2021.7.20.

空港別旅客実績と空港会社の決算(2020年度コロナの影響)

  国交省および空港各社の資料をもとに、コロナの影響を受けた2020年度の空港別実績と、主な空港
  会社の決算を概括したい。

 

1.空港別旅客実績;

 

2020年度(43月)の旅客実績を、コロナの影響を受けていない2019暦年値(112月)と
比べた。 空港は内際主要空港のほか、最近運営が民営化された空港を個別表示した。

(注)国内線の旅客数は、各空港の発着のべ旅客数(発/着双方でカウント)であるため、

実際の合計旅客数はこの半分である。また定期便のほか不定期/チャーター等を含む。

 

     国内線の発着のべ旅客数は2019年の2.28億人(実数1.14億人)から2020年度7100万人(実数3500万人)へと▲69%落ち込んだ。

成田/羽田/関西の減少率は大きく(▲7174%)、また高松(▲80%)、熊本(▲74%)も大幅であった。

・ 一方神戸/伊丹/福岡/仙台はそれよりは小幅で▲65%程度であった。

 中部/那覇/新千歳は▲70%程度であった。

 

     国際線発着旅客数は2019年の1.03億人から2020年度は169万人と▲98.4%減となった。

 

 旅客の88%が成田/羽田に集中し、関西が10%、中部/福岡はごくわずか、その他は実質

  皆無であった。

2.空港会社の2020年度決算概括

 


最近空港運営が民営化された5つの会社について決算を概括した。

 

  仙台国際空港㈱;東急系(計58%)、前田建設、豊田通商が株主。
2016年7月に運営開始。


 国内線旅客数は、部分的にコロナの影響
  を受けた2019年度(43月)に比 
  べ、フルに影響を受けた2020年度は
  ▲64%減、国際旅客はゼロであった。


20172018年度と黒字を続けてきた
  が、2019年度は期末にコロナの影響が  
  出て、赤字となった。

  2020年度は、AirAsiaJapanの廃業があったが、Peachが沖縄線/中部線に就航した。 
売上高は前年比約6割減、固定費が多い営業費用は約3割減に留まり、助成金収入があったものの、▲16億円の経常損失となった。

 

  有形固定資産が76億円;大半が賃貸用不動産(建物)である。
施設運営権資産(含更新投資)25億円は長期借入金にて購入した形となっている。

  資金収支は、手元資金減▲13.7億円(他方借入金減は▲2.6億円)。

 

赤字による流出を、固定資産償却費等で補った結果と考えられる。

 ② 高松空港㈱; 三菱地所(73%)を筆頭に、大成建 
  設、香川県/高松市等が株主。
  20184月に運営開始

 

  ・2020年度の国内線旅客は、前年度比で▲79%  
   減、国際旅客は皆無であった。

  ・売上高は半減、一方営業費用は小幅減、結果とし
   て▲13億円の営業損失。
 ・ 2019年度は、高松空港ビル㈱を吸収した際に10億 
   円の特別利益があった。

 

  ・有形固定資産が28億円;大半が空港ビルから引き
   継いだ賃貸用不動産(建物)である。
   施設運営権資産(含更新投資)26億円は主に
   長期長期借入金にて取得した形となっている。

  ・ 資金収支は、借入金増+7億円で、手元資金は
   +1.5億円。

 

   赤字による流出を、固定資産償却費等で補った
   結果と考えられる。

 福岡国際空港㈱; 旧福岡空港ビル㈱※が立ち上げた福岡エアポートHD㈱が運営。
2019年4月に運用開始。 

   ※九州電力、西鉄、JAL/ANA等が主要株主

 

 ・2020年度の国内線旅客は前年度比 
 ▲63%減の648万人、国際線はわずか2 
 万人であった。

 ・ 売上高は前年比▲65%減、一方営業
 費用は▲33%減、支払利息負担も大き
 く、経常損失は▲213億円であった。

 

     有形固定資産が746億円;大半が空港
          ビルから引き継いだ賃貸用不動産(建物)
          である。
          施設運営権資産(含更新投資)3153
          億円が総資産の72%を占めているが、その
          見合いとして運営権負債(未払)がある。

 

     ・資金収支; 200億円規模の赤字があっ
            ものの、手元資金は135億円増えている。
            360億円規模の消費税還付の効果と思われ
            る。

            一方借入金の減と運営権負債の増が打ち消
            しあっている。

 北海道エアポート㈱; 新千歳ターミナルビルを運営する北海道空港㈱を中心に、三菱地所、東急、政投銀等で設立。北海道7空港を運営する。

2020年に新千歳を皮切りに、旭川、稚内、釧路、函館、帯広、女満別を順次運用開始。

 

設立時からコロナの影響を受け、厳しい船出となっている。

運営権取得のために、かつ初年度の赤字による資金流出を補うために、巨額の借入金を抱えての出発となった。

 

 熊本国際空港㈱; 三井不動産を中心に、九州電力、双日、日本空港ビルで設立。

2020年4月に運営開始。

 

 

 ・ 北海道エアポート同様に、コロナの影響で厳しい船出となっている。

 次回で、成田/羽田(日本空港ビル)/関西エアポート/中部の業績を概括したい。

 

 

                                                                                                    以上(赤井)