中長距離路線への躍進著しいLCC Norwegian Air Shuttle(NAS)を概観する(1)

 

中長距離路線への躍進著しいLCC

Norwegian Air ShuttleNAS)を概観する(1

 

2018525

 

 

ノルウエー・エア・シャトル(NAS)は、欧州ではライアンエア、イージージェットに次ぐ3番目の規模のLCCであるが、近距離運航に徹する先行2社とは異なり、近年中長距離路線への躍進著しいことで注目されている。NASも近距離路線が主力であることに変わりはないが、飽和状態に近い近距離から、新たな中長距離路線に活路を求めているといえる。

今回そのNASについて概観※した。1

 ※ NAS社のIR資料(2017Annual Report2018年第一四半期のFinancial Report等)

   のほか、一部はCAPAWikipediaの情報にもとづいている。

 

1.Norwegian Air ShuttleNAS)とBjørn Kjos氏;

NASは、その創立者であり今もCEOであるBjørn Kjos氏を抜きには語れない。

Bjorn Kjos氏は1946年オスロの西北部の都市で生まれ、空軍に入り戦闘機操縦士の訓練を受けた。 SASPilotに不採用になったあと、法律を学んで弁護士・判事となるが、1993年に、破綻したBusy Bee(地域航空会社)を受け継ぎ、Norwegian Air Shuttleを設立した。

当初のNASはターボプロップのF50にて、Braathens SAFE(より規模の大きい会社)の地域路線を受託運航していたが、2002年にSASによるB社併合で受託運航が契約切れとなったのを契機に、B737-300型機を導入して同社をLCCモデルに切り替えた。

2007年にはFinnairからFly Nordic社を買収してスカンジナビアを代表するLCCとなり、2008年には新型のB737-800を導入して急伸長、さらに2013年には中型のB787を導入して長距離運航を開始、その後は急激に中長距離路線を拡大している。

2017年には新鋭B737Maxを導入して、小型機による大西洋線運航も行っている。

CEOBjørn Kjos氏は投資会社を経由して約23%の株を所有、彼の法律事務所仲間で現在NASの会長をしているBjorn Kise氏も約2%を保有している。

 

2.Norwegian Groupの経営形態;

中核となるNASのほか、Norwegian Air International(本社はダブリン)Norwegian Air UK(本社はロンドン)Norwegian Air Norway AS(本社はNASと同じオスロのFornebu3つの系列会社がNASと一体となって運航されている。

 

路線は北欧内や欧州内路線、アフリカ、中東、アジアパシフィック、北米路線がある。

2018年にはアルゼンチンにNorwegian Air Argentinaを立ち上げた(南米~北欧ルートを企図)。

運航の基地は以下の国に23か所が置かれている。

(北欧4か国、UKIrelandSpain、タイ、USA、仏、蘭、伊、仏領カリビアン)

グループ全体の人事とサービス体制はグループ内のNorwegian Air Resources社が一元的に管理している。また航空機の調達などの財務管理のほか、ブランド管理、顧客管理(常顧客優遇プログラム等)、貨物事業もそのための系列会社が行っている。

 

3.Norwegian Groupの機材構成;

LCC事業はB737-300にて開始(一時的にFly Nrodicから引き継いだMD80を保有)したが、

2017年末現在はB737-800を主力とし、世界に先駆けて導入したB737MAX(大西洋線等で使用)B787(長距離路線用)を使用している。

また2018以降は大量のB737MAXはじめ、B787-9A320neoA321LRを導入予定である。

2017年末》 B737-800117機(186席または189席)、B737MAX6機(189席)、

            B78721機(32プレミアム席+259EY席)

2018年以降の確定発注》 B737MAX104機、B787-915機(35プレミアム席+EY309席)、A320neo65機、 A321LR30

 

   《図1》 NASグループの機材数の推移 

   《図2》 NASグループの近距離路線

        北欧はじめ、欧州内や北アフリカ、カナリヤ諸島の地点間を結ぶ路線を運航している。

  

   《図3》 NASグループの中長距離路線(2018年)

        北欧やUK、スペイン等欧州内の地点と、北米、中東、東南アジアを結ぶ路線

 

        を運航している。

   

 

 

  《図4》 収入の国別割合;全4197億円

       半分は北欧での収入であるが、

       欧州他国や米国等からの収入も

 

       多い。


   

 

   《図5》 従業員7845人の国別割合

   (含請負 Pilot 北欧で40%、UKと

   スペインで44%、米国で8%。


 

 (2に続く)