2020年10月
■コロナ禍における英国航空市場を分析しています。
2020.10.20.
英国航空市場の構造と現状(1)
コロナは欧州の航空市場にも甚大な影響をもたらしていますが、今回は英国に注目し、その市場の構造と現在の状況について2回に分けて概観します。
前半の今回は英国の市場構造の概観を、次回は国内線、国際線の構造をもう少し詳しく述べ、
その後コロナの影響を受けている現況について述べます。
なお市場構造は2019年の実績を、現況は2020年1~8月の実績をもとにしております。
(注) データは英国空港当局、国交省統計による、また図はグーグルMapによる。
Ⅰ.英国航空市場の構造; 大きな国際線ネットワーク
1. 英国の航空市場概観;
下表1は英国の内際別航空旅客数を、下表2は英国系航空会社の旅客実績を、そして下表3は発着空港別(ロンドン/その他空港別)旅客数を示したものである。
1) 国内線の規模は2251万人、国際線が2億5530万人であり、うちEU国への路線で1.7億人となっている。
《参考》 日本の航空市場と比べると、国内線は日本(1.14億人)の1/5であるが、国際線は日本(1.03億人)の2.5倍であり、市場範囲が広く旅客数の規模も各段に大きい。
《参考》 日本との旅客数比較(2019)
2)英国の主な航空会社は下表2のとおりであり、これらの会社で英国の国内線全てと国際線旅客の52%を輸送している。
・ 旅客数で見る限り、短距離LCCの「easyJet」が52百万人で最も多い。
・ 最大手の「英国航空」が国際線を中心に45百万人。
・ LCC2番手の「Jet2」が欧州路線で14百万人を運んでいる。
・ 長距離国際線中心の「Virgin Atlantic」が574万人。
・ 「Flybe」とBA子会社の「cityflyer」が国内線と近距離欧州線を担っているが、「Flybe」は破綻して3月に運航を終了した。
・ 旅行会社系の「Tui Airways」が不定期便中心に12百万人を運んでいる。
・ 「Thomas Cook航空」もTui同様にかなりのシェアを占めていたが、旅行大手のトーマスクックグループ破綻とともに運航を終了した(2019.9月)。
・ ほかに、WizzairやNorwegianのUK子会社等がある。
3)旅客の発着空港をロンドン(6空港)とその他に分けてみると;
・ 国内線は55%がロンドン発着旅客であり、
・ EU路線は59%が、その他の国際線は80%がロンドン発着旅客である。
【英国航空市場の旅客概要(2019年;単位万人)】
2. 英国の空港概観;
下図4はロンドンの6空港を示した地図、下図5は英国の主な空港を示した地図である。
また下表6は、各空港の発着旅客数を示している。
1)ロンドンの6空港;
ロンドンの中心市街にシティ空港、市街を取り巻くように5つの空港がある。
シティ空港; 短い滑走路(1500m級)と騒音対策のための急角度離発着のため小型機専用。2019年の発着旅客は5百万人。
ヒースロー空港; 最主要空港、特に長距離線は専らこの空港を使用。 発着旅客81百万人。
ガトウィック空港; ヒースローに続く第2の空港。 発着旅客47百万人。
スタンステッド空港; 欧州圏内路線が中心でRyanairの基地。 発着旅客28百万人。
ルートン空港; 滑走路が短く(2000m級)欧州圏内向け、TuiやWizzair、そしてRyanairの第2ベースとなっている。 発着旅客18百万人。
サウスエンド空港; 滑走路が短く(1800m級)、ロンドン市街から最も遠い。発着旅客2百万人。
【(図4)ロンドンの6空港】 【(図5)英国の主な空港】
2)その他の空港; 一般40空港+王室属領島の4空港
・ 定期便が運航している一般空港は40あり、うち年間旅客1000万人超がマンチェスター、エジンバラ、バーミンガムの3空港。
・ 特にマンチェスターは国際線27百万人を含む30百万人規模の旅客数。
エジンバラは、ベルファストと並びロンドンに繋がる国内線が多く、またEU発着旅客も多い。
バーミンガムはマンチェスターと同様に、ロンドンに繋がらない国内線とEU路線旅客が多い。
・ 発着旅客数100万~1000万人の空港が13。
うちベルファスト(2空港)とアバデーン、サザンプトンは国内線中心。
・ 旅客数100万人未満の空港が24空港ある。
・ イギリス海峡のチャンネル諸島に3つの空港(ジャージー、ガーンジー、オルダニー)があり、ジャージーが最も大きく年間旅客は173万人。
・ 同じくアイリッシュ海峡に浮かぶマン島も王室属領で、年間航空旅客は81万人。
【(表6)英国の空港と旅客数の内訳】
(注) 国内線は発・着双方で旅客をカウントしているため、実旅客数の2倍になっている
以上
その2へ続く