シンガポールの再開、シンガポール航空の回復軌道を一歩進める

当分析はCAPAが2022年4月11日に発表した

 

Singapore reopening has stepped up Singapore Airlines' recovery trajectory

 

 

JAMRが全文翻訳したものです。

2022年4月24日  

シンガポールの再開、シンガポール航空の回復軌道を一歩進める

11-Apr-2022

 

シンガポール航空(SIA)は、政府が国際線旅行に国境を開放した後、路線網の復旧を加速させて居る。同エアラインは、政府の最近の動きの前でさえ、既に長期の成長軌道に乗って居たが、これは、旅客席供給量に特筆すべき急上昇をもたらした。

 

シンガポールは、ずっと、他国との航空の繋がりを再構築する先導者であった。同国は、この数か月間に、二国間航空回廊のシステムを立ち上げて来たが、2022年4月1日から、更に広範な再開により、取って代わられた。その他の多くのアジア太平洋の各国政府は、国際線の規制を2022年4月から緩和しようとして居る、或は最近数か月の間に緩和して来て居る。

 

これらの段階も、路線と交通量を再建しようとするSIAにとって援けになって居る。完全な回復は、まだ先の話だが、SIAはこの点で、アジア太平洋地区のどのライバル達に比べても、多分、先行して居る。供給量の増は、同様に、パンデミック前の水準に近づく、保有機群の活発な動きになって居る。

 

繰り返すが、シンガポールは、今の段階で、エアラインの復旧の軌道に、政府の政策の設定が、如何に重要な要素であるかの明白な例を提示して居る。大きな懸念事項は、供給が需要に比べ、遥かに早い速度で回復して居ることであるが、これは、国際線の需要が、実際に、より強力に戻って来た場合、SIAを依然として良い立場に置く事になるだろう。 

 概要 Summary:

  • シンガポールは、2022年4月1日、全てのワクチン接種済みの旅行客に対し国境を再開した。
  • シンガポール航空(SIA)は、再開にあわせ、出発便を大きく増やした。
  • SIAグループの供給は今やパンデミック前の水準の56%に上昇した。
  • SIAの就航中の保有機群の率も2年来、最高の水準である。

VTLが重要な過渡期の役割を担うが、より広範な変化が需要と供給の増大の基盤を築いた

 

2022年3月、シンガポール政府は、全てのワクチン接種済み旅行者が検疫無しでシンガポールに入国する事を認めると述べた。出発前の検査は、依然必要であるが、到着時の検査は不要である。到着地国の入国必要事項が満たされて居る限り、シンガポール/チャンギのハブ経由で他の地点へのトランジットも許される。

 

この一歩で、シンガポールの広範な「*ワクチン接種済旅行レーン(VTL)」システムが、不要になったことを意味し、その目的を見事に果たした後、名誉の引退を遂げた。

 

* VTL:vaccinated travel lane

 

シンガポールは、2021年9月以来、幾つかの重要な市場と旅行を再開させる二国間VTLを、30か国以上との間に成立させて居た。シンガポール民間航空局によれば、60万人近くの旅行者がVTLプログラムの下、シンガポールに入国して居る。

 

新システムは「ワクチン接種済旅行枠組み」(Vaccinated Travel Framework)として知られて居る。現時点では、既にその様なステータスの国は無いが、政府は、制限付きの範疇と位置付けた国々からの旅行者を排除する選択肢を設けて来た。

 

SIAの堅実な供給拡大は、国境再開と時を同じくして鋭く上昇する

 

SIAは新たな枠組みに対し、供給を増強する事で応えて居る。

 

システムの変更された2022年3月28日の週、同グループの週間出発便数は、特に鋭く上昇した。2022年4月4日の週までに、SIAグループは、3週間前に比べ、週間出発便数を405便増やした。また、2022年4月4日の週に、グループは2年以上も前の2020年3月16日以来、初めて週間2,000出発便以上を運航した事も、特筆すべきである。

 

これら、最新の追加は、SIAグループの週間出発便数をパンデミック前の54.5%へと上昇させ、言うまでも無く、殆どどのアジア太平洋のエアラインよりも、遥かに高い水準の国際線の回復である。

 

シンガポール航空グループ:週間出発便数、2019年~2022年(現時点まで) 

Source: CAPA and OAG. 

