欧州で躍進中の第3のLCC、Norwegianについて
2017年2月26日
近年、欧州でノルウエーに本部を置くLCCのNorwegianが急激に伸びている。
その会社について、LCCのトップ2であるRyanairやeasyJet、そして同じような地域で
競合しているSAS(スカンジナヴィア航空)と比較しながら概観した。
(注)数値は2016年度の各社公表資料による。但し会計期間の差がある。
運賃比較はネット販売会社(cheapoair.com)の数値による。
1. Norwegianの特徴;
先行LCCであるRyanairやeasyJetが単一の小型機(A320やB737型)によって、もっぱら欧州内の路線を事業領域にしているのに対し、Norwegianは小型機による欧州内運航から、新鋭中型機であるB787によって大西洋線等長距離路線に進出、その規模を急拡大している。
財務面では、急拡大は借入金(有利子負債)に依存しているため負債比率が高い。
2.Norwegianの運賃例
① 大西洋線では、既存のFSA(フルサービス会社)に比べて格段に安い運賃を提供している。
下表はNorwegianが運航している主要2路線のほぼ1か月先の最安運賃について比較したものである。($→113円で換算)
② 欧州内路線でも安めの運賃を提供しているものの、先行のLCCがあるため、割安感
はさほどではなく、Ryanairに比べると高めとなっている。(同上で円換算)
《参考1》 Norwegianの就航路線
欧州域内線; OSL、STO、CPHのほか、ロンドン、スペインをベースに小型機(B737-800;186席)で運航。
大西洋線等; 欧州各ベースから米国等にB787(291or344席)で運航。
3. Norwegianの急躍進
① 下図は過去12年間の供給規模(座席㌔)の推移を、欧州域内路線(小型機による)と、長距離路線(中型のB787による)をみたものである。
最近3か年で長距離路線が急拡大しているのがわかる。
搭乗率は欧州域内線は80%前後で、長距離路線は90%レベルで推移している。
(棒グラフは座席㌔、折線グラフは搭乗率;右目盛)
② 下図は過去14年間と、今後2年間(予定)の機材の推移をみたものである。
長距離路線の拡大を企図して、より活発にB787が導入されることになっている。
③ 下図は過去12年間の営業収益と当期純利益の推移をみたものである。
収益は一直線に伸びているが、利益はややばらつきも見られる。
2016年度の高利益は燃油単価下落の恩恵も受けている。
(NOK→13.5円で換算)
4. 他社との比較
① 下表は事業地域に重なりがあるSASや、主要LCC2社(Ryanair、easyJet)と経営数値を比較したものである。
SASとの比較では、規模は類似しているが、収入単価や座席コスト、高B/E&高搭乗率という点でLCCの特性がみえる。平均旅客距離は、長距離路線の影響でNorwegianが長い。
LCC2社との対比では、規模、利益率、搭乗率でいずれも下回っているが、6%という利益率は決して低いものではない。
② 下表はNorwegianの財務状況を、SASと比較しつつ見たものである。
航空機(含前払金)の資産規模が大きく、その原資としての借入金(有利子負債)が多いことがわかる。
《参考2》 SASの就航路線
5. Norwegian及び長距離LCCの展望
Norwegianの数値も踏まえて業界を俯瞰すると以下のことが言えよう。
① 欧米では、LCCへの適合性が高い短距離路線が、LCCの飽和状態に近づいていることに加えて、コスト効率よく航続距離のより長い新鋭中大型機(B787)の登場により、今後LCCは長距離路線へと事業領域が拡大する。 これはこれまで垣根が高かった長距離路線にもLCCへの道が広く開かれたということであり、低運賃をめぐって既存FSAとの競争は全面化することになる。最近米国では自由化に逆行する兆候も見受けられるが、大きな流れは止められず、アジアなど全世界に拡大していくであろう。
(注)これまで中長距離LCC向けの機材といえば、エアアジアXに見られるように専らA330であったが、最近はより航続距離の長いB787が伸長してきている(例えばスクート)。
② その中でNorwegianは、堅実な欧州内LCCとしての基盤の上に、長距離LCCとしての先行優位性を目指している。 反面その急激な拡大は財務的負担というリスクも伴う。
今後、燃油高騰があった場合や、後発会社との競争激化をどう切り抜け、どう発展していくか注目していきたい。
以上(Y.A)