5.ANAとJALのLCC戦略
(ANAのLCC戦略)
・ 2020.3月期の数値(Jetstar-Jを再び下回る)には、ANA本社が、新Peach展開の重点市場(資源活用の方向性)を「近距離国際線」にしたこと※も関係していると思われる。
※ 国内線の拡大はローカル線とし、幹線展開はむしろ抑制。
・ しかし思いがけないコロナ禍が、国際線市場の拡大ばかりか運航の再開すら阻んで
おり、復旧には時間がかかりそうである。機材と乗員は余剰化している。
ANAは国内線戦略を見直し、LCCの国内線優先拡大を経営改善の大きな柱とした。
・ またコロナ後を見通すと、国際線でも市場の変化(ビジネス需要の縮小)が予想される
ことから、中長距離低価格市場への展開→中長距離LCC設立へと動いている。
(この面ではJALを追う展開になっている。)
(JALのLCC戦略)
・ LCC展開でJALはANAに大きく出遅れた。
近距離市場でのLCC展開は、将来を見通すと不可欠な事業領域といえるが、いわゆる自前のLCCは持たなかった。Jetstar-Jに出資(議決権1/3)し、資金繰りの悪化には追加出資もしたが、経営への主導権はない。
・ ANAのPeach子会社化を追うように、Jetstar-Jへの出資割合を50%に引き上げたが、依然主導権が確立したとはいえない(「提携の更なる強化」である)。
・ その間、経営と運航品質で低迷する春秋航空日本(Spring-J)に支援を開始(2018)し
たことで業績は上向いてきた。
・ 国際線中長距離を担うLCC(ZIP Air)を立ち上げ、コロナ禍の中で就航した。
・ 現在、Jetstar-Jの資金繰りへのテコ入れに追加出資を、そしてSpring-Jの子会社化を発表している。 前者はJALの経営主導権が、後者は中国市場への展開が、そして両社の使い分けが今後の課題といえよう。
ZIP Airは中長距離国際線で、需要回復の波が寄せてくれば、当初の目論見以上の
働きをするのではなかろうか。