2020.9.9
中国主要5社の収益力と財務力(前)
2020上期;各社の赤字内容は?
中国の主要5社について、2019年と2020年上期(1~6月)の収支・財務状況を2回に分けて
説明します。
5社とは、政府系3社(※)と、民営の海南航空、民営LCCの春秋航空です。
(※) 中国国際航空(国航);Air China、
中国南方航空(南航);China Southern Airlines、
中国東方航空(東航);China Eastern Airlines
(注) データは各社および証券系、その他による。
また金額はMB=15.53円で円貨に換算して表示している。
1.主要5社について
国営の中国民航は1988年に6つの会社に分割された。 その後2000~2002年に再編され、現在の3社の形が出来上がった。
一方1993年には民間資本による海南航空が運航を開始し、2005年にはLCCの春秋航空が営業を開始した。 その後も新しい航空会社が誕生し、また再編、吸収統合などがおこっている。
海南航空は2018年頃から業績・財務状況が悪化していたが、コロナの影響が引き金となって2020年2月には破綻し政府管理下で運航を続けている。
政府系3社は夫々700機以上を保有し、売上高(2019年)も2兆円規模となっている。
但しリース機が全体の2/3を占めている。
海南航空は200機強を保有して売上高は1.1兆円(2019)、春秋航空は約100機を保有し、売上高は2300億円規模の会社である。
【中国の主要航空会社とその系譜】
【政府系3社の機材内訳】(2020.6)
リース機が多い。
2.各社の収支・財務状況
各社について、2019年および2020年上期(前年対比)の収支・財務状況をみた。
国際線は需要が落ち込んだままなのに対し国内線は回復が見られる(9月6日のレポート参照)ことから、その構成割合が収益性の差の要因ともなっている。
(注1) 税前利益; 営業利益から支払利息などの金融費用を差し引いたもの
(政府系3社は金融費用が大きいことから、収益性をみるのには「税前利益」
を採用)
(注2) 「航空機等」にはリース資産を含み、「借入金」にはリース債務を含む。
(注3)
現預金・借入金規模の会社間比較に、売上(2019)の〇ヵ月分という指標を
使った。
① 中国国際航空; 2019年は2.11兆円の売上げで税前利益は1416億円(利益率7%)であった。2020年上期は売上高4604億円(前年同期の45%)で、▲2034億円の赤字(利益率▲44%)であった。
上期末の現預金残高は2191億円で、期首に比べて690億円増加している。
一方借入金(リース債務を含む)は3776億円増えて2.53兆円になった。
現預金の規模は売上高(2019)の1.2ヵ月分相当であり、借入金規模は14.4ヵ月分
となる。
純資産は赤字の影響で減少して1.28兆円となった。
資産効率をみる「航空機等回転率(売上高÷航空機等)」は0.57回と低めであった。
また2020上期末の借入金依存度(借入金÷総資産x100%)は56%、自己資本比率(純資産÷総資産x100%)は28%であった。
② 中国南方航空; 2019年は2.39兆円の売上げで税前利益は630億円(利益率3%)であった。2020年上期は売上高6051億円(前年同期の53%)で、▲1855億円の赤字(利益率▲31%)であった。 他の政府系2社に比べて損失率が低いのは、国内線割合が高いことも関係していると考えられる。
上期末の現預金は2698億円で、期首に比べて2395億円増加している。
一方借入金は2516億円増えて3.12兆円になった。
現預金の規模は売上高(2019)の1.4ヵ月分相当であり、借入金規模は15.7ヵ月分と
なる。
純資産は赤字の影響を増資(2477億円)で打ち消して1.29兆円となった。
資産効率をみる「航空機等回転率」は0.56回と低めであった。
また2020上期末の借入金依存度は63%、自己資本比率は26%であった。
③ 中国東方航空; 2019年は1.87兆円の売上げで税前利益は668億円(利益率4%)であった。2020年上期は売上高3907億円(前年同期の43%)で、▲1869億円の赤字、利益率は▲48%と政府系3社中で最も低レベルであった。
上期末の現預金は1157億円で、期首に比べて929億円増加している。
一方借入金は3374億円増えて2.85兆円になった。
現預金の規模は売上高(2019)の0.7ヵ月分相当、借入金規模は18.2ヵ月分と、いずれも
政府系3社の中では最も厳しい数値となっている。
純資産は赤字により減少して1兆円を割り込んだ。
資産効率をみる「航空機等回転率」は0.49回とこれも最低であった。
また2020上期末の借入金依存度は64%、自己資本比率は21%であった。
前編はここまでです。
後編では、海南航空、春秋航空、そして各指標の比較を行います。
以上