 

週間供給席数については、2022年4月4日の週、SIAグループは対2019年水準で56%に達して居る。グループのメンバーの中では、核となるシンガポール航空の方が、LCCスクートより増加が大きかった。

 

然し、今年これまでの供給と便数の増加は、需要の拡大を超えて居る。

2022年2月にはグループの旅客総数は、2019年同月の19.5%に過ぎなかった。

 

シンガポール航空グループ:月間旅客数、2019年~2022年 

Source: CAPA and SIA Group reports.

 

また、シンガポール全体での国際線供給の回復は、フラッグキャリアーのそれ程、迅速では無い事も注意に値する。

 

2022年4月4日の週、シンガポールの国際線供給はパンデミック前水準の40.1%だった。これは、海外に本拠を置くエアラインが、シンガポール路線の再構築をSIAほど急速にはして居ない事を示して居る。

 

追加便は、ある路線では便数を増強し、一方他の路線では復便されて居る

 

それでは、追加されたSIAの出発便は何処へ行くのだろう?

 

同社の既存の路線の幾つか、豪州のシドニー、メルボルンそしてパース、またロンドンと他の欧州目的地などに増便されて居る。便は他にも、特定の東南アジア市場へも追加されて居る。

 

これらの追加とともに、SIAは、パンデミックで休止された路線を再開して居る。

 

例を挙げると、米国のニューアーク、豪州のケアンズとダーウイン、ベトナムのダナン、フィリピンのセブ、そしてマレーシアのペナンなどである。

 

SIAは着実にその保有機群をパンデミック前の水準に近づけて居る

 

SIAの着実な路線網拡大は、同エアラインに、より多くの航空機を空に戻させて居る。

 

SIAの親会社は現在121機の航空機を就役させ、14機が非稼働である。然し、パンデミックが始まって以来、SIAはまた、現在は撤退した以前の子会社シルクエアが運航して居た、何機かの狭胴機を吸収して居る。

 

シンガポール航空の保有機群、就役中対非稼働、2020年1月~2022年(現在まで)

Source: CAPA fleet database.

 

一方スクートは、2022年4月7日までに、保有機群の内40機を就役させて居り、19機が非稼働である。 

これに比べ、パンデミック前の保有機群は49機だった。これも以前にシルクエアで運航されて居た狭胴機の数機を追加したため、同社は現在、より合計機数が増えて居る(就役中+非稼働)。

 

スクートの保有機群、就役中と非稼働、2020年1月~2022年(現在まで) 

Source: CAPA fleet database.

 

 

供給の拡大が需要を上回るー然しこれは多分回復の現時点では悪いことでは無い。

 

この段階でSIAは、需要が追いつけない速さで、便を足し戻して居る。これは、これら路線の収支に影響するが、SIAはカンタスなどと同様に、明らかに航空機は地上に留め置くより、空を飛ばして置く方が良いと決心して居る。

 

再拡大への積極的な取り組みはSIAにとって良い動きである。短期的には痛みを伴うかも知れないが、同社は広範な路線網を比較的急速に再確立出来るだろう。

 

ハブから多くのスポークが有ることが、大きく乗り継ぎ旅客に依存するSIAの様なエアラインには極めて大切である。そして、路線網と保有機群を立ち上げる事は、また国際線需要の回復が加速した時には、その準備ができて居る事を意味する。これは、より多くの国々が旅行制限を緩和し、旅客の自信が戻るに連れ、2022年の残りの期間中に起こる筈だ。

 

他のエアラインは、国際線路線の復活には、より慎重にならねばならない。然しSIAにはかなりの柔軟性を与えてくれる、確固たる資金的な基盤がある。

 

国境を再開すると言う点で、最も先進的な政府からの支援があるのも、また大きな助けになる。シンガポール政府は、国家の経済的発展にエアラインが重要である事を、以前からずっと認識して居る。 

以上