2020年12月10日
スターフライヤーの収支・財務状況(上期実績分析)
コロナ禍でANAへの依存度高まる
スターフライヤー(SFJ)の2020年度上期業績を、公表されたデータをもとに分析した。
コロナの影響で自社販売収入が大幅減となる中で、ANAからのコードシェア(座席販売)収入に大きく依存する結果となった。
1. 収支; 79億円の収入で▲63億円の営業損失
① 営業収益は前年の202億円から6割強落ち込み、79億円となった。
営業費用は▲27%の減にとどまり、営業損失は▲63億円となった。
② 収入のうち自販収入は▲8割減少して28億円となった。
一方ANAからのコードシェア収入は50億円(▲17%減)で収入の64%を占めた。
2. 供給席数と旅客数; 自社席数が大幅減、旅客は更に減
① 総供給(便数と総席数)は前年の約6割(▲42%減)であったが、
自社席数は▲58%減、ANAへの販売席数は▲14%であり、結果としてANAの席数が
過半(53%)を占めた。
自社席数の多い羽田=北九州/福岡路線の減便が大きかった一方で、ANAへの販売
席数の多い羽田=関西/山口宇部、中部=福岡線が前年並み以上の供給であったため
である。
② SFJの旅客数は前年より▲8割減の17万人に留まり、搭乗率は75↘36%と大幅に落ち込んだ。
3. 1便当りの収支; ANAからのコードシェア収入は増加
収入・費用や輸送実績等を便当りに換算して眺めると;
① 1便当りの収入は(前年)169↘(当期)114万円と▲55万円(▲33%)減少したが、
ANAからのコードシェア収入は逆に51↗73万円と+22万円(+44%)増加している。
逆に自販収入は119↘41万円と約3分の1に減少。
② 全150席中、ANAへの販売席数は53↗80席と1.5倍に増えた。
羽田=北九州/福岡等自社席数の多い路線の減便が大きかったことによる。
便当りの自社席数は半分弱の70席となった。 搭乗した旅客は25人であった。
③ ANAへの販売座席の平均単価は前期より若干低下して9,174円となった。
自販旅客の収入単価は、前年並みの16,441円であった。
一方座席コストは、減便によって固定費負担が割高になったこともあって、約19,000円と高騰した。
4. 財務状況; 課題は手元資金と純資産レベル
① 大幅赤字で純資産が減少して8億円となり、債務超過の危機が迫っている。
② 40億円の資金を新規調達(うち9億円を返済に充当)したことで借入金は31億円増加。
9月末の手元資金はほぼ期首並みの111億円となった。
③ その差額(30億円の資金流出)は概略次のとおりと推算される。
赤字による流出は約▲45億円(減価償却費や引当金での内部歩留まりをネット)と試算。
15億円規模の資金増要素は、未収金回収や未払金増(支払時期ずれ?)等によるものである。
④ リース機が多いことから減価償却費による資金の歩留まりが少なく(半期で9億円程度)、
それを除いた赤字額はほぼそのままCash流出に繋がる。
現在の手元資金(111億円)も次年度を見通した場合、決して楽観できない。
⑤ また現在の借入金には純資産規模(一定レベルを割り込まないこと)や経常利益(2期連続
赤字としないこと)について条件が課されている。
それを満たせない場合は一括返済という事態もあり、この面では予断を許さないといえるのではなかろうか。
以上