2020年4月11日
コロナ禍で航空会社の財布の中はどうなる?
(キャッシュフローのシミュレーション)
コロナウイルスによって航空会社は甚大な影響を受けている。
経営的には、収入激減の中で固定費等でCash流出が激しいと危惧される。
今の状況に資金的にどこまで耐えられるか? これからどれ位の資金が必要だろうか?
ここでは一つの「モデル会社」によって、収支・資金をシミレーションした。
《モデル会社》 日本で国内線・国際線を営み、旅客収入規模が1.2兆円。
① 期首残高; 手元預金 3,600億円、ここから前受運賃▲100億円を払い戻す。
有利子負債残高5,000億円、前受運賃残高1,700億円
なお事業継続に必要な「運転資金」はCash流出費用の2ヵ月分「1,500億円」とする。
→期首の資金余剰は「2,000億円」 →この先どうなっていくか?
② 自然体での収支; 年間の通常事業による利益は「1,500億円」
(内訳) 国内旅客収入6,000億円 ・国際旅客収入6,000億円 ・ 合計12,000億円
国内旅客費用5,000億円 ・国際旅客費用 5,500億円 ・
合計10,500億円
③ 自然体でのキャッシュフロー; 余裕は十分
(資金収入) 事業利益 1,500億円 +減価償却費1,400億円
(資金支出) 設備投資(機材等)▲2,300、借入金返済 ▲600、配当金▲300億円
なお新規借入れ、税金支払は「0」と置いた。
(自然体での年間業績)
・ 事業利益は1,500億円
・ これに償却費1,400億円を加えて資金収入は計2,900億円
・ 設備投資が大きく(2300)、借入金返済(600)、配当金(300)の資金流出があるため、
資金は▲300億円減少する。これに税金支払いも加わる。
⇒ 余剰資金2000億円の範囲内、または新たな借入れで対応する。
↓
それらを「月額」に換算、そしてコロナの影響を加味
(コロナ影響の想定)
・ ※1 国内線; ▲3割減便、かつ運航する部分の搭乗率は▲2割低下。(70↘56%)
・ ※2 国際線; ▲7割減便、かつ運航する部分の搭乗率は▲3割低下。(80↘56%)
・ ※3 減便3割分の費用減は▲38%(*)(即ち3割x0.38→全体で▲11.4%費用減)
※4 減便7割分の費用減は▲38%(*)(即ち7割x0.38→全体で▲26.6%費用減)
(シミレーション結果)
・ 収支(事業利益)は毎月▲321億円の赤字
(仮に1年続けば年間収入はわずか4620億円、事業損益は▲3852億円の赤字に)
・ キャッシュは毎月▲471億円ずつ減少
・ 従って余剰資金の「2,000億円」は、この状態が4ヵ月続くとほぼ底をつく
・ この状態1年間で、余剰資金(※)をマイナス(経営危機)にしないためには、
最低でも3,650億円の資金を補充する必要がある。
・ 設備投資(機材等)と配当金を半減させたとしてもC/Fは毎月▲362億円の流出。
余剰資金は数か月で底をつき、この状態が1年間続けば、2,350億円超の資金注入で
ようやく余剰資金(※)が0スレスレの状態である。
(※)季節波動リスク対応のためにもいくらかは確保しておきたいところ。
【コロナの影響シミュレーション】
(補足説明)
・ モデル会社の数値;大手航空会社の2018年度実績や2019Q3残高を参考にして作成した。
・ 減便規模は現状を参考に想定した。(目下の状況はもっと厳しいかもしれない。)
・ 減便による費用減(指数)の想定は以下のとおり。(*)
費用の約20%を占める燃油費や10%を占める空港使用料等の出費は減便によって大きく減少するが、機材費、人件費、その他の費用は余り減らない。
このため例えば減便▲100があっても費用減は▲38(想定)に留まる。
(注) 減便=規模縮小は効率低下を招くため、費用減はもっと少規模の可能性があるとともに、コロナのための特別な対応でむしろ増となる費用もあろう。
→ その場合シミュレーション数値はもっと厳しくなる。
他方で、雇用調整等による費用削減があればその分影響は緩和される。
【減便(減席)による費用減(指数)】
以上(Y.A)