2020年7月21日
コロナ禍直撃と対応
(北米トップ)デルタ航空のQ2実績とコロナ禍対応
北米巨大3社の中でも、売上高・利益率ともにTop(2018実績)のデルタ航空(DL)は、2020年第2四半期(4-6の3ヵ月)に約7500億円もの赤字(税前損益)を計上した。
3月にコロナの影響が出始めた第1四半期でも約650億円の赤字(税前損益)であったが、第2四半期(Q2)はフルにコロナ禍の直撃を受けたためである。
ここではその内容を解析するとともに、可能な範囲で今後を展望したい。
世界各社に先駆けて発表されたDLの実績は、今後他社決算をみるに当って参考になろう。
なお金額は全て円換算額($=108円)で表示している。
1. 旅客実績; 旅客は前年のわずか16分の1
・ コロナの影響がほぼ3月だけだったQ1の旅客実績(RPM)は、前年比▲17%であった(供給=ASMは▲6%)。
・ Q2は影響がフルに出たため供給▲85%に対し、旅客は▲94%と著しく落ち込んだ。
・ 搭乗率も(前Q2)88↘(当Q2)34%と大きく落ち込んだ。
【供給座席量と旅客数】(四半期対比)
2. 収支状況; Q2内の営業活動での赤字は4000億円強
・ 旅客収入は旅客実績に連動して大幅減となった。
(前Q2)12,227億円 ↘ (当Q2)わずか732億円、▲94%である。
・ 他の収入の減少は旅客より鈍かったため、営業収益は▲88%であった。
・ 税前利益は、(前Q2)2060億円↘(当Q2)▲7575億円と、ほぼ1兆円悪化した。
・ 但し当期には、今後への悪材料を出し切る減損処理(大半がCash流出を伴っていない)をしており、それを除くと税前赤字は▲4000億円強となる。
(減損内訳) B777/MD90/B737-700等の機材退役前倒し処理 ▲2650億円
LATAM/AeroMexico等への出資額の損失処理 ▲2223億
(補助金獲得=赤字減殺) 政府化からの給与補填Q2分 1382億円
【収入と損益、輸送実績】
3. 財務状況; 手元資金確保に専念 ⇒ほぼ全運休でも1年分程度?
・
大規模な借入金;
(2020期首)1.2兆円 ⇒(6月末)2.7兆円(+1.45兆円)に。
・ 手元資金の増;
(2020期首) 3000億円 ⇒(6月末)1.7兆円(+1.38兆円)に。
・ 大幅赤字ながら、Cash流出のない減損処理を除くと、実際の資金の減少額はそれほどでもなく、補助金(~9月まで)や機材リースバック化による資金の入りもあって、
借入金の規模増が、ほぼそのまま手元資金の積み上げに繋がった。
・ この手元資金量は、Q2並みの厳しい状態が続いたとして、ほぼ1年は持ちこたえられ
る程度と試算される。
しかし今後金利や返済の負担が厳しくなることは容易に予測される。
・ 出資金が(期首)2773億円↗(3月末)3979億円↘(6月末)1764億円と変動しているが、これはLATAMに出資(同社はワンワールドを離れる運び) ⇒しかし破綻して減損処理と
なったことが主因である。
【財務の状況】
4. 政府支援とリストラ策等; 当方では現在以下の情報を把握(確実性未確認を含む)しているが、既に実行に移されているのもある。
① 資金関連;
・ 米政府は9月末まで解雇しないことを条件に、米国内10社に対し総額250億㌦の
人件費支援を行っているが、デルタも54億㌦(5800億円)を得ることになって
いる。
・ 市中融資で約54億㌦(5800億円)の資金を調達することになっている。
・ 政府に最大46億㌦の融資を申し込んでいる。
・ 米大手に、顧客に付与した「マイレージ」を担保に融資を受ける話が進んでいる。
② 機材関連; B777の全機、MD88&90型全機、B737-700の一部を早期に退役させる。
③ 雇用関連;
・ 希望退職を募り、既に1.7万人がそれに応じている。(従業員総数9.1万人)
・ 4.5万人が一時的無給休暇に入っている。
・ パイロットからは2200人を受け付けた。会社側は更に乗務時間の15%削減を提示。
なお、第3四半期の売上高と輸送能力について、前年比20~25%減との見通しを発表している。
以上