2020年9月
コロナ禍における台湾の航空市場分析です。3回に分けてお届けしています。
2020.9.17.
台湾の航空市場と主要2社の現状
(その1)台湾の航空市場
3回シリーズで、台湾の航空市場と主要2社について解説します。
① 台湾の航空市場を俯瞰し、特性をみます(2019年実績をもとに)。
② 台湾航空市場におけるコロナの影響をみます(2020.1月以降のデータをもとに)。
③ 主要2社の収益性と財務の現状(2020年上期実績をもとに)をみます。
(注1) データは台湾空港当局、個別会社や証券系に、画像はグーグル等ネットによる。
(注2) 金額は全て円貨表示(NTD=3.62円で換算)としました。
1.台湾の航空会社
台湾の民間航空は、主にチャイナエアライングループとエバ航空グループの2強で成り立っている。
① チャイナエアライン(中華航空; China Airlines;CI) このレポートでは以後「中華」という。
主に中大型機で中長距離路線中心に多数の貨物専用便も運営。
アライアンスはスカイチームに属し、JALとも提携(コードシェア等)している。
主要株主は(財)中華航空事業発展基金会(China Aviation Development Foudation)。
傘下に2つの航空会社を持つ。
・マンドリン航空(華信航空); リージョナルJetとプロペラ機で、中国本土路線と国内線を運航。
・タイガーエア台湾(台湾虎航); A320型機でLCCとして近距離国際線を運航。
夫々それぞれ以後「華信」、「虎航」という。
② エバー航空(長栄航空;EVA Airways;BR) 以後「長栄」という。
長栄海運を中心とする長栄集団が設立し、今も主要株主。
アライアンスはスターアライアンスに属し、ANAとも提携(コードシェア等)している。
自社は中大型機での中長距離路線と貨物便に力点を置き、小型機の子会社を持つ。
・ユニ-航空(立栄航空;UNI Air); A321とプロペラ機で中国本土線や国内線を
運航する。以後「立栄」という。
③ その他;
・ 遠東航空(Far Eastern Air
Transport); 小型Jetとプロペラ機で国内線、
近距離国際線を運航していたが、破綻により2019年12月に運航を停止した。
・ スターラックス航空(星宇航空;Starlux Airlines); 長栄集団の後継者
争いでスピンアウトした張國煒氏が設立し、2020年1月に運航開始をした。
以後「星宇」という。
現在小型機のみだが、将来は大型機(A350)により長距離線への進出を予定。
【参考;CI路線略図】 【参考;BR路線略図】
欧州路線はCIの方が厚い 北米直行便はBRの方がかなり厚い
【台湾の航空会社と保有機材(2019.12)】
2.台湾の航空市場(2019)
台湾の航空市場は、小さい国内線市場、大きい国際線旅客市場と貨物市場から成っている。
これらについて2019年実績をもとに解説します。
① 国内線市場; 需要規模は600万人
・ 年間便数は約24万便で、旅客数は610万人である。
・ 日本の旅客数(1.1億人)に比べると5.4%(19分の1)であり市場としては極めて
小さい。
・ 大半(93%)が台北など台湾本土と、澎湖/金門など海外地点を結ぶ需要である。
(国内線空港は15、うち年間発着旅客数100万人超は5空港)
・ 半数の3百万人を長栄Gの立栄航空(ユニー)が運び、1/4を中華Gの華信(マンドリン)が
運んでいる。 残りの1/4は遠東航空であった(12月に運航停止)。
【国内線の旅客状況(2019)】 【台湾の空港】
② 国際線旅客市場;
年間便数は34万便(含貨物便)で、旅客数は約6000万人である。
1)相手国別にみると、中国大陸と香港マカオで2066万人(全体の35%)であり、
日本の1417万人(24%)が続く。
東南アジア計で1304万人(22%)、韓国が498万人(8%)である。
欧米合わせて約500万人(8%)となっている。
2)航空会社別にみると、チャイナエアライン系が18百万人(30%)、エバ航空系が13.7百万人
(23%)であわせて53%を占め、外国社は47%のシェアである。
【旅客内訳(相手国別)】 【旅客内訳(航空会社別)】
3)日本と比較すると;
・ 台湾の国際線旅客6000万人に対し、日本のそれは1億人強。
・ 台湾は53%を台湾航空会社が運んでいるのに対し、日本は23%であり、77%を外国社に委ねていることになる。
台湾は主要2社グループで3200万人を運んでいるのに対して、日本は主要ANA/JALにLCCや中堅会社も総動員して2340万人ということである。
・ 台湾は需要が桃園機場に集中(81%)しているのに対し、日本は成田が34%
羽田が18%となっている。
【台湾と日本との構造比較】
4)日本~台湾旅客の内訳(参考);
・ 日本~台湾路線の旅客(1417万人)について、会社別内訳をみると;
日本の航空会社が運んだ旅客はその25%の358万人であった。
75%(1060万人)を外国社が運んだという勘定になる。
・ 日本の会社ではPeachが最も多く(統合相手のバニラを合わせると187万人)、日本側の過半を運んだことになる。
【日本~台湾旅客の内訳】
③ 国際線貨物市場;
・ 年間取扱量(出発/到着/通過)は2284千トンであった。
・ 海外(除中国大陸)からの台湾発着貨物が46%、中国大陸との間の貨物が10%、
そして台湾で載せ替えて第3国に向かう継ぎ越し貨物が44%であった。
こうした経由貨物が多いことも特徴といえよう。
・ 中華Gの貨物は863千トン(38%)、長栄Gの貨物は559千トン(24%)であった。
・ 実績には旅客機Bellyでの輸送も含まれるが、貨物機数(中華19機/長栄5機)
の割合 を考慮すると、長栄Gは効率よく運んでいるともいえるのではないか。
【国際貨物の内訳】
以上