2021.7.27.
2021年Q2(4~6月)決算
この度公表された資料をもとに、米国アメリカン航空のQ2(4~6月)決算を概括しました。
(注)金額はUSD=110円換算で、円貨で表示しています。
(要旨)僅かな黒字(税前利益10億円)ながら、実質▲1400億円の赤字。
給与補助金(1400億円)を含む総額33億㌦の政府支援で財務状況も好転。
1.Q2の収支状況; 売上高はコロナ前の2019年対比で63%まで戻った。
(コロナ禍直撃の2020比では4.6倍)
営業利益485億円ながら、金利負担が重く、税前利益は10億円。
但し給与支援金がなければ▲1396億円の赤字であった。
健全化に向かうにも「あと一息」要るだろう。
2.旅客実績;
座席供給(席マイル)はコロナ前の2019年対比で75%まで戻した。
需要(旅客マイル)はそれより下回る67%であった。
搭乗率(77%)もかなり回復したが、コロナ前(87%)に比べるとなお低い。
3.収入内訳;
・ 旅客収入は7200億円弱であり、コロナ前の1.21兆円の約6割。
但しその7割強を占める国内線の回復が進んでおり(2019比68%)、ラテンアメリカ路線も
それ以上に回復している。(但し大西洋/太平洋路線の回復は遅れている。)
・ LCCのJetblueと、ニューヨーク、ボストン路線でコードシェアを開始した。
・ 貨物収入は2019年を大きく上回ったが、付帯収入は下回った。
4.機材の変化;
・ 2020.12月時点での保有機数は、コロナ前(2019.12月)と比べて大幅減。
・ 中型機は、B767とA330が全機退役(-41)した。
・ 小型機は、旧式のB757とE190が全機(-54)退役、B737も減機した。
代わって新鋭のA321neoを増機(+16)している。
・ 地域航空は全面的に運航委託しているが、その規模も大幅に縮小した(リージョナル機の機材数は▲61機=▲10%減)。
委託先のCompassとは契約を解消、他の4社へも委託減、SkyWestのみ増。
5.財務状況の変化とキャッシュフロー;
コロナ前(2019.12月)からこれまでの1年半で、財務状況等がどう変化したかをみた。
(1年半の財務状況変化とキャッシュフロー)
・ コロナ前に既に債務超過(▲130億円)であった。
1年半の赤字(累計▲1.1兆円)で更に悪化、他方増資(3773億円)で補って、2021.6月末
の純資産は▲8434億円(債務超過)になった。
・ 借入金はコロナ前に既に3.7兆円あり、さらに約1.6兆円増えて5.3兆円となった。
増加額の約半分(8千億円)は2021年に入って増加したもの。
・ 増資は約3800億円、ほかに機材売却やセール&リースバック等で1600億円を捻出。
・ 設備投資は抑制されて、この1年半で約2100億円だけ。
・ Q2の政府支援(33億ドル)のうち、給与支援金を除く部分(約2200億円)は、BSでは「負債」勘定に、C/Fでは「その他」の中に含まれているようだ。
・ キャッシュフローをまとめると; 増資、資産売却、借入金で調達した2.17兆円は、設備投資(2100億円)や赤字による流出の補填(減価償却・減損や政府支援をNetして▲4100億円※)に使われ、1.55兆円が手元資金に積み上がったということになる。
※赤字のかなりの部分が、資金流出を伴わない減損型のものであると考えられる。
(うち2021Q2;3ヵ月のキャッシュフロー)
・ 資金調達は小規模(借入金+300億円、株式+158億円)であったが、手元資金は4300億円も積みあがっている。 政府支援金(33億㌦)の恩恵※といえるのではないか。
※ 損益効果としての資金収入1400億円、負債としての資金収入2200億円と推定。
(所感)高下駄を履いての水面鼻だし?
辛うじて黒字化したとはいえ、また手元資金も積み増しされたとはいえ、大規模な政府支援の
恩恵をうけてのものであることに留意。
借入金残高は巨額で、債務超過規模も大きく、楽観状況にはない。
但し回復が早い国内線割合が高く、搭乗率も比較的高めの77%を達成(Q2)していることは
好材料といえよう。
以上(赤井)