当分析はCAPAが2021年12月10日に発表した
European aviation: recovery slides further as travel restrictions rise
JAMRが全文翻訳したものです。
2021年12月19日
欧州の航空業界:旅行制限が強まるにつれ、回復の地滑り更に進む
10-Dec-2021
IATAは、拡大した国際線の旅行制限はCOVID-19のオミクロン株に対する、「膝反射」的な対応であると言う。IATAは、COVID感染者数と、国際線旅行制限との間に明確な関係は無い事を指摘して居る。
然し、残念ながら、旅行制限と航空需要の間には、明らかな関係がある。既に勢いを失った欧州の供給席数の回復は、今や、6週間も連続で地滑り傾向にある。
2021年12月6日の週、欧州の供給席数は、2019年水準から29.7%落ちて居る。これは過去6週間で5.1ポイント下落した事を示して居る。
欧州は地区間供給回復ランキングで4番目である。アジア太平洋は36.1%の減、アフリカは33.2%、中東は28.6%、北米は15.8%、そしてラテンアメリカが13.9%(ラテンアメリカはパンデミック期間中、初のランキング首位になった)。
「オミクロン時代」の交通量データは未だ出て居ないが、追加された旅行制限と、これにより旅行者の信頼が揺らいで居ることは、少なくとも短期的には、供給より需要に、より大きな影響を与えて居るかも知れない。
全てのCOVID-19変異株の影響を緩和する、ワクチン接種のプログラムは、依然として、長期的な解決策であり続けて居る。
概要 Summary
欧州の総供給席数は2019年の2,790万席から30%落ちて、1,960万席である。
OAGのスケジュールとCAPAの座席仕様データによれば、2021年12月6日の週、欧州の総供給席数は、1,960万席と登録されて居る。
これは、2019年同週の2,790万席に対して、29.7%の減少である。これは、先週の▲28.7%より1.0ポイント悪くなって居り、6週間前のパンデミック時代の最高値▲24.6%より下がって居る。
今週は、欧州の総供給席数、国内線は600万席、対するに2019年の同週は720万席;そして国際線は1,360万席対2,070万席である。
欧州の国内線席数は、2019年対比16.1%減で、先週の▲15.8%と大して変わらない。
国際線席数は、2019年対比34.4%減で、先週の▲33.2%から地滑りが大きくなって居る。
欧州:エアライン週間供給席数%変化、2019年同週対比(2020年1月6日~2021年12月6日)
Source: CAPA - Centre for Aviation, OAG.
供給の2019年対比パーセンテージ、世界の地区間で欧州は4位に上昇
供給席数の2019年水準に対する%で見たランキングで、欧州は5位から4位に上昇した。これはアフリカの供給の大規模な地滑りの為である。
供給が29.7%落ちた欧州は、36.1%減のアジア太平洋の上である;そしてまた33.2%下落のアフリカの上である。中東の供給席数は28.6%下降、北米では15.8%、そしてラテンアメリカでは13.9%である。
北米は2021年5月中旬から続いたトップの座から陥落して居る。
アジア太平洋とラテンアメリカは、今週、トレンドの上りの一歩を踏み出した、一方で欧州、北米そしてアフリカ(特に)は下りの一歩である。中とは概ね先週と同じだった。
地区別旅客供給席数の、2019年対比パーセンテージの変化、(2020年3月30日~2021年12月6日)
Source: CAPA - Centre for Aviation, OAG.
