息が増加。

・ 支援金効果前の損益は全社赤字だが、赤字幅はAAが最も大きい。

・ 支援金効果により、3社ともに税前利益を計上。

DLの支援金額(2000億円)には時期ズレ要素が入っている可能性がある。

 

・ 供給拡大(座席㍄)にはAAが積極的でコロナ前の約8割まで回復、DLUAは7割に。

 

・ 搭乗率はDLAAがほぼ80%レベル、UAは不振の太平洋線が多いこともあって76%に留まっている。

4.Q3累計(9か月間)の収支状況

 

・ 旅客収入はコロナ前の半分弱(DL/UA)~国内線で積極的なAAが半分強。

・ 支払利息は全社が1000億円超ながら、AAが最も多く約1500億円。

・ 支援金効果前の税前損益は約▲4000億円(DL)~▲6000億円(AA)。

 

・ 支援金によりDLは黒字化、UA/AAは▲1200/1500規模の赤字。

(その他)前年(2020)やQ2までの実績、及び財務状況については以下レポートをご参照下さい。

 

 4/2 コロナ禍での米国3社決算(2020

 

 7/24 米デルタ航空、補助金効果で黒字に!

 7/27 アメリカン航空、高下駄はいての水面鼻だし?

       7/29 ユナイテド航空、赤字ながらも強気の計画!

 

                                                 以上(赤井)