2020.8.22.
航空貨物の現状;運賃急騰で軒並み増収
コロナの影響で世界の旅客便が運航停止で貨物スペースがタイトになる中で、航空貨物が
売り上げを伸ばしている。
2020年4~6月期の実績を各社の公表資料からまとめてみた。(金額は円換算して表示)
これらの実績を見る限り、輸送量は前年より減少ながら、医療用貨物等運賃急騰が増収を
もたらしている。
① 日本貨物航空; 大型のB747型貨物機8機を運航。
前年4-6月期対比+7%の便数で、1.63倍の収入(288億円)を得て、赤字から黒字に
転じ、経常利益93億円を計上(利益率は32%)。
なお親会社の日本郵船では、定期船事業が減収の中で利益は3.5倍となった。
年間の経常利益の見通しを「0 →200億円」に上方修正した。
② ANAとJAL; ANAは11機(うち2機は大型)の貨物専用機と旅客便による。
JALは旅客便のみによる輸送(ベリーを使用した貨物専用便としての運航が多かった)。
ANAの貨物量は半減したが、単価UPで前年を小幅下回る貨物収入を確保。
JALは貨物量▲4割ながら単価倍増、前年を2割超上回る収入を稼いだ。
③ 大韓航空(KE)と中華航空(CI);
KEは23機、CIは18機の貨物機(全て大型機)、および旅客便による運送。
両社ともに貨物量を1~2割伸ばし、運賃UPもあって収入は倍増。
KEは貨物が牽引して4~6月期の全社損益が黒字となった。
④ シンガポール航空; 7機の大型貨物機と旅客便による運送。
貨物量半減ながら、運賃が2.7倍に上昇して大幅増収となった。
しかし営業利益はなぜか赤字となっている。
⑤ ルフトハンザカーゴ; 17機の貨物機と旅客便(減便を改造等で補完)による運送。
貨物量は4割減ながら、運賃上昇で2割超の増収。
旅客便のハンドリング料金減や燃油単価低下等で大幅費用減となって黒字となった。
但し1~3月期に跨る費用調整があったこともあり、収支は1~6月の半期でみるべき
だろう。
半期で収入が1475億円(+74億円)、利益が335億円(+317億円)ということである。
⑥ IAGとAF-KLM; AF-KLMは6機の大型貨物機を持つ。IAGは旅客便による輸送。
両社ともに貨物量が大幅減ながら、運賃上昇で増収となった。
旅客便の運航再開が遅れる中で、航空貨物の好調は当分続くと思われる。
参考ながら、供給不足は旅客便の減便にとどまらず、海運も同じようだ。
入港制限や、上陸制限からくる船員の交代難による人員不足などである。
また陸上輸送も、国境でのチェック(感染予防等) による物流の停滞もあるようである。
航空機の運航乗務員についても、例えば米国路線の場合、米国到着後は宿泊ホテルから
一歩も出ないことを条件に入国が認められ、ダブル編成で1泊して帰国、それを条件に
日本帰国後の14日間の経過観察が免除されるといった運用がなされているようだ。
以上