世界の航空業界:前世紀に逆戻り

当分析はCAPAが2021年2月16日に発表した

 

World aviation: back to the last century

をJAMRが全文翻訳したものです。

 

2021年2月21日

世界の航空業界:前世紀に逆戻り

16-Feb-2021

最早、COVID-19パンデミックが、大々的に、そしてどんどん悪化する衝撃を世界の航空業界に与えて居ることを報じるのは、ニュースとは言えない。それでも、2020年の業界の規模について種々の指標を検証すると、歴史的な背景を見せてくれる。それが示して居るのは、この成長産業が、どの程度遠くまで後戻りさせられて居るのかだ。

 

 

CAPAの保有機群データベースに依れば、世界中のエアラインで2020年末に就航中のジェット旅客機の数は2008年の水準に逆戻りして居る。

 

然し、この12年間の後退は、輸送量に比べればずっと小さなものである。昨年2020年に、旅客数は2003年水準に後退し、一方RPKは1999年の物量に戻って居る。旅客の搭乗率は、1980年代と1990年代初期以来見られない水準に停滞して居る。

 

航空貨物の物量は、失ったのは5年間の拡大だけで、それ程ひどい影響は受けて居ない。

2021年始めは、未だ如何なる改善も見当たらないが、航空業界の歴史的な成長の過去の実績(track record)は、経済成長に於けるその役割と、世界とその人々を結びつける事の上に築かれたのだった。ワクチン接種プログラムがスタートし、これらの要素が、航空業界は成長を取り戻せると言う楽観主義に名目を与える事になる。

 

概要

      2020年末、世界で就航中のジェット旅客機保有機数は2008年の水準に逆戻り。

      2020年旅客数は2003年水準、そしてRPKは1999年の数値に後退。

      旅客搭乗率は1980年代/1990年代水準に低下し、航空機稼働率も停滞して居る。

      航空貨物物量は下降し2015年の物量まで戻り、2020年の貨物搭載率は上昇した。

 

2020年末、就航中のジェット旅客機保有機数は2008年水準に逆戻り

CAPA保有機群データベースに依れば、就航中のジェット旅客機保有機数は、2020年末で16,700機を少し下回った。

 

これは2019年末の23,600機に比べ29%の減少で、世界が金融危機に見舞われた2008年末に就航中だった数値に逆戻りして居る。

 

2020年末に就航中のジェット旅客機の数は、パンデミック中の最低時点に比べ、可なり高くなって居る。2020年4月の末に、その数値は1996年末に並ぶ9,600機を少し越えるものだった。

 

2020年を通して各月末の平均値では、凡そ15,900機で、対前年33%減、過去2006年末に最後に記録された数値を僅かに越える程度である。

 

全ジェット旅客機中の就航中機数の割合は2019年末の88.1%から、この年を61.9%で終える前、2020年4月末には35.8%へと下落して居る。 

 

世界で就航中のジェット旅客機*:2000年~2020年**

*広胴機、狭胴機及びリージョナル・ジェット旅客機

**年末現在

Source: CAPA Fleet Database.

 

2020年の旅客数は2003年水準に逆戻り

 

2020年末の就航中ジェット旅客機数は、12年間の成長を拭い去ってしまった(2020年通年平均では14年間)が、2020年中に飛んだ定期旅客便数は17年間の成長を消してしまった。

 

ICAOに依れば、2020年、旅客数は60%も暴落し、遥か昔の2003年に世界中のエアラインが輸送した数値、18億人になって居る。

 

世界の定期便旅客数(百万人):1970年~2020年

成長率の歴史 CAGR(年平均成長率compound average growth rate) 

1970年~2019年:5.2%/年

2000年~2019年:5.0%/年

2010年~2019年:6.1%/年

 

Source: CAPA - Centre for Aviation, ICAO, IATA.

RPKーまるで1999年の様だ

 

2020年の有償旅客キロメートル(RPK)水準としては、更に遠く1999年へ21年間遡る必要がある。

IATAに依れば、2020年の世界のRPKは2019年に比べ66%低く、20世紀最後の年に記録した物量まで遡らねばならない。

 

RPKの落ち込みは、COVID-19パンデミックの所為で長距離路線の輸送量が殊更に打撃を受けたため、旅客数の下落より大きい。 

 

世界の定期有償旅客キロメートル(RPK、百万):1970年~2020年

成長率の歴史 CAGR(年平均成長率compound average growth rate)

1970年~2019年:6.2%/年

2000年~2019年:5.4%/年

2010年~2019年:6.7%/年

マイナス成長は過去に3年のみ

Source: CAPA - Centre for Aviation, ICAO, IATA.

