一旦回復の国内需要も感染再拡大で落ち込み。
中国主要3社※の2020年連結決算を概観した。
※中国国際;Ai China(CA)、中国南方;China Southern(CZ)、中国東方;China Eastern(MU)
(注1) 金額はRMB=16.73円で換算して円貨で表示。
(注2) 借入金にはリース債務を含む。
1. 3社の概要
・ 系譜; 国営の中国民航が6つの会社に分割(1988)されたあと、2000~2002年に再編されて
現在の主要3社体制ができた。
・ 事業規模はほぼ並列; 売上高2.0(MU)~2.5兆円(CZ)、総資産は各約5兆円(2019)。
・ 成立~統合経緯からの各社の特性;
中国国際; 長距離国際線を基幹としており大型機が多く、国際線割合が最も高い。
中国南方; 長距離国内線(東北~華南等)が多い。 貨物機を保有。
国内線割合が高く、事業規模は最も大きい。
中国東方; 比較的短距離の国内線が多く、小型機割合が高い。 日中路線も多い。
(貨物系列会社「中国貨運」との提携で旅客機による貨物輸送も実施。)
・ 3社ともにリース機を中心とした運営(6~7割がリース機)。
2. 収支実績
・ 国内線旅客数は前年比約▲3割減、国際線は約▲9割減。
貨物機を持つ中国南方は、国際貨物が前年を上回った。
・ 収入は中国国際と中国東方が半減、国内線の多い中国南方は▲4割減。
・ 機材数は各社ともほぼ前年並みである。
但し旧型機の減損処理もみられる(中国南方▲660億円、他は小規模)。
・ 人件費減は▲14%程度 →大きなリストラの動きは伺えない。
・ 税前利益;中国国際が▲3000億円、中国南方が▲2500億円、中国東方が▲2700億円。
3. 財務状況
・ 各社ともに赤字による資金流出を借入金によりカバー、中国南方は3000億円強の増資も行って
いる。
・ 各社ともに手元の現預金量は極端に少なく、期末残高は売上(2019)の0.2ヵ月~2ヵ月程度で
ある。 (詳しい理由は今後調べたい。)
4.月別需要動向
・ 中国国際と中国南方の需要動向(旅客数の対前年同月比率)をみると、両社の傾向はほぼ一致
しており、中国市場全体を反映していると考えられる。
・ 国内線需要; 2020年2月を底として以後急回復し、9~10月には前年を上回るまでになった。
しかしその後感染再拡大により再び需要は収縮、2021.2月には2019年レベルの半分程度と
なっている。
(参考)赤色の折線は日本市場(国内線)の推移(前年対比)である。
回復が鈍く、10~11月には前年の半分程度になったものの、やはり感染再拡大により、
2021.1月には2019年レベルの25%となっている。
・ 国際線需要; 2020年4月には前年の1~2%に落ち込み、以後も殆ど回復がみられない。
世界的に変異種が感染拡大している一方でワクチン接種も進んでいる。
今後も需要動向に注目していきたい。
以上(Y.A)