2020.7.3.
スカイマークの決算と今後の展望
この都度発表されたスカイマーク決算について分析するとともに、今後を展望してみたい。
(はじめに)
2019年度は、前年比で売上げ憎となったが、営業利益は減少、最終損益は赤字となった。
これについて、(1) 営業収支ベースの分析と2019年度内のコロナの影響規模、
(2)最終損益ベースと財務状況 について分析し、加えて
(3) 今後の収支、資金への影響について展望してみたい。
1. コロナの2019年度決算への影響度と2020年度現時点での影響(試算)
① 2019年度への影響は実質「3月」のみである。
1日当りの座席数/旅客数は2月まではほぼ平常どおりであり、3月に入ってから供給座席は微減、旅客数で半減近くとなっている。
搭乗率は4~2月の平均で「82.3%」(これは定常レベル)、しかし4~3月のそれは「80.0%」 となっている。 3月の旅客減の影響がどれほど大きかったかがわかる。
その影響額は収入減=営業利益減にして26億円程度と試算される。
② 2020年度4~5月の影響は?
4~5月の供給は▲7割減(→変動費減に繋がる)、旅客数は▲9割減(→収入減)となっ
ている。
ここから試算すると2ヵ月の営業損益は▲90億円程度となる。
これがほぼそのままCash流出につながると考えられるため、同じ状態が継続すれば、
期末資金が3ヵ月程度で底をつく勘定になる。
2. 2018→2019の収益性をみると
① 事業規模; 27→29機と増機して、神戸関連路線を増便し、国際定期便にも進出した。
供給座席は+6%の946万席、旅客は+2.5%増の757万人であった。
費用増は座席を上回る+8.8%、収入増は+2.4%とそれを下回り、営業損益は▲50億円の減益となった。
② 収益性の指標;
・ 1便当たりの収入は169万円、営業利益は4万円(前年より減少)。
・ 1便当たりの旅客数は142人で搭乗率は80.0%(前年より低下)。
・ 旅客平均単価は約12,000円で、座席コストは9,300円程度、
損益分岐利用率は78%で、搭乗率との差2ポイントが利益分。
3. 最終損益と財務状況
① 「繰延税金資産」の償却(一括損金処理)で赤字に。
過去からの繰延税金資産(27億円)に当年度分も合わせて35億円を特別損失処理
したことで最終損益は▲13億円の赤字となった。
税務規準を超えた費用化は、その年度では課税されるものの、将来の利益への課税額から減額されるが、将来の利益を見込まないことでその軽減額を会計上捨てる処理を行ったといえる。
② 「前受収入」の▲47億円;
4月以降の予約が大幅に減少したことや、既に受け取っていた運賃の返金によって
109→62億円と大幅に減少した。それは手元資金の減少に繋がっている。
③ 「デリバティブ負債」と、純資産中の「評価・換算差額等」は、燃油予約から発生(予約単価に対する現在単価の下落)したものと考えられる。
「定期整備引当金」の増は機数増によるもの、「長期預け金」の減少は、定期整備は増ながら、「返還整備引当金」の額が減少したことによると考えられる。
(さいごに) 今後の展望
4月からこれまでの状況を考慮すると、4~6月の3ヵ月間の赤字(=資金流出)は、期首にあった資金の量(約130億円)に匹敵する規模と思われる。
7月以降の需要の戻り具合にもよるが、5月に300億円の借り入れを行ったことで、年明け~年度末までの資金繰りはクリアできると思われる。
この夏期は、国内線での需要回復への見込みから国内各社が供給を復元してきており、
業績上向きを期待したい。
以上(Y.A)