当分析はCAPAが2021年7月29日に発表した
Air travel: vaccinations and confidence the key to recovery
JAMRが全文翻訳したものです。
2021年8月11日
29-Jul-2021
取り分け、パンデミックからの回復に於いては、信頼が全てである。信頼が回復して居るところ、航空旅行の予約も同様であり、その様な信頼感は、a)有効なワクチン接種が展開されて居る所、b)旅行への制限が低い(事が予知可能な)所、という組合せが有る地域に、強く関連して居る。
米国の国内線市場は、その様な地域の一つである。米国の航空旅客の数は、先月、重要な1日200万人の閾値を超え、2021年5月以来、ずっと強い勢いを保ち、現在は2019年水準の20%減である。
然し、上向き傾向にはあるものの、多くの場合、実収単価は、2019年水準に比べ、可成り低い。2021年9月に、米国の伝統的なビジネス旅行シーズンがやって来れば、主要な指標となるだろう。
概要 Summary
· 旅行に対する旅客の信頼感は、ワクチン接種の進展とともに戻りつつある
· 回復は2019年水準に対し旅客数が20%減少した米国国内線で特に顕著である
· 同様に、国境を開放しようとする政府の意欲は、ワクチン接種の全国水準に密接に関係して居る
米国の国内線旅行回復が先導して居る
ビジネス旅行は遥かに鈍いが、米国の国内線レジャー旅行は、明らかな回復の軌道に乗って居る。この市場の試金石となるのは、ひとたび夏休みが終わり、人々がオフィスでの仕事に戻ったら、いつ、ビジネス旅行が本格的に再始動するかである。
米国の毎日の旅客数:7日間の変動平均、2019年対2020/21年
Source: USA Transport Security Administration daily checkpoint data
そして、COVID-19の観点から見ると、夏場全期間の展望はかなり良好である。*IHMEの最近の米国COVID-19の予測では、次の四半期を通じて死亡率の鈍化が見られる(最悪の場合のシナリオは、更に6万人の死亡を予測して居るが)。
*IHME:Institute for Health Metrics and Evaluation(保健指標評価研究所)
季節的な冬場の波の襲来は避け難く起こるだろうし、疑問は、昨年対比でどのくらい悪いのかである。希望的には、広範に広がるワクチン接種は死亡率を比較的低く維持し、米国人は最近の行動パターンを継続できるだろう。
IHMEによる COVID-19の見通し 2021年11月まで
Source: IHME
回復が進む中で、依然、実収単価の低さは課題
広範な種類の情報源から予約状況を集約して居る、エアバスの子会社スカイトラに拠れば、米国国内線が支配する北米域内のエコノミークラスの実収単価は、涙の出るほど低くなって居る。
2021年第2四半期の実収単価は、エアライン各社の需要刺激のための低実収単価戦略を反映して、パンデミック前(2019年第2四半期)水準から驚愕の32%も下がって居る。
低い単価水準は、今年の第三四半期(▲17%)そして第4四半期(▲14%)の航空便に於いて明らかで、そしてワクチン接種プログラムの進捗と相まって、予約が上昇する中で、前向きの見通しを齎す模様だ。
これが、予測されて居る強力な収入の回復トレンドに導く:スカイトラに拠れば、第3四半期▲37%、そして第4四半期▲15%とパンデミック前水準と比較して、何か「北米エアライン各社をホッとさせる」ものだろう。
スカイトラ、地区別エアライン実収単価、2019年対2020年
Source: Skytra
今年の北大西洋の夏のシーズンは失われた
非常に価値の高い北大西洋の市場、米国から欧州そしてカナダから欧州、を再開するため、現在、熱心な試みがなされて居る。然し、バイデン大統領は、欧州での感染者数が危険な高さにある間は、欧州への国境の開放の要請を却下して居る。
当面は、大西洋はエアラインにとって苦しみの世界である。旅行が可能な地点では、殆どが米国からの出国であるが、欧州=北米間市場のエコノミー実収単価は、通常満杯の第3四半期に、パンデミック前の水準を22%下回って居る。
