オミクロンの脅威、アジア太平洋でのバラバラなパンデミック対応を   浮き彫りに

当分析はCAPAが2021年12月4日に発表した

Omicron threat highlights divergent pandemic responses in Asia-Pacific

 

JAMRが全文翻訳したものです。

2021年12月6日 

オミクロンの脅威、アジア太平洋でのバラバラなパンデミック対応を浮き彫りに

04-Dec-2021

 

COVID-19オミクロン株の出現で、多くのアジア太平洋諸国が国境の規制の調整に動いて居り、若し彼らが、向こう何週間も更にこの方向に進む事になれば、エアラインと旅行業界の回復への明るい兆候は脱線転覆の可能性がある。

オミクロンの波は、各国が、国によっては州ごとにさえ、或は州と中央政府の間で、大きく異なった行動を取る問題を再び描き出して居る。この必須要件と規制のパッチワークが旅行者とエアラインの混乱を招く危険がある。以下の最新情報が、インド、日本、豪州、そしてシンガポールなど主要なアジア太平洋の市場が至近のCOVID-19展開に対して取った対応策を概説したものだ。 

 概要 Summary:

  • 路線網の分断は、今のところ、狭い範囲だが、更なる再開は遅れる可能性がある
  • 日本は、国境規制緩和を後退させ、航空券販売の方針を変更させて居る
  • インドの主要な州は、中央政府のガイドラインとの相反から対策を変化させて居る
  • 豪州の各州は、連邦政府の対策を超えて、それぞれ異なる対策を取って居る
  • シンガポールは中東諸国との*トラベルレーンの導入を遅らせる

      *トラベルレーン:入国後の隔離を不要とする二国間の枠組み

 

エアラインは概ね運航を削って居ないが、急遽変わる可能性がある 

オミクロン株の性質については、また、その脅威がどのくらい深刻なものか、まだ確たる証拠が無い。然し、それについてより多くが判明するまでに、蔓延を防ぐために、世界中の国々が、先制的対策を取る事を止める事は出来ない。

今のところ、アジア太平洋の各国政府がとった対策で、最も共通して居るのが初期のオミクロン株感染者が確認された、限られた南部アフリカの国々からの旅行者を制限する事だ。アフリカ以外の国々で多くの感染例が浮かび上がるにつれ、多くの国々の政府が高度なリスクのリストに追加して居る。然し、これらのリストの中身には、しばしば大きな違いがある。

 

複数の国々で既に取られて居る、もう一つの対策は、計画中の国境再開を一旦休止させることだ。これまでには、少なくとも、地区内の各国政府で、全ての国際線到着客に適用する、より広範な対策を課そうとして居る例は、比較的数少ない。

 

アジア太平洋のエアラインは、未だ、拡大するオミクロン株対策のリストに反応して、大量の路線削減を余儀なくされては居ない。多くのエアラインが計画して居る国際線路線の再開は、依然、進行中である。然し、地区内の幾つかのエアラインは、変更が必要か否か、状況を慎重に注視して居る。

 

CAPAとOAGのデータによれば、現在は、2社のエアラインだけが、アジア太平洋地区と最初のオミクロン感染が確認された南アフリカの間を飛んで居る。以下の図表はシンガポール航空と中国国際航空だけが、現在同国への路線を持って居る事を示して居る。パンデミック前には、南アフリカとアジア太平洋間には5社が便を持って居た。カンタスは2022年1月にヨハネスブルグ線を復便する計画だ。

 

南アフリカからアジア太平洋地区へのエアラインの供給席数、片道週間席数で見た

Source: CAPA and OAG

 

日本の反応は急速にエスカレート=幾らか軌道修正あり 

日本の対策は、COVID-19の新たな変動が起った時に、如何に規制が流動的で急速に変化するかの好例である。

日本は、入国旅行者に対し、既に非常に厳しい制限を設けて居て、オミクロンのニュースでこれを更に強化した。その最初の対策は、特定のアフリカの国々からの旅行者全員に検疫隔離を求めるものだった。 

その次の段階は、2021年11月29日の午前零時から1ヶ月間、全ての非居住の外国人旅行者に対し国境を閉鎖すると言うものだった。

 

最近、政府は、ビジネス旅行者などの限られた範疇に対する規制を緩和したのだが、殆どの外国人観光客は、既に日本の現行のCOVID-19対策で遮断されて居た。この緩和策が撤回されて居る。政府は、また日本に入国する合計旅行者数(日本人、外国人を問わず)を減らす事を決めた。この上限は2021年11月に1日5,000人に引き上げられたものだが、今や、1日3,500人に引き戻されて居る。

