2020年5月1日
ANA/JAL 2019年度の決算について
(コロナの影響と今後の資金の展望は?)
この度発表されたANAとJALの連結決算で、両社の業績を比較しました。
はじめに年間決算を簡単に比較。
そしてコロナの影響を被った第4四半期(1~3月)の業績を中心に比較し、今後の資金状況
を展望(試算)しました。
コロナの影響が甚大で、それがいつまで続くかについて、現状では見通せないため、両社ともに次期予想を示せず、期末配当は無配としている。
1. 年度業績の比較
ANAは減収幅より減益幅が大、JALも大幅減益ながら営業利益1000億円が残る。
年明けのコロナの影響で両社ともに減収減益となったが、
・ ANAは減収▲841億円に対し、営業利益はその規模を上回る▲1042億円の悪化、結果的に608億円の営業利益が残った。
・ JALは減収▲761億円がそのまま営業利益減▲756億円に繋がり、
大幅減益ながら、1000億円規模の営業利益が残った。
2. 第4四半期(1~3月)業績の比較
コロナの影響を被った1~3月業績の比較である。
業績悪化幅は両社ほぼ同じ、元々の収益性の差で赤字規模はANAが大。
営業収益は両社2割減 →減収額の約7割が営業利益の減少をもたらした。
営業利益を比較すると;
・ 収益性の低いANAは84→▲589億円(利益率▲15%)となった。
・ それより高いJALは307→▲195億円(利益率▲7%)となった。
もともとの両社の収益性の差が、ほぼ下にスライドした形となっている。
3. 第4四半期(1~3月)の旅客指標の比較
旅客減(国内▲2割、国際▲3割)がそのまま収入減となった。
この時点では減便規模はまだ大規模でなかったため、搭乗率は著しく低下した。
国内、国際ともに搭乗率はJALが3~4ポイント高く、
→ これが両社の収益性の差の一つの要素となっている。
なお国際線の平均旅客距離が大きく伸びているのは、近距離便が大きく影響を受けたため。
4. 財務状況の比較(12月末→3月末の変化)
ANAはCashの減少が激しく(▲1500億円)、期末残は約2400億円
JALは借入増(+356億円)が効いて、期末残は12月並みの約3300億円
キャンセルの払い戻しや、4月以降の予約が少ないことで前受運賃は大幅減少
(参考) 純資産の規模はJALがやや多いが、4/30時点の株価時価総額は
ANAを大きく下回っている。
5. 2020年度の資金繰り展望(試算)
2020年度の資金状況について、あくまでも試算で考え方の一つを例示したものです。
「一つの試算」の結果は下表のとおりですが、ANAの方が状況は厳しそうです。
・ 期首の現預金はANA約2400億円、JAL約3300億円
・ 業務を円滑に回す上での運転資金を、Cash流出費用の1.5か月分と仮置いた。
それを上回る分が「資金余裕」と考えることができる。
・ Cashの基本稼得力は税前利益と減価償却費(お金は出ない)である。
・ 資金の使途として、2020年度の借入金等の返済額はほぼ決まっている。
・ 新たな設備投資への支払いは長期借入金(有利子負債)によることが多い。
・ 資金(運転資金)の不足分は、何らかの手当てが必要となる。
以上(Y.A)