ワクチン接種水準は、これらの地区では世界の他の地域に比べ高く、従って、遥かにより効率的な再開が考えられて良い筈である。以遠地点への送客、第6の自由交通量など欧州のハブ・エアラインが依存して居る需要は、以前に比べ多く存在せず、ネットワーク・エアラインの運航経済性は損なわれるものの、北大西洋は、多分、他の大規模国際線市場より早く再開するだろう。
北大西洋市場の回復は、より高い水準の狭胴機による地点間運航を阻む事になるだろう
この苦しみに加わりそうなのが、新たな参入者であるとともに、また新たな保有機群と低コストを擁するエアラインによる、増え続ける北大西洋越えの狭胴機による地点間運航である。
スカイトラに拠れば、欧州=北米間エコノミークラス実収単価は、2022年第4四半期にはパンデミック前の14%低下へと改善する筈である。
欧州内とアジアの実収単価は、市場が再開放される中で複雑なままだろう
欧州域内では、エアライン各社が需要を喚起するために実収単価を下げようとする努力は、未ださほどの影響力を持たず、時代は依然として難しい状況のままである。
ワクチン接種の進展が、最近はより急速になり、また EUのディジタルCOVID証明書(「グリーンパス」)にも助けられるだろうが、入国に関わる必要事項の規則変更が、最後の四半期まで予約行動を抑制する事になるだろう。
過去数週間にわたり、僅かながら夏場の旅行への予約の上昇が見られ(第3四半期)、夏場の収入の僅かな改善へと導いて居る:第2四半期▲77%、第3四半期▲57%、そして第4四半期▲65%である。
第4四半期の見通しは、欧州では実収単価がパンデミック前水準に比べ、12%の低減と見込まれ、依然抑制的である。
スカイトラに依る地区別四半期ごとの実収単価予測
Source: Skytra
アジア太平洋の制限付き再開が、まちまちな実収単価を招く
欧州よりずっと大きく、そして遥かに多様な地区であるアジア太平洋の域内では、スカイトラはエアライン各社が「パンデミック前の水準に比べ第3四半期で+14%、第4四半期+31%と言う高単価戦略」を追求するのを見出して居る。
然し、中国の国内線市場のいくつかの例外を除き、この地域全体を通じ、予約は依然低調である。エアライン各社はアジア内の貨物の需要で生命を維持して居て、国境の制限のお陰で、極めて限られた、需要水準を遥かに下回る、旅客供給量が高い価格設定となり、就航中の航空便の営業収入に貢献して居る。アジアはまた、シンガポール、中国そして日本が先行する、ワクチン接種の進展でも、極めて多様な地区である。
西洋諸国が遥かに広範なワクチン接種を展開
COVID-19ワクチン接種を少なくとも1回受けた人口の割合
Source: Official data collated by Our World in Data
(ワクチン接種を少なくとも1回受けた合計人数の総人口に対する割合。ワクチンが2回接種型の場合、これは接種完了者の割合と一致しない可能性あり。このデータは1回目と2回目の接種の内訳を報告して居る国に限られる。)
アジアでは、概して、ワクチン接種率が低いため、多分、現在模索されて居る、2カ国間バブルの様なものを通じて以外には、より広範に便を運航するのがずっと遅くなるだろう。「予約は最後のギリギリまでしない旅行性向と相まって、予約は未だに低調である」ーそして見通せる将来にわたって、それが続く可能性が高い。
信頼感の要素を浸透させるにはワクチン接種が鍵である
流石のCOVID-19デルタ株の飽く事なき貪欲さにも拘らず、ワクチン接種率がより高い、米国と欧州諸国の人々の行動から、信頼感の水準との強い関連性が存在するのは明らかである。
これは各国政府の国境を開放する(入国、出国、両方向の)意欲に、そして旅行者のまた飛行機に乗ろうと言う意欲に当て嵌められる。
にも拘らず、未だ行く手には長い道のりがあることは明らかである。アジア太平洋のほぼ閉鎖された各市場は例外として、平均実収単価は2019年水準を大きく下回って居る。
同様の現象が欧州の大規模なLCC各社にも言えるが、これはある意味では、単価が高目のビジネス旅客需要を持たない事によるのかも知れない。2021年9月に米国のビジネス需要が本格的に再開した時には、重要な今後の方向性の指標となるだろう。
以上