2021.7.24.
この度公表された資料をもとに、米国デルタ航空のQ2(4~6月)決算を概括しました。
(注)金額はUSD=110円換算で、円貨で表示しています。
(要旨)15億㌦の政府補助金(給与サポートプログラム)で支えられ約850億円の黒字。
実質は▲970億円の赤字。 キャッシュフローも大幅改善。
1.Q2の収支状況;
売上高はコロナ前の2019年対比で57%まで戻った。(コロナ禍直撃の2020比では約5倍)
営業利益898億円を計上、借入金増に伴う支払利息の負担は増えたが、投資益等もあって
税前利益は854億円であった。
しかしながら政府補助金(給与サポートプログラム)15億㌦の支援を受けての数値であり、実質は
なお▲1000億円程度の赤字といえる。
健全化に向かうには「もう一息必要」といえそうだ。
2.Q2のキャッシュフロー(CF);
損益に、減価償却費等による資金の歩留まり、および設備投資での流出を加味したフリーキャッシュ
フローは400億円のプラス、これが借入金の圧縮に振り向けられた勘定になっている。
(その他の約1000億円は遅れて入金された政府補助金か?)
いずれにしてもフリーCFは大幅改善しているが、政府補助金に頼らないで借入金圧縮に十分
回せるほどのプラスになるには、あと一息必要であろう。
3.旅客実績;
座席供給(席マイル)はコロナ前の2019年対比で68%まで戻した(4月は感染対策の一環で
中央座席をブロックしていたため、実質はこれよりやや多いと思われる)。
需要(旅客マイル)はそれより下回る53%であった。
搭乗率(69%)は回復しつつあるものの、コロナ前(88%)に比べるとなお低い。
4.収入内訳;
・ 旅客収入は6000億円弱であり、コロナ前の1.25兆円の半分に届いていない。
但し7割を占める国内線の回復が進んでおり(2019比55%)、ラテンアメリカ路線もそれ以上に
回復している。(但し大西洋/太平洋路線の回復は遅れている。)
・ 6月のスカイマイル登録者は過去最高を記録、特にAMEX提携カード使用額が2019を超えた。
・ 「国内のレジャー需要は2019年水準まで回完全に回復」し、「ビジネスや海外旅行も心強い改善の
兆しがみえる」と述べ、今後「供給回復を加速(増機等)させる」としている。
・ 貨物収入は2019年を大きく上回り、付帯収入の伸びは更に大きい。
(DLは製油所を経営しており、その燃油販売額も増えているようである。)
5.機材の変化; 現在の保有機数は、コロナ前(2019.12月)と比べて大幅減。
・ 大型のB777は全機退役し、中型のB767も退役が進んでいる。
・ 小型機は、旧式のMD88/90は全機退役、旧式のB717も大幅減。
代わって新鋭のA220を増機している。
・ 地域航空は全面的に運航委託しているが、その規模も大幅に縮小した(リージョナル機の機材数は▲100機=▲23%減)。
委託先のCompassとGoJetとは契約を解消、SkyWestへの委託便も大幅減。
・ 但し至近の需要動向を踏まえ、A350やB737-900ER(中古機)を計画に追加、2021年の投資
額は約32億㌦(約3500億円)としている。
6.財務状況の変化; 現在の財務状況をコロナ前(2019.12月)と比べてみた。
・ コロナ前の純資産1.7兆円が、赤字で棄損して1400億円になった。
・ 借入金は約2兆円増えて、3.9兆円になり、一方手元資金も1.4兆円増えて1.7兆円に積み
上がった。
・ 有形固定資産は約4000億円減少 →退役(含セール&リースバック)等による。
(この期間中のキャッシュフローを概観すると)
・ 累積赤字額が多い(▲1.5兆円)にも拘わらす、資金流出はそれほどではない。
赤字の多くが、追加的資金流出を伴わない減損型のものであることによる。
・ 借入金増加額と手元資金増加額の差は約▲6000億円程度であり、機材のセール&リースバックに
よる資金収入は2000億円強である。
・ 今後は一定規模まで借入金を返済(手元資金を圧縮)して、金利負担の抑制や財務体質の
改善に向かうことになろう。
以上(赤井)