2021.6.01.

数字で読み解く日本のLCC(2)

  (その2) 収益性指標でみるLCC

日本のLCC4社(現在3社)に係わる4回シリーズレポートの2回目です。

LCC各社の主な経営数値と収益性指標の推移をみます。

(注)各社の決算期は違っているため、対応期間は3ヵ月ズレています。

   (Peach/Vanilla;3月決算、Jetstar-J;6月決算、Spring-J;12月決算)

 

Peach

 ・営業収益ほぼJetstar-Jと同規模で推移していた(2019期は両社600億円)が、
           Vanillaを吸収統合してJetstar-Jに大きく差をつけた。

 ・営業利益;就航2年目からコロナ前まで安定して高い利益を続けてきた。

 

  ・旅客数; 総数はJetstar-Jとほぼ同じだが、約4割が国際線旅客。

  ・搭乗率; 一貫して高い(85%以上)。

  ・旅客㌔単価; 9円台で推移している。

 

  ・1便当りの収支; 収入は概ね160万円規模、利益は2万円程度である。

  ・2020.3月期はコロナの影響(2か月間)を受けて大幅赤字となった。

 

 (Jetstar-J

 ・就航後3年間は大幅赤字。 4年目に黒字化、以後コロナ禍までは安定して利益を計上。
  ・4年目以降はPeach並みの高い搭乗率であり、便当り収入もPeachとほぼ同規模である。

 

  ・旅客㌔単価は8円台と、Peachよりやや低い(最低価格保証制度も関係しているか?)。

 ・2020.6月期はコロナの影響(5か月間)で大幅減収、赤字となった。

 

・営業収益(売上高)は2019まで同規模。
 (2020はJetstar-Jのコロナ影響期間が長い)
・Peachは高利益を続けてきた。

 

 

・旅客数;Peachは国際旅客規模が拡大、

  2019は約4割(旅客㌔では約5割)。
  Jetstar-Jは国際線が少ない。

 

・搭乗率は2017以降は両社並んでいる。

・旅客㌔単価はJetstar-Jがやや低かったが、
 2019には並んだ。

 

 (Vanilla

    ・就航後3年間は大幅赤字であったが、4年目以降は収支均衡程度となった。

国際線が多く、国内線でも長距離路線割合が高かった※ことから1便当りの収入は多く、

  逆に旅客㌔単価は7円前後と低め(長距離低減)であった。

  1機日当りの運航便数(3~4便程度)は、PeachJetstar-J5便弱)より少ない。

 

     ・201910月に運航が終了し、Peachに統合された。

 

Spring-J

就航後不振を続きだったが、JALの支援(2018年~)で運航が安定し、搭乗率も上昇した。

 ・ 2019.12月期は過去最大の売上げとなり、赤字幅も大きく圧縮された。

 

長距離中国路線(武漢、重慶、ハルビン等)が多い関係で便当り収入が200万円を超えている。 

   また中国路線の旅客㌔単価が高い(国内線では他社より低い)ことが高い搭乗率とも相まって

   収益改善をもたらした。現在6機体制である。

 

 JALSpring-Jの子会社化を発表した。 
中国市場の需要が回復し、機材数が十数機程度まで事業が順調に拡大すれば、固定費
効率が上がって黒字化も見通せよう。

 

 

 

 

                                       以上(Y.A)