 

旅客搭乗率は1980年代/1990年代水準に低下

 

2020年に就航中のジェット旅客機の機数に比べ、旅客輸送量の実績がより低調なのは、供給の稼働率に大きな崩落があった事を反映して居る。

 

2020年には旅客搭乗率は、長期に亘った改善傾向を反転させ、そしてエアライン業界を1993年水準まで27年間も引き戻し、(大まかに1980年代大半の搭乗率に並ぶ)64.8%まで17.8ポイント落ちて居る。 

 

世界の旅客搭乗率(%):1970年~2020年

Source: CAPA - Centre for Aviation, ICAO, IATA.

航空機の稼働率も低迷した

この搭乗率が大きく下落した事でも、就航中のジェット旅客機数(33%低下)とRPK(66%低下)の低下との差異についての充分な説明になって居ない。

現時点ではそれを解き明かすデータが無いけれども、この差異はもう一つの大きな下降を指し示して居る:即ち、日毎の就航中の航空機の稼働率である。

退役させる事、或は可能性として現役復帰させる事に掛かるコストを避け、来たるべき需要の回復時に対応する柔軟性を維持するため、多くの航空機は就航し続けて居たが、たまにしか飛んで居なかった。

航空貨物物量は2015年水準まで落ちる。。。

 

この分析は、エアラインの旅客輸送事業へのCOVID-19の前代未聞の規模の衝撃を強調して居る。即ち、業界を就航中のジェット旅客機数では2008年に、輸送旅客数では2003年まで、RPKでは1999年まで、そして旅客搭乗率では1993年へとそれぞれ引き戻して居る。

 

パンデミックの間中、世界のエアラインにとって、一つだけ比較的に輝いて居る地点は貨物の業績である。

 

IATAに依れば、2020年に貨物トンキロ(CTK)は10.6%落ちた。これは以前の平常の基準からすれば、それでも大きな落ち込みであるが、旅客輸送量に比べれば、かなり小さなものである。CTK水準は2015年に引き戻されて居るが、これにより失われたのは、5年間の成長分だけだった。

 

。。。そして貨物搭載率が上昇

 

更には、貨物供給が貨物需要より大きく落ちたため、貨物搭載率は54.5%へと7.7ポイント上昇し、強固な改善を達成した。旅客供給、特に広胴機による供給の減少は、旅客機のベリースペース(貨物室)の供給量を大きく減じる事になった。

 

貨物搭載率が50%を越えるのは、稀な事である。2020年以前には、2010年に生じたのが最後である。 

 

世界の貨物トンキロメートル(CTK、百万):1970年~2020年

成長率の歴史 CAGR(年平均成長率compound average growth rate)

1970年~2019年:5.7%/年

2000年~2019年:2.9%/年

2010年~2019年:3.7%/年

Source: CAPA - Centre for Aviation, ICAO, IATA.

 

世界の航空業界は成長を取り戻すだろうー21世紀の成長分を全て失った後に

 

エアラインの旅客輸送量で、最も一般的に使われる指標であるRPKで見ると、COVID-19危機は、21世紀に達成した輸送量の成長分を全て拭い去ってしまった。これはRPKの66%下落、過去にはとても想像の出来ない単一年での減により、現実のものとなった。

 

確かに、COVID前には、どんな種類でも、RPKのマイナスの動きはごく稀な事であった。2020年以前に、世界のRPKが年間で減少を経験したのは、歴史上たった3回である(1929年まで遡った、ICAOデータに基づく)。

 

それは、世界の景気後退があった1991年の2.6%下降、9/11同時多発テロ事件のあった2001年の2.9%下落、そして世界金融危機の期間、2009年の1.0%下落である。

パンデミックの衝撃は、これらの過去の危機をまるで小人の様に見せ、そしてエアライン業界をまだまだ続く変化へと導くだろう。

 

にも拘わらず、航空業界にとって何十年も続いた歴史的に長い期間の成長と、年間での旅客数の下落が極めて稀だった事は、将来に向けてある種の自信を与えてくれる。

 

未来の航空交通の成長は、過去の歴史的な成長率に匹敵するものではないかも知れないし、世界がCOVID-19と共生する事に順応する間、それは流動的なものかも知れないが、航空業界は成長を取り戻すだろう。

 

以上