2021.6.04.
(その3) LCC各社の路線便数の変遷
日本のLCC4社(現在3社)に係わる4回シリーズレポートの3回目です。
LCC各社がこれまでどの路線に、何便飛ばせてきたか、その推移と、現在(2021.6月)の就航路線をみます。
(注1)数値は1日当りの便数(年間運航便数÷365日で算出;四捨五入で整数表示)を示しています。
片道単位なので、通年1往復運航→平均2便となります。
(注2)2021.6月時点(現在)の記号は、
〇(過去からの路線継続)、◎(前年新設路線の継続)、
●(コロナ後に新規開設)、×(コロナ後に廃止または長期運休)を示します。
1.Peach; 全機A320型(180席)
(国内線)
・ 関西空港を起点に幹線(札幌/成田/福岡/那覇)および仙台/鹿児島線で多頻度運航、
九州四国の主要地点にも乗入れ。2014年には成田幹線にも就航した。
・ ANAの子会社となってVanillaとの調整のためか成田幹線を縮小、また関西発着でも幹線拡大が抑制されたが、ローカル線は拡大。
・ Vanilla統合で成田幹線やローカル線を受け継いだ。
・ コロナ禍下でのANAグループLCC戦略強化で、多くの路線が新設された。
成田発着では釧路/女満別/宮崎/大分路線が新設。
新たに中部空港に乗入れ、札幌=那覇、那覇=仙台路線も新設された。
(国際線)
・ 当初から国際線に就航、3年目に形が整い、以後規模を拡大、ANAの子会社となってからは
一層拍車がかかった。
・ 関西発着ではソウル/台北/香港線で多頻度運航、プサン/高雄にもデイリー運航。
那覇を国際線のハブとして路線開設(バンコクにも就航)、また羽田の夜間枠でソウル/台北/香港に就航。
・コロナの影響で今は全面的に運休、6月時点ではわずかに関西=台北線のみ運航されている。
・なお将来の国際線中距離路線への進出を見込み、A321LR機を発注している。
2. Vanilla; 全機A320型(180席)
(国内線)
・成田幹線と中部発着路線を開設、その後中部からは撤退した。
(中部空港へはANAとコードシェアで中堅3社が就航した。)
・ その後奄美、函館等、ローカル線にも就航。
(国際線)
・当初韓国線に就航したが、その後主力が台湾路線に変わり、関西/福岡/那覇からの路線も
開設した。
台湾以外では香港/セブ/ホーチミン(台北経由、のち廃止)路線を開設した。
3.Jetstar-J;全機A320型(180席)
・ 成田中心に関西・中部も起点として、高需要の基幹空港を結ぶ路線に展開。
就航3年目にしてDaily92便(46往復便)まで拡大。
それ以降は路線や便数頻度を調整しつつほぼ横ばいの便数規模で推移。
・ 国際線へは4年目に展開、3起点空港(成田/関西/中部)から香港/台北/マニラ/上海を結ぶ
路線に各2便(1往復/日)以内で運航。
・ 3起点空港で一定以上の規模を有する効率的路線運営を行い、採算とシェアを確保するという事業モデルといえよう。
・ コロナ禍下で、多くの路線を運休/撤退、国際線は運航停止のままである。
今では積極的に路線拡大しているPeachに大きく水をあけられている。
・ その差は「資金」事情によるところが大きいと思われる。
即ちPeachがANAグループ戦略に沿って資金的裏付けのもとに拡大しているのに対し、Jetstar-Jは自己資金での窮屈なやりくりをしていると考えられる。
今後のJALによるテコ入れでどうなるか、注目されるところである。
・ Peach同様将来の国際線中距離路線への進出を見込み、A321LR機を発注している。
4.Spring-J; 全機B737-800型(189席)
(国内線)他のLCCが就航していない3路線に参入、3年目以降は路線を組替えて10便(5往復/日)
程度の規模で現在に至る。
(国際線)3年目に国際線に就航、以後徐々に路線・便数を拡大してきた。
コロナ禍下で、国内線、国際線ともに主に週末曜日のみ運航を続けている。
今後はJALの傘下に入る。 コロナ後は、JALがANAに後れをとっている中国路線で、低価格市場
の開拓にかなりの役割を果たすのではなかろうか。
5. さいごに;
日本のLCCは、並乱立のあとANA系、JAL系に集約されつつある。
双方の戦略・経営力に注目していきたい。
特にJALにとっては、Jetstar-Jの経営主導権や、Spring-Jの活かし方が、ANAでは、強い提携
関係にある中堅3社とPeachの仕切り(使い分け)が課題になりそうだ。
以上(Y.A)