2021年12月1日、政府の要請を受け、日本のエアラインは全ての日本への国際線便の更なる販売を、2021年12月の残りの期間中止した。

 

日本発便の販売は依然、続けられる。然し、短時間後、政府は、日本人旅行者が帰国できるよう、2021年12月にエアラインが航空券を売る事を認め、そのスタンスを変えて居る。

 

インドでは、州の規制が中央政府のガイドラインと相反 

インドでは、幾つかの例で、州の要求項目が、中央政府のガイドラインと相反し、入国の規則も変わりつつあった。この事は、インド政府に、国中で最も大きな州の一つに対し、国家当局が定めたものを越えるような、新たな旅行制限を取り下げるよう要請する事態を生んだ。

 

ムンバイのあるマハラシュトラ州では、2021年11月30日、オミクロンへの懸念による同州の規制を修正した。感染検査の要求項目に加えて、「リスクのある」国々からの到着客は、7日間の公的な検疫隔離を、そしてもう7日間の自宅隔離を求めて居る。その他の全ての同州への、国際線到着客は14日間の自宅隔離を済ませなければならなかった。

 

然し、中央政府は、2021年11月28日、既に国際線到着客への要求項目の修正を発出して居た。マハラシュトラの規則とは対照的に、中央政府の求めるのは、リスクのある国々からの旅客は、到着時に感染検査を受け、7日間、自宅隔離するものだった。その他の国際線到着客には、検疫や自宅隔離の義務は無く、空港でのランダムな感染検査がなされるというものだった。

 

政府のリスクある国々のリストには、英国など全欧州諸国、南アフリカ、ブラジル、ボツワナ、中国、モーリシャス、ニュージーランド、ジンバブエ、シンガポール、香港、そしてイスラエルが入って居る。

 

インド政府の保健家族福祉部はマハラシュトラ州政府に対して、新たな州の要求項目は中央政府の手順から外れるものであることを強調する書簡を送った。同部は、州に対して、国全体で統一的に適用できるよう、その規則を中央政府のガイドラインに揃えるよう促した。

 

州政府は、これに従い、2021年12月1日、その規則を変更して、少しだけこれを認めた。同州は、6つの南部アフリカの国々を含む、新たな「超リスク」と言う範疇を創った。

同州の最新の規則の下では、この超リスク範疇の旅行者だけは、7日間の検疫隔離と7日間の自宅隔離を完了しなければならない。同州は、より広い、リスクありのリストに載って居るその他の国々について、そこからの旅行者は7日間の自宅隔離だけが必要と言う政府のガイドラインに従うのだと述べて居る。

 

インドのより広範な再開は、最新のパンデミックの広がり状況のために遅れる可能性がある 

インド発着の国際線便は、現在、唯一、2か国間旅行バブルの取り扱いの下にだけ、限られた便数で運航されて居る。オミクロンの懸念が出現する前には、インド政府は、国境をさらに開放し、2021年12月15日から、通常の定期国際線の便は復旧する事を認めると言って居た。

然し、政府は、オミクロンの懸念のため、再開の日程は見直しされると語った。民間航空局長はCOVID-19の状況はつぶさに注視されて居り、国際線復旧の日取りの決定は、「適宜」行われると述べた。

 

豪州は再開の手順を後退させ、各州は、追加的な措置を取って居る 

 

豪州も、オミクロンの所為で、国境規制の調整に動いて居る。豪州では過去にもしばしば有った様に、この国の幾つかの州は、連邦政府の要求項目に加え、州独自の対策を打って居る。

2021年11月27日、政府は、9つのアフリカの国々からやって来る、その後8つに変更されたが、全ての非豪州人は入国を禁じられる。

 

これらの国々に、過去14日以内に滞在したことのある豪州市民、或は居住者は、豪州到着時に検疫隔離されねばならない。これは、発表の前に到着して居た豪州人にも適用される。これらの対策は2021年12月15日まで行われる。

 

オミクロンの来襲以前でさえ、ワクチン接種が完了して居る豪州市民及び居住者とニュージーランドとシンガポールからのワクチン接種済みの「グリーンレーン」旅行者だけが、再入国可能であった。

 

