2023.2.20.
世界のLCC中、米国のSouthwestに次ぐ規模で、超過密座席で
超低価格を売り物とする欧州随一のLCCであるRyanairは、4~12
月の決算でコロナ前を凌ぐ利益を計上した。
(写真はWikipedeiaより)
1.収支;
・ コロナの影響で2年間赤字が続いたが、2022年度に入って急回復、コロナ前の1.2倍の
売上げで16.7億ユーロの営業利益を計上した。
利益率にして実に19%という高さである。
・ アイルランドの低い税率の恩恵も受け、純利益は14.7億ユーロであった。
2.輸送実績と収益性指標
・ 供給座席はコロナ前(2019年)を12%上回り、旅客数は10%上回る1.22億人、
この結果搭乗率は▲2ポイント下回ったものの、94%という高搭乗率であった。
・ 燃油高騰のため座席コストは上昇したが、旅客単価はそれを上回って上昇、
これにより採算ライン(B/E)も2ポイント改善した。
・ この結果コロナ前と同レベルの19%という驚異的な営業利益率となった。
3.Ryanairの超低コストの実態
・ コスト内訳;
燃油費が44%を占め、機材費・運航施設利用費・整備費をあわせた運航費用でコストの2/3を占める。
これに空港費(ハンドリング料等)、人件費(大半が乗員分)を加えると計9割。
間接的費用がいかに少ないかがわかる。
・ 円換算(€=140円)した座席コスト(発着席当り)は7159円である。
路線距離が日本の国内線の1.2倍強であることを加味すると
一層Ryanairの安さがわかる。
・ 安さの要因は2つ、即ち極端なコストカットと超過密な座席仕様である。
主要機種であるB737-800の座席数は189席である。
これを同型のJAL/ANAと比べると20席以上多く、SKY/ソラシド比でも
12~15席多い。
但しSpring-JapanはRyanと同仕様であるが。
(写真はWikipwdiaより)
4.Ryanairの事業規模
・ Ryanairは欧州内の中小会社を呑み込みつつ、かつ再編しながら拡大を続けている。
近年は、機材をRyanから姉妹会社であるMarta AirやBuzz等に移管している。
・ 主に欧州域内の短距離路線を事業領域とし(平均距離1240km)、乗入空港は200強、毎日2200便強を運航し、機材の平均稼働時間は9.1時間である。
・ 従業員は19千人であるが、その約6割がPilot、
Cabin Crewが3割で、地上職は1割にすぎない。
しかもその半分は整備と運航管理である。
管理部門と管理職(全)で5%である。
各空港のハンドリングは委託による。
5.財務状況
・ 現在40.7億ユーロの手元資金を有し、借入金は48億ユーロである。
・ コロナ影響による損失で利益剰余金は7億ユーロ棄損したが増資で補い、純資産は
コロナ前を回復した。
・ 自己資本比率は40%、借入金依存度は30%、手元資金は売上の4か月分程度
→ 体質としては良い方である。
以上(赤井奉久/橋本安男)