2021.5.24.
中華航空と黒字/赤字逆転
中華航空(China Airlines)と並ぶ長栄航空(エバー航空;Eva Airways)は、貨物収入が倍増したものの、コロナの影響で旅客減収の影響が大きく、
世界の他の航空会社同様に赤字に転落した。
黒字計上の中華航空との差は貨物事業の規模による。
今回は2020年の長栄航空の業績について、中華航空と比較しながら紹介する。
(注)TWD=3.89円で換算して円貨で表示した。 画像は同社HPより
1.中華航空との比較;
・ 旅客事業の規模は長栄が大きい。
コロナ前の収入は3914億円で、3741億円の中華航空を約5%上回っている。
現在の旅客機数を比べる中華航空66機に対して長栄は79機であり、中でも大型機が10機も
多いのが目立つ。
・ 一方貨物事業の規模は下回っており、コロナ前の収入987億円は中華の約6割である。
貨物機数(5月現在)も中華21機に対し長栄は5機である。
・ こうした事業構成の差が、2020年の収益性に表れたものといえる。
2.長栄航空の収益性;
・2020年の旅客収入は前年に比べて約▲3000億円の減、貨物増収は+1000億円弱、
その他事業も合わせた総収入は▲2179億円の減(▲41%)であった。
・旅客減便→変動費減や固定費等の営業費用も減少(▲37%)したものの、減収幅が大きく、
営業損益は赤字に転落、金融収支等も反映した税前損益は▲172億円の赤字となった。
(機材の状況)
・ 旅客機では中大型が7割超を占め、中でも大型機(B777)が多い。
・ 貨物機は大型B777Fが5機である。
・ 2020年に入って、大型のB777と中型のB787が1機ずつ
増えた。
3.旅客と貨物の状況
(旅客)
・ 中華航空と比べると、旅客収入は長栄が多いものの旅客数では少ない。
長距離路線が多いことによる。
(中華) (長栄)
旅客収入 3741億円 3914億円 (2019年ベース)
旅客数 1563万人 1283万人
平均距離 2721km 3795km
・ コロナ前は、毎月110万人規模の旅客を運んでいたが、2020年4月以降、現時点まで、せいぜい3万人という「需要消失」状態が続いている。(4月以降に限れば▲97%減)
(貨物)
・ コロナ前の3億㌧㌔(/月)規模から増加を続け、至近では4億㌧㌔規模となった。
・ 加えて収入単価も高く、その基調は依然続いている。
・ 機数規模を考慮すると、中華に比べて長栄の稼働・効率は高いといえよう。
(中華) (長栄)
貨物機数(期首) 19機 5機 (0.26倍;2019年ベース)
貨物㌧㌔ 53.6億㌧㌔ 34.4億㌧㌔(0.64倍)
貨物収入 1688億円 988億円 (0.58倍)
スペース利用率 67% 78%
4.財務状況
・借入金が638億円増えて総額は3881億円に積み上がった一方で、
手元資金は▲419億円減少して1209億円となった。
・その増減差(約1000億円)は、旅客前受運賃の減や、前期末債務の支払いによる資金流出
によるところが大きいと思われる。
・ ▲131億円の当期赤字を出したが、減価償却費による内部留まり(約1000億円)で、
設備投資(約500億円)も含め賄えている。
(中華航空との比較)
両社は似通っているが、2020年末の手元資金・借入金残高でみる限り、長栄が僅かながら
上回っているものの、中華航空は今も貨物で大きく稼いでいるという動向から、現時点では
何とも言えないだろう。
(中華) (長栄)
手元資金(2019収入対比) 1.6ヵ月分 2.7ヵ月分
借入金残高( 同上 ) 9.5ヵ月分 8.8ヵ月分
貨物収入増(2020↗2021) +588億円 +431億円
なお「台湾の航空市場構造」については、下記レポートをご参照下さい。
以上(Y.A)