日本のLCC3社;業容と業績概観
2016年9月3日
日本のLCC3社(Peach、Jetstar-J、Vanilla)について、その業容と業績を概観した。
各社および国交省が発表した2015年度資料※による(それを加工した試算値を含む)。
※Jetstar-Jは6月決算、他の2社は3月決算、国交省資料は2015年度。
1.2015年度業績の比較
1)好業績のPeach;479億円の収入で62億円の営業利益(利益率13%)。
3年連続黒字で留保利益は20億円、流動資産多く手元資金も潤沢と考えられる。
2)規模最大のJetstar-J;収入522億円、初めて黒字計上(営業利益率2%)。
但し約300億円の累損が残る。
3)業績好転のVanilla;収入はPeach、Jetstar-Jの半分以下だが初めて黒字計上。
113億円の累損はあるが、営業利益率は7%と業績は上向き。
4)LCC3社の合計収入に占める各社のシェアは、Peach:39%、Jetstar-J:43%、Vanilla:18%。
Peachの収入を100とした指数では、Jetstar-Jは109、Vanillaは46。
2.事業構造の比較
①事業規模;便数規模でJetstar-Jが最も大きくPeachの1.2倍。
3LCCの合計座席㌔に占めるシェアは、Peach;37%、Jetstar-J;41%、Vanilla;22%。
②各社の事業構造(旅客㌔=RPKにもとづく際内割合);
Peach;国内/国際バランス型で、その割合は6:4。
Jetstar-J;国内線中心で9割以上が国内線。但し現在国際線展開を加速中。
Vanilla;国際線の比重が大きく、内際割合は4:6。
各社の特徴は平均距離に表われ、Jetstar-Jは約1000km、Vanillaは1700km。
②国内線の規模比較(旅客㌔=RPKによる);
Jetstar-Jが圧倒的に多く(Peachの約1.8倍)、56%のシェアを占める。
Peachのシェアは32%、Vanillaは12%。
平均距離は関西基点のPeachが短く、成田発長距離便中心のVanillaが長い。
3.発着ベースの指標比較;発着当りの単価、収益性の比較
①国際線等路線距離の長いVanillaは旅客単価(12,900円)、座席コスト(10,300円)ともに高く、採算ライン(B/E)は80%、それを搭乗率(85%)が5ポイント上回って利益を計上。
1便当り収入も198万円と多く、利益は14万円。
②路線距離の短かいJetstar-Jは旅客単価が最も低い(10,000円)が、座席コストはPeachより高く(8,100円)、B/Eは81%。但し搭乗率(83%)がそれを上回って利益を計上。
1便当り収入は150万円と最も少なく、利益は4万円。
③Peachは旅客単価(10,500円)がJetstar-Jを上回り、座席コスト(8,000円)は最も低く、B/Eは76%。 搭乗率は87%とB/Eを大きく上回っていることで大巾利益を計上。
1便当り収入は164万円で、利益は21万円。
4.距離ベースの指標比較;1000km当りの単価、収益性比較
①路線距離が伸びるに伴って、距離当たりでみる座席コストは低減するため、Vanillaの座席コストは6,000円/千㌔と最も低コスト、収入もこれに連動して7,500円/千㌔と低単価。
②概してコスト高の国内線中心のJetstar-Jは、収入単価が高い(9,900円/千㌔)が、コストも8,000円/千㌔と、Peachを大きく上回っている。
③Peachは、Jetstar-Jを大幅に下回る座席コスト(7,400円/千㌔)で、ほぼJetstar-J
並みの収入単価(9,800円/千㌔)を得ることで、採算ライン(B/E)を低めに抑えており、高い搭乗率とも相まって高い利益率を達成している。
(さいごに)
・Peachは、採算ライン(B/E)を低くコントロールするとともに、極めて高い搭乗
率を維持しており、今後とも好業績が期待される。
・Vanillaは、採算ライン(B/E)はやや高いものの、それをかなり上回る搭乗率を
実現して、今後の収益性の維持向上が期待される。
・Jetstar-Jは、採算ライン(B/E)が高いために「収益性の安定」には、現時点ではなお一抹の不安もある。安定利益計上(⇒累損の解消)のためには、採算ラインの引き下げと、搭乗率の一層の向上が望まれよう。
以上