2021.8.8.
スターフライヤー(SFJ)の2021年度第1四半期決算について、公表データをもとに読み解きました。
・ 収支は主にコロナ前と比較、財務状況も2019年度末からの推移でみています。
(注)端数処理の関係で末尾数値が他表と一致しないことがあります。
データ加工は筆者独自の手法で行っております。
1.財務制限条項とQ1末時点のポジション
① 内部資本の少ないSFJは、事業資金を借入金に大きく依存しているが、それに付されている財務
制限条項が重くのしかかっている。 1つでも欠格すれば一括返済の請求があり得るからだ。
・ 短期資金の貸出枠(コミットメントライン)契約に付されている3つの条件。
・ 長期借入金(シンジケートローン)契約に付されている2つの条件(上と重複)。
② 2期連続経常赤字としない; 2020年度が大幅赤字であり、今期は是が非でも黒字化したい
ところであるが、Q1を終えて▲19億円の赤字となっている。
これをカバーして期末に黒字とするのは、国内線需要の現状から容易でないと思われる。
③ 期末純資産を36億円以上とする; 2020年度の実質債務超過状態を、80億円の増資
(議決権を有しない優先株式の発行)で乗り切ったが、Q1末では42億円に減じている。
「36億円」までの余裕はわずか6億円であり、上記に連動して難しそうである。
④ 有利子負債残高を130億円未満とする; Q1末の残高は58億円(リース債務を含めても82
億円)であり、この項目については影響なさそうだ。
2.収支状況;
(当期収支)売上高は2019Q1の44%にあたる42億円で、経常損失は▲19億円だった。
雇用調整助成金収入(1.3億円)や整備引当金の戻入れ等もあって最終損益は▲16億円
であった。 但し営業費用が前年より削減された効果もあって、赤字幅が縮まった。
(収入の内訳) ANA収入(コードシェア座席の販売)への依存度が一段と高まり(25億円で売上の
約6割)、他方、自販収入17億円は2019Q1の約1/4であった。
3.収益性指標;
(ANA席と自社席)便数規模(=総座席数)は2019の64%であったが、ANA座席は微減
(▲5%)に留まり、他方自社座席は半分以下(▲53%)となった。
減便が、主に自社座席が多い(ANA座席の少ない)路線に集中したことによる。
・ ANA座席の少ない路線; 羽田=北九州等。
・ ANA座席の多い路線; 羽田=関西/山口宇部、中部=福岡等。
また自社の旅客は、2019Q1の28%であり、搭乗率は43%であった。
(1便当り)150席中、ANAが過半の79席を占めた。 これは2019の1.56倍である。 SFJの
自社席は71席で、搭乗した旅客は30人であった。
便当り収入は、ANA座席分が65万円、自社の旅客等からの収入はそれより大幅に少ない46万
円であった。
自社販売収入の回復が今後のカギといえよう。
(所感)国内線の事業環境は依然厳しい状態が続いており、今後回復に向かったとしても、年度内の
経常黒字化は容易ではなさそうだ。 もしそうなら、純資産条項(36億円以上)の達成も
難しくなる。 これらの課題をどうクリアするか、注視していきたい。
なお、ANAに大きく依存している現在の事業構造で、また大手とLCCの狭間で、独立企業としての強みをどう発揮していくかも大きな課題であろう。
以上(赤井)
2021年x月x日