2020.7.16
コロナ禍直撃で資金繰りの危機?
エアアジアの経営・財務状況を読み解く
(その2 資金の流れは?)
ここではエアアジア・グループの業績と資金の流れを読み解きたい。
2017年にピークを示したあと業績は悪化。
2018~2019年の資金繰りについて分析する。
1. エアアジアの財務状況の変化(2017~2020.3月);
① 収益性; 売上高は2017→2019と伸びているが、営業損益は悪化。
2018年は営業損益で大幅な減益(398→89億円)となったが、子会社の売却等で特別な利益(268億円)があり、最終損益は2017年を若干上回る426億円であった。
2019年は営業損益段階で赤字、デリバティブからの損失等も加わって税前で▲138億円の赤字となった。
2020年Q1は、▲167億円の営業損失にデリヴァティブ損や為替差額が加わり▲243億円
の税前損失となった。
② キャッシュフローとBS; 目立つ配当金での資金流出
1)2018年は利益や減価償却費からの営業CF(335+147億円)があり、ほかに航空機や子会社等の売却(3321→1659億円)で2466億円のCashを得た。
2)これを借入金の返済(2339→302億円)や「配当金(436億円)」にまわした。
なお新たな設備投資(282億円)は新たな借入れ(302)億円で対応した形である。
3)純資産額をみると、当期利益(426億円)で増加したものの、「配当金(436億円)」で
流出したことで、むしろ減少して1554億円となった。
4)2019年に入り、「配当金(856億円)」の支払いで、純資産は大きく減少(1554→717億円)した。
5)その原資は航空機等の更なる売却(1659→442億円; 得たCashは1209億円)の
一部で賄った。
6)殆ど全ての航空機等を売却したが、そのリースバック価値を資産と負債に反映させる必要があった(2019末価値で3000億円規模)。
またそのリース負債の返済も資金が必要となった(借入金返済額とあわせ1377億円)。これは機材売却で得たCashの残りと減価償却費(499億円)、手元資金の取り崩し(651→404億円)等で賄った。
7)2020年に入って3月までに、大幅な営業損失(▲167億円)と営業外収支(デリバティブ損等▲76億円)で資金は目減りした(651→404億円)。
リース資産等の償却費(125億円)は借入金返済(リース負債等▲191億円)の一部に
相当する。
なお3月末の手元資金404億円は、前年の売上(≒費用)に対応させると1.6ヵ月程度に相当する。 4月以降は売上げ(資金流入)が激減しており、減便で変動費の支出を抑制したとしても、手元の資金は3~4ヵ月程度で消失しそうである。
8)純資産は赤字によって更に棄損し、279億円まで落ち込んだ。
9)なお航空機を売却したことで、これまで系列会社から得ていた機材リース収入も大きく減少している。
2. エアアジアXの財務状況の変化(2016~2019);
(黒字化した2016年からの推移)
① 収益性; 2017→2019年で収益性悪化し赤字拡大
売上高横ばいの中で収益性が低下、赤字幅が拡大した。
営業外収支は主に為替差額によるもの。
② キャッシュフローとBS; 収支悪化が手元資金と純資産の減をもたらした。
基本的には、収益性の悪化がほぼそのまま手元資金と純資産の減に繋がった。
2019年に有形固定資産を売却(408→156億円)して228億円のCashを得た。
他方でリース資産(Right of assets)1489億円の取得とともに借入金(Borrowing)が増加(172→1587億円)。 (増えた負債はリース負債の性格を帯びたものと思われる。)
資産売却で増えた資金は、赤字による資金流出の補填やリース資産取得の一部に充当されたと考えられる。
減価償却費はリース資産の当年度償却費、そして借入金返済はリース負債の当年度の減少分にあたると推定する。
以上(Y.A)