2020.7.29
コロナ禍への対応力は?
LCCの雄 Southwestの超財務力
先回は米国の主要フルサービス3社の収益力と財務力をみました。
今回は世界のLCCの頂点に立つサウスウエスト航空の収益力と財務力をみます。
更にはFSCでは優良のデルタ航空と比較します。
・ SWは赤字によるCash流出リスクに備えて、積極的に資金を調達、
6月末の手元資金は、売上の7.7ヵ月分となっている。
・ これは借入金を上回る規模である。
・ FSCでは優良のDLに比べても、財務力で上回っている。
1. SWの旅客実績; Q2は前年の6分の1
・ コロナの影響がほぼ3月だけだったQ1の旅客実績(RPM)は前年比▲22%だった。
・ Q2は影響がフルに出て、旅客実績は前年比▲84%(供給は▲55%)だった。
・ 搭乗率も大きく落ち込んで31%となった。
・ なおコロナの影響は、国内線は国際線より小さいこともあって、SWの収入減少規模は、FSC3社に比べると、僅かながら少なくなっている。
【供給座席量と旅客数】(四半期対比)
2.SWの収支状況; Q2内の税前赤字は▲1338億円
・ Q2の旅客収入は旅客実績に連動して大幅減となった。
(前Q2)5,926億円 ↘ (当Q2)わずか760億円、▲87%である。
・ 税前利益は、(前Q2)1,045億円↘(当Q2)▲1,338億円と、約2400億円悪化した。
・ 但し当期には政府からの補助金で人件費負担が約850億円軽減されているため、実質的赤字は▲2200億円規模といえよう。
・ Q2の最終損益は▲988億円であった。
【収入と損益、輸送実績】
3.SWの財務状況; 手元資金は潤沢 ⇒借入金を上回る
① 徹底した手元資金積み上げ;
赤字継続による大幅な資金流出リスクに備えて、2020年に入ってからの資金調達は極めて積極的であった。 即ち;
・ 新規借入金12,400億円(但し返済▲5300億円)
・ 機材のセール&リースバック 880億円
・ 増資2480億円 総額1.6兆円規模である。
② 手元資金と借入金の変化;
手元資金;(2020期首) 4400億円 ⇒(6月末)1.56兆円(+1.12兆円)に。
借入金; (2020期首) 2900億円 ⇒(6月末)1.04兆円(+7500億円)に。
6月末の手元資金は借入金を5200億円上回っている。
【財務の状況】
4.デルタ航空との比較; SWの財務力はDLを上回る
①収益力; これまでSWが上回っていたが、今決算の状況に限ればほぼ同じくらい?
・
期首純資産; 2019年までの稼ぎの累積が反映された期首の純資産額(大規模な自己株式取得があるSWは利益剰余金をみた)は、DL1.66兆円に対してSWは1.9兆円。
売上規模に照らしてもSWの方が高収益といえる。
・ 機材効率(航空機回転率); 売上高を航空機価額で除した航空機回転率(航空機の収入獲得力を示す)をみると、DLがやや上回っている。
・
2020上期損益; SW▲1300億円、DL▲2300億円は、売上規模(2019)に照らして
ややDLがよさそう。
②財務力; SWの手元資金は、借入金の規模を上回る
・ 手元資金; DLは1.69兆円で売上(2019)の4.0ヵ月分、
SWは1.56兆円で売上の7.7ヵ月分。
・ 借入金; DLは2.66兆円で売上の6.3ヵ月分
SWは1.23兆円で売上の6.1ヵ月分
【収益力と財務力の指標】(金額;億円)
以上