欧州の2021年第4四半期供給は、依然2019年水準の71%と予測される
OAGとCAPAのデータに依れば、2019年水準に対するパーセンテージで見た供給は、2021年の各四半期毎に改善して来た。第1四半期が30%、第2四半期は34%そして2021年第3四半期は64%だった。
2021年第4四半期に登録されたスケジュールは、2021年12月の供給が、2021年11月29日の週から1%の下降ではあったものの、2021年第3四半期に比べ、更なる上昇で、2019年第4四半期水準の71%と落ち着きつつあった。
2021年の年間供給は、2019年の供給の、2020年には42%だったのに比べ、50%と予測されて居る(2021年は各四半期毎に大きく改善したが)。
2022年第1四半期の供給は、2019年水準に対し、先週は88%の予測だったが、87%と予測されて居る
現在のスケジュールに基づく、2022年第1四半期の予測は、欧州の供給席数は2019年第1四半期水準の87%である。
これは先週以来、1ポイントを超える下降だが、2021年第4四半期からは大きな上昇の歩みである。
CAPAの2021年12月2日の欧州供給の傾向分析で報じた様に、コロナウイルス オミクロン株は、2022年第1四半期の供給の最終的な結果を決断するに当たって、極めて重要な要素になりそうである。
IATA:新たな旅行制限は、オミクロンに対する「膝反射」的反応である
コロナウイルスのオミクロン株が南アフリカで発見された事で、多くの政府が国際線旅行の制限を強化する事になったが、これをIATAは「膝反射」的反応と表現して居る。
多くの国々が南部アフリカからの旅行者を入国禁止または厳しく制限して居り、これが速やかにエアラインの供給に影響を及ぼして居る。2019年水準に対するパーセンテージで描いた、今週の大規模なアフリカの供給席数減少の動きはこれを明瞭に現わして居る。
これに加えて、中国、イスラエル、日本そしてモロッコなどの国々は、事実上その国境を閉ざし、他方、その他の国々は全ての国際線旅行者に対する、要求項目を追加して居る。
例えば、英国は現在、到着前48時間以内の出発前検査(PCRまたは*ラテラルフロー)を追加したことを先週発表して居る。
これは、旅行の費用に加算され、2021年春以来築いてきた国際線旅行に対する消費者の信頼の改善を脅かしつつある。
訳注)*ラテラルフロー:抗原定性検査LFD test。
抗原抗体反応を利用して抗体の有無を判別する手法
COVID 感染者数と旅行制限の間に、明らかな関係性は無い
然し、IATAは、国際線旅行制限が実際に新たなCOVID-19感染を減少させたのか、疑問を投げかけて居る。
その事務局長の2021年11月30日のブログでは、このエアラインの業界団体は、旅行禁止の与える影響は限られて居るとする、多くの健康衛生の識者の言葉を引用して居る。
2021年12月3日にIATAの経済チームが述べて居る様に、「12月3日現在、オミクロン株は、既に、主な大陸それぞれの、少なくとも30か国で検出されて居り、南部アフリカからこの変異種が出てくるのを防ぐには手遅れである。」
ECDCとオックスフォード大学のデータを使って、IATA経済チームが発表した以下の図表は、2020年1月から2021年11月下旬までの、世界のCOVID新規感染数に対して世界の旅行制限の指標を対応させて示したものである。
2021年の殆どの期間を通して、国際線旅行制限は可なり安定して居たのに対し、新規感染数には、大きな山谷があった。
旅行制限とCOVID新規感染数(2020年1月~2021年11月下旬)
Source: IATA Economics using data from ECDC, Oxford University.
ワクチン接種が、依然、最も効果のある武器である
オミクロン株の対策として布かれた国際線旅行の規制がいつまで続くのか、そしてその厳格さについて鍵は、入院者と死者の数、症状に対する処置法、そしてワクチンの効果への影響を、より完全に理解できるかにかかって居る。
欧州における、最新のCOVID-19新規感染者数は、ワクチン接種が高い水準に達したお陰で、COVIDによる急速な死者数の増加を伴なって居ない。
ワクチン投与数(100人当たり)、ICU入院患者数(100万人当たり)、毎日のCOVID新規感染者確認数、そして100万人当たり死者数(7日間の移動平均)
Source: Johns Hopkins University CSSE COVID-19 data, via ourworldindata.org.
オミクロン株は、感染者数で更に勢いを強めるかも知れないが、ワクチン接種がこれに効果があり、入院者数や死者数の上昇に導かなければ、国際線旅行への影響は、長く続かないかも知れない。現時点では、証拠はまだ集積中である。
オミクロン株か、或はこれから発見されるその他の変異種かに関わらず、ワクチン接種が、COVID-19に対処するには最も効果的な方法であり続けそうである。そして、豊かでない国々が国民にワクチン接種の機会を与えられるまで、それが長引けば長引くほど、新たな変異種が現れ続けるのか、より予測し易くなるだろう。
以上