日本の航空市場;需要の回復状況は?(その2)国際旅客・貨物

2020.10.15.

日本の航空市場;需要の回復状況は?

(その2) 国際旅客は回復見えず、貨物は前年の8

 

コロナの影響が激しい日本の航空市場について、1月~8月の状況を眺めます。

2020年度の5ヵ月分(48月)を含んでいることから、ANA/JAL等国内航空各社の上半期決算を見通す上でも参考になると考えます。

今回は「国際旅客市場」および「国際貨物市場」を紹介します。

(注) データは東京/大阪航空局資料、ANA/JAL資料(プレスリリ-/IR情報)、
       出入国管理統計による。

  出典の異なるデータを組み合わせての推定値もあることをお含みおき下さい。

 

Ⅱ.国際旅客需要; 壊滅状態で復興の兆しもみえない

 

1.         国際線旅客数の推移; 

下図は国内空港での国際線発着旅客数(棒グラフ)と前年同月に対する比率(折線グラフ)の

推移を示したものである。 

 

1)コロナ影響が殆ど無い1月の旅客数は860万人(前年の101%)であった。

2)2月以降急激に落ち込み、4月には▲99%と需要はほぼ消滅。

以後壊滅状態が続き、8月の発着旅客数もわずか15万人(前年比▲98%)。

 

 

【国際線旅客数と前年同月比の推移(2020.18月)】(単位;万人、%)

 

2.         空港別旅客数(78月); 

下表178月の国際線旅客の空港別内訳をみたものである。

9割が成田/羽田、約1割が関西空港発着で、他は中部、福岡に僅かにあるばかり ⇒地方空港の国際線はほぼ壊滅である。

 

3.         ANA/JALの旅客数(78月); 

下表278月のANA/JALの旅客数、および搭乗率をみたものである。

両社ともに月間旅客数は3万人規模(ANAは前年比▲96%、JALは▲97%)である。

搭乗率も20%台で、これでは燃油費等の変動費もカバーできないであろう。

 

 

 【(表1)国際旅客の空港別内訳】    【(表2ANA/JALの旅客数と搭乗率】

 

4.         旅客の日外人別内訳(78月); 

下表378月の発着旅客を、日外人別、発着別にみたものである。

・ 入国外国人は極めて少なく月間1万人台、

出国(≒母国への帰国)外国人は23万人規模である。
  ・ 日本人は、出国/入国ともに月間23万人の規模である。

 ・      通過旅客は月間4万人規模(逆算値)である。

 

          【(表3)国際旅客の日外人別、発着別内訳】 

 

5.         外国人の在留資格別、および国籍別訳(7月); 

下表47月の入・出国外国人(3.5万人)について、在留資格別内訳をみたものである。

参考として2019年入国外国人(3119万人)の内訳も表示した。

また下表5は入・出国外国人を国籍別にみたものである。

 

1)入国(約1万人)の9割が一旦海外に出た者の再入国であり、中でも日本居住者やその

   家族が大半を占める。

2)出国(約2.5万人)についても日本居住者やその家族が多く(25%)、他には技術技能者、留学生、短期滞在者(主に観光)や特定活動者の母国への帰国が大半を占める。 

ビジネスの旅客はまだ少なそうである。

3) 入国外国人のうち、2019年には2781万人あった短期滞在者(主に観光)が、7月はわずか430人であった。 

4) 7月入・出国の外国人を国別にみると、中国、フィリピン、韓国の順で多い。

ベトナム、インドネシア等の東南アジア国や台湾が続いている。

 

                【(表4)外国人の在留資格別内訳】      【(表5)外国人の国籍別内訳】 

 国として入・出国制限の緩和に取り組んでいるが、世界的に感染が拡がっていることもあり、

復興への道のりはなお遠いと思われる。

 

 

 

Ⅲ.国際貨物需要; 輸送量は前年の8割だが運賃は高騰

 

1.         発着貨物量の推移; 

下図は日本発着貨物量(郵便を含む;棒グラフ;単位;千㌧※)について、18月の推移をみたものである。 折線グラフは対前年比率を示している。

コロナの影響で4月は旅客便の減便(Belly減)が大きく、輸送量は約25%落ち込んだが、
  その
後は貨物増便や旅客機の貨物便運航もあって、輸送量は前年の約8割まで回復して
  いる。
 

 

         【日本発着貨物量(千㌧)の推移】

 

2.         ANA/JALの貨物量推移; 

1) 下図はANA/JALの貨物輸送量(棒グラフ;千㌧)と、対前年比率(折線グラフ;%)の推移を示している。 なおANAの貨物事業は、貨物専用機(2020期首で12機)と旅客便(Belly)で行われているが、JALは旅客便のみである。

・ ANA; 2020年に入って貨物輸送量は前年を大幅に下回っている
                      (概ね半分程度)。
しかし6月以降は増加傾向にある。

 

・ JAL; 13月の輸送量はANAを上回った。 4月以降は旅客便の大幅減便で
              輸送力が落ちたものの、旅客機の貨物便運航で補完し、前年比約7割を
              輸送している。
 

 

        【ANA/JALの国際貨物輸送量(千㌧)と対前年比率】

 

2) 下表はANA/JALおよび他の航空会社の貨物輸送量(逆算値)と、ANA/JAL2社のシェア
を表わしたものである。

日本の会社としては、ほかに日本貨物航空がある。またFedExUPS等の一貫輸送型貨物会社など貨物専用会社も多く、「ANA+JAL」のシェアは2025%で推移している。

 

 

     【輸送量の会社別内訳とANA+JALのシェア】

 

3.         ANA/JAL46月の貨物事業実績; 

下表は、ANA/JAL2020.46月期の貨物事業の実績を示したものである。

 

ANA; 輸送量は前年同期の半分以下に減少したが、収入単価が2倍以上に高騰して、

貨物収入は258億円を確保した(前年比95%)。

 

JAL; 旅客便(Belly)激減の中で、旅客機の貨物便運航による補完もあって、輸送量は前年の6割を確保した。 収入単価の高騰によって貨物収入は、前年を23%上回る206億円となった。

 

 

          【ANA/JAL46月期の貨物事業実績】

 旅客便の復興が遅れている状況下、貨物の好況は当面続き、ANA/JALにとっては明るい

材料であるが、事業規模からみて、国際旅客の不振をカバーするには限りがあろう。

 

以上

 

*併せてお読みください。