(2020.2.2)
ANA/JAL 2019年度Q1-3の決算について
両社の発表資料をもとに、2019年度Q1-3連結決算を簡単に比較・概観しました。
(末尾処理の関係で両社の発表値とずれているところもあります。)
1. 売上高と利益; ANA増収、JAL横ばい収入
⇒営業利益は両社とも減益で1200億円規模で並ぶ
① 売上高; 国内旅客は両社ともに増収(特にANA)。
国際旅客はANA増収に対し、JALは減収。
ANAのLCC(10月末にPeachがVanillaを統合)は移行に伴うVanillaの規模減があり減収。
貨物郵便は両社減収、特にANAは大型貨物機を導入(B777x2機)
したが大幅減収。
② 営業費用; 供給規模(ASK)はANAが国内線+2%、国際線+6%、
JALは国内+2%、国際は+1%。
両社ともに燃油費が減少(単価減等)の一方で、機材費(新機材増)と
整備費が増加、特にANAの整備費は大幅増。
労務関係費用(人件費、増便に伴う委託費増)も増加。
③ 営業利益; ANAは減益(▲370億円)の1,197億円(利益率7.6%)、
JALも減益(▲253億円)の1,202億円(利益率10.6%)。
④ 当期利益(親会社株主帰属分); ANAは▲204億円減益の864億円、
JALは▲303億円の763億円。
ANAの当期利益が上回っているのは、ANAに特別利益(補償金等)
があり、JALに特別損益(減損処理等)があったことによる。
2.2019年度年間見通し; JALは下方修正、利益レベルは同規模
ANA; 売上高は前年比+317億円の2.09兆円で、営業利益1400億円を見込む。
JAL; 国際線の下降を反映して売上高と利益レベルを下方修正した。
1.49兆円の売上高で、営業利益はANAと同じの1400億円を見込む。
なおANAは前回(上期発表時)に下方修正し、今回はそれで据え置き。
《図表1》 連結損益計算書の概要比較
3. 国内旅客、国際旅客にかかわる指標の比較;
国内、国際ともにANAが規模で圧倒し、今期の増収幅も大きい
LCC収入も加味した旅客収入規模はANAはJALの約1.4倍
① 国内旅客
・ 両社ともに旅客数と収入が+3%、但し規模の関係でANAの増収幅が大。
・ 搭乗率はJALがかなり高く74%、但し機材の大きさ(平均的にANAが大きい)や機内仕様の差(中間クラスの多いJALは席数が少ない)といった事情の影響もあると考えられる。
② 国際旅客
・ ANA増収に対してJALは減収。
・ ANAは長距離の欧米路線やハワイ線が増、短距離の中国線が減少。
・ JALは北米路線で増、ハワイ線で大幅減。
・ 搭乗率は両社とも低下、特にJALの低下幅が大きかったものの、絶対値ではなおANAを大きく上回り、81%となっている。
《図表2》 旅客にかかわる指標の比較
4. 国際線の路線別収入(推定)の比較; ANAはハワイ路線で躍進
(概算推定値であり、厳密な実態とは差がある可能性もあります)
① 路線別の収入と対前年増減幅(推定値)
・ハワイ/グアム路線ではJALが上回っているが、その他は全てANAが上回っている。
・ANAは中国線では減収ながら、他の路線では増収で、特にハワイ絡みの路線は超大型機(A380)就航の効果で大幅増収となっている。
・JALは北米線は大幅増収ながら、他の路線では減収となっており、特にハワイ絡みの路線での減収は大きい。
② 路線別搭乗率(推定値)
・JALの搭乗率は総じてANAを上回っているが、ハワイ絡みの路線ではANAがJALを大きく上回っている。 大幅な供給席数増に旅客数が伴っているようである。
《図表3》 国際線の路線別収入(推定額;億円)の比較
《図表4》 国際線の路線別収入;前年との増減差額(推定額)の比較
《図表5》 国際線の路線別搭乗率(推定値;%)の比較
5. 機材数の比較;
当期に入って両社ともに大型化が進行
・両社ともに中大型機(B787/B777/A350)が増加、小型機(B737/A320)が減少。
中大型機の割合は、ANAが58%、JALも5割を超えた(52)。
・ANAの貨物専用機は当期に新たに導入された2機の大型機(B777F、1機は中型機との入替)を含めて12機となった。
・ANAはこのほかに傘下LCCが約40機の小型機を有している。
《図表6》 機材数の比較
6. 財務状況尾の比較;
両社、社債発行で新たな資金を調達
JALは現預金拠出で退職給付債務を900億円圧縮
ANAの利益剰余金規模はJALに近づきつつある
純資産は同規模、株価時価総額(1/31時点)はANAが大きい
→ANAは純資産の1.1倍、JALは0.87倍
《図表7》 貸借対照表の比較
以上(Y.A)