2020.10.22.
英国航空市場の構造と現状(2)
コロナは欧州の航空市場にも甚大な影響をもたらしていますが、今回は英国に注目し、その市場の構造と現在の状況について2回に分けて概観します。
後半の今回は国内線、国際線の構造をもう少し掘り下げ、そのあとコロナの影響を受けている現況について述べます。
なお市場構造は2019年の実績を、現況は2020年1~8月の実績をもとにしております。
(注) データは英国空港当局による。
3. 英国の国内線概観;
下表7は、国内線旅客(発着カウントで4502万人)を空港ペア(路線)で整理したものである。
1)ロンドン6空港の発着旅客は1231万人。
その他の空港で、ロンドン路線を除いた発着旅客は2039万人(実旅客は1020万人)。
2)ロンドンとエジンバラ、ベルファスト、グラスゴーを結ぶ路線の旅客だけで806万人を占める。
王室属領4島の旅客も147万人ある。
3)ロンドン路線以外では、ベルファスト、エジンバラ、マンチェスター、グラスゴー、バーミンガム間を結ぶ旅客が
多い。
【(表7)国内線の空港ペア別旅客数】
4. 英国の国際線概観;
下表8は、国際線旅客の路線別(行先別)内訳を示したものであり、下表9はさらにその内訳を示したものである。
1)EU&国際線の旅客数2.55億人のうち、欧州(EU以外を含む)は1.9億人である。
(*1) 国別ではスペインが最も多く3443万人(ほかにカナリア諸島で1020万人)。
以下イタリア、ドイツ、アイルランドと続く。
トルコも652万人あるのに比べて、ロシアの「92万人」と少ないのが目立って
いる。
2)米国とカナダで2579万人と、欧州以外では最も多い。
3) 中近東も1411万人と多いが、UAEとカタールで1000万人をしめている。
イスラエルも130万人。
アフリカは595万人で、南ア、モロッコ、エジプトの順で多い。
4)極東では香港、中国、シンガポールが多く、日本はタイより少ない78万人。
ベトナム、台湾は14~16万人の規模。
5)油田との往来旅客(北海油田へのヘリコプター輸送か?)も66万人ある。
【(表8)EU&国際線の路線別(行先別)旅客数】
【(表9)表8旅客数の更なる内訳】
Ⅱ.コロナの影響; 回復は鈍い
1. 1~8月の旅客数推移;
下図10、11は2020年1~8月の旅客数と対前年比率の推移を示したグラフであり、
下表12は7月と8月の旅客数(前年比較)である。
1) コロナの影響で4~6月の旅客需要はほぼ消滅状態であった。
7~8月は回復の気配がみえてきたが、勢いは強いものではない。
2) 世界的に回復が進みつつある「国内線」についてもその勢いは弱く、8月もEU路線(国際線)並みの25%である。
【(図10)1~8月旅客数推移(万人)】 【(図11) 同 対前年j比率推移(%)】
【(表12)7~8月旅客数(前年比)】
2. 英国系会社別旅客数(前年7月対比);
下表13は、7月の英国系航空会社の旅客実績(前年対比)である。
英国航空、easyJet、Jet2ともに前年の1割程度に留まっており、長距離便中心のVirginはほぼゼロ、TuiやBA cityflerは前年の2~3%である。
またFlybeやThomas cookの運航停止があるとはいえ、英国系航空会社のシェアが1/3程度
(外国社の回復の方が大きい)ということも、英国のコロナ影響が大きいことを物語っていると
思われる。
【(表13)英国系航空会社の7月旅客状況(前年比)】
以上