2020.7.26.
コロナ禍への対応力は?
米国主要3社の収益力と財務力
米国の主要3社、即ちデルタ航空(DL)、ユナイテド航空(UA)、アメリカン航空(AA)は、事業形態が類似し、売上規模も年間5兆円でほぼ並んでいる。
コロナ禍で受けている影響(旅客減と収入減)も3社はほぼ同規模であり、対応もほぼ似通っている。
では3社に力の差はないのだろうか?
あるとすればどこが強いのだろうか?
2019年度と、コロナの影響を受けている2020年上期(1~6月)の実績(IR情報)から、筆者独自に採用した指標によって、3社の収益力と財務力を比較して評価した。
なお金額は円換算額を使用している($=108円で換算)。
(結論) 収益力・財務力ともにデルタ航空がよく、ユナイテド航空が続き、
かなり離れてアメリカン航空が位置する。(筆者評価)
【収益力と財務力の指標】(金額;億円)
1. 収益力;
① 期首純資産; 2019年までの稼ぎの累積が反映された純資産額は、DLが1.66兆円と最も多く、UAは1.25兆円で続き、AAは債務超過の状態。
その中で利益剰余金ではDL/UAともに1.24兆円で並んでいる。
② 機材効率(航空機回転率); 売上高を航空機価額で除した航空機回転率(航空機の収入獲得力を示す)をみると、DLは4兆円の航空機で5.1兆円の売上を稼いでいる(1.27回転)。 UAは3.8兆円の航空機で4.7兆円の稼ぎ(1.24回転)、AAのそれは1.05回転と低い。
③ 2020上期損益; 1~6月の旅客実績は3社ほぼ同じ規模ながら、赤字額の規模(税前損益から特殊要素を除外)をみると;
DLが▲2300億円、UA▲3300億円、AA▲4900億円の順となっている。
(参考) 特殊要素;
DL(▲4873億円);退役させる機材について一挙に減損処理
LATAMやAeroMxicoへの投資額を減損処理
UA(▲1099億円); 機材、投資、無形固定資産(中国路線、ロンドン空港スロット等)
に係わる減損処理(詳細不詳)
2. 財務力;
① 6月末の純資産; DLは9400億円、UAは1200億円の増資を行って9200億円、
AAは1600億円の増資を行ってなお▲3400億円の債務超過。
② 資金力;
(DL) は1.45兆円の借入を行ったが、手元資金も1.38兆円増加した。
1~6月に大幅赤字で流出した分は、機材セール&リースバック等で得た資金等で補われ、借入増で得たCashはほぼそのまま手元に積みあがった。
手元資金は2019年収入の4カ月分、借入金残高は収入の6.3カ月分。
(UA)増資(1200億円)と借入増(4800億円)で得た資金は、機材購入や赤字による流出の埋め合わせに回ったこともあり、手元の積み増しは2700億円にとどまった。
手元資金8000億円は収入の2.1ヵ月分、借入金2.7兆円は6.9ヵ月分。
(AA)1.1兆円の新規借入も一部は既存借入の返済等で消費されて、借入残高の増加は+7100億円。
増資による1600億円やセール&リースバックもあったが、赤字による流出に補填されて、手元資金は6500億円の増に留まった。
手元資金1.06兆円は収入の2.6ヵ月分、借入金4.3兆円は10.5ヵ月分。
(さいごに)
米国主要3社での収益力・財務力は上述のとおりですが、
ではLCCの雄(SouthWestなど)と比較すればどうか?
それも近い後日に行いたい。
このレポートで採用した指標や評価は筆者独自のものです。
今後の環境変化や個社の対応によっても将来は流動的ですが、米国の航空事業の理解の一助となれば幸いです。
以上