2021年11月29日、政府はまた、計画されて居る、国境再開の次の段階は、2021年12月15日まで休止すると発表した。国は以前には、特定の国際的な熟練労働者と学生は、2021年12月1日から入国させる積りだった。計画されて居た日本と韓国からの旅行再開もまた休止となるだろう。

 

ニューサウスウエールズとビクトリアの両州は、オミクロン株によって余儀なくされた新たな対策として、それぞれ、全ての海外からの到着客を72時間自宅に隔離する事を求めて居る。これらの対策が実施される前、NSWとビクトリアはワクチン接種済みの豪州居住者は、海外からの帰国時に隔離や検疫隔離なしに入国を認めて居た。

 

タスマニアは、更に進んで居て、ニュージーランド南島以外の如何なる海外からの到着客に対し、事実上国境を閉ざして居る。

 

その他の豪州の各州は、概ね、未だ国際線到着客に対する検疫隔離規定を実施して居る。

 

シンガポールは、中東3国に対するトラベルレーン開始を延期する 

その他のアジア太平洋の国々は、また新たな要求項目を導入して居る。

これには、国際旅行に対する国境再開と言う点で、地区内のリーダーの一人だった事から特に注目されて居たシンガポールも含まれて居る。

 

シンガポールは、世界中の国々と、これらの2か国間協定の下に、検疫無しの入国を認める、ワクチン接種済みトラベルレーン(VTL)を、徐々に開設して来た。2021年11月29日、新たに5つのVTL協定が発効し、VTLを合計18か国に増強した。

 

3つの中東諸国、カタール、サウジアラビア、そしてアラブ首長国連邦が、2021年12月6日に追加される予定であった。然し、2021年11月28日、シンガポール政府はオミクロンへの懸念からこれらのVTLの開設を延期した。新たな日程は未だ設定されて居ない。

 

シンガポールの運輸省は、これら3か国の延期の決定は、「ボツワナ、エスワティニ、レソト、モザンビーク、ナミビア、南アフリカ、そしてジンバブエへの交通の結節点としての地理的近さの観点から」なされたと語った。3つの中東諸国は、主要な航空旅行のハブである。

 

シンガポール政府は、また、オミクロンの状況への対策として、一連の検査施策を導入して居る。保健大臣は、「我が国は、出現に合わせ、監視とオミクロン株のデータの評価を続け、それに従い、国境と国内の対応策を調整して行く。」と述べて居る。

 

より大きな統一的取り組みが極めて役に立つが、依然、それは空想的な考えだ  

オミクロン株とその深刻さについては、未だ多くの重要な詳細情報が不足して居る。従って、より多くが判明するまで、アジア太平洋の国々が、この変異株がまた深刻な感染の波になることを考え、予防的な措置をとりたいと思うのは理解が出来る。最近のデルタ株の経験は、新たな変異株が自国の国民と旅行業界にどんな痛手をもたらし得るかを示した。この地区の多くの国々は、デルタ波の後に再始動したばかりで、その他の国々はまだ何も出来て居ない。

 

然し、アジア太平洋の幾つかの政府の、オミクロンの脅威に対する反応が大きく違って居る事は、各国がリスクをどの様に評価し、対峙するか、未だに統一性がわずかしか無い事を示して居る。そして、同一国内でさえも、州と中央政府、また各州ごとにもしばしば違って居る。この全てが、それ自体で旅行を躊躇させる規制と必須要件のゴチャゴチャになったジグゾーパズルを創り出して居る。この問題が、未だにCOVID-19パンデミックが始まった頃と、ほぼ同程度に存在するのだと言う事を明らかにするには、新たな脅威の出現が必要である。

 

パンデミックに突入して、もう18か月以上も経った後で、これは国のリーダーシップの放棄に他ならない。調整手続きの一定の形を構築出来ないと言うのは、繋がりあった世界が必要とするものから、かけ離れて居る。 

 

問題は、重要な判断に関与する、政府のそれぞれの部門の専門事項により、また保健や出入国管理の当局は、国家の経済に関わる政治が優先されて、複雑化して居る。それぞれの国が、異なった取り組み方をする事は理解できるが、新たな事態が起こるのは予見できるのに、相手と協議して、取り組みを調整する道筋を立ち上げる事に、救い難く失敗するのには、弁解の余地が無い。オスカー・ワイルドから少し引用すると、一度失敗するのは不幸だが、2度起これば単なる不注意だ。

 

然し、多くの人々の生命と生活を危険に晒して、それが起こり続ける事は許しがたい事である。 

以上