2020年8月3日
エアアジアは破綻するには大き過ぎる?そうあるべきだ
14-Jul-2020
世界中の、他の殆どのエアライン同様に、エアアジアは財政的な逆風の中に突っ込んで居る。これからの数週間のうちに何が起こるのかが、その将来の形を決定する;これは間違いなく現在の形とは異なるが、アジアの航空と観光のためには、同社が生き残る事が極めて重要である。
2020年7月8日、EY(アーンスト&ヤング)は「企業として事業を継続する点で、大きな不確実性がある」と通知した。
エアアジアは、現在、今の株主たちからある種の形での資金集めも含め、投資家を探して居る。
エアアジアは2019年に3,500万人を超える旅客を運んで居り、この地域を主導するLCCを一撃で失うことは、この地域の大部分で観光産業を脅かすことになるだろう。
概要
エアアジアは、COVID-19に打撃を受けたが「この危機を無駄にしないだろう。」
2020年7月9日エアアジアの監査法人、EYは「同社の継続企業として続けていく能力について、かなりの不確実性」を提示した。
2020年7月8日、エアアジアグループBHDの株式の取引は中止され、この発表を受け、その日の株価は、12%下落し、70MYR(マレーシアリンギット)よりも低い値で終えた。同社が幾つかの選択肢を追及することに関し、議論が続く中で、この株価はその後安定し、2020年7月14日の終値は74MYRとなった。
*1MYR=25.19円
以前には、実績供給席数でアジア最大のエアラインであり、今やどこにでも飛んで居るこのLCCは、COVIDパンデミックが襲来するに伴い、予想通り厳しい逆風の中に飛び込んでしまった。
エアアジアは年度当初に、既に比較的に大きな債務を抱えて居た事から、その大部分の保有機群を地上待機(2020年4月初旬には、保有機群のほぼ全体が地上駐機)とし、国境線が閉鎖されたことで、概ね国際線LCCである同社にとっては、コストの大きな重荷と、収入を生み出す機会が減少したままに取り残されてしまった。
前向きな兆候もある。2020年7月9日、創始者トニーフェルナンデスが述べた様に、「7月7日、我が社は鬱積した需要を反映し、回復の兆しである、冬眠期間の後、一日単独で最大の売上となる75,000席の販売を記録した。この大変な時期の先には好機が待って居る。我々は多くの危機を乗り越えて、より強く甦って来た。我々はこの危機を無駄にすることなく、より強くなって復活するだろう。」
アジアの航空業界には2つの時代がある:エアアジア前と後である
この地区にとって、同社の持つ意味合いはその様なものであった。
エアアジアは恐らく、エアライン業界に対して、どのエアラインよりも大きな影響を与えて居る。その到来は純粋に「今や、誰でも飛ぶことができる」ことを意味したのである。
元祖LCCモデルのサウスウエスト航空は、ずっと後に欧州でイージージェット、ライアンエアを生み出した、低コスト概念の創世記にあたる。彼らが今度は旅の革命を生み出した。然し、それぞれは、実質的には国内市場で事業を展開して居て、そこは既にしっかり確立された航空の環境であった。
それとは対照的にエアアジアは、もし比較的に小さなマレーシアの国内市場の外で拡大しようとするなら、国の境を乗り越えなくてはならないと言う、大きな障害物に打ち勝たねばならなかった。そして2003年に同社の出現したのは、しばしば、国家の所有と管理のもとで国旗を戴したエアラインの支配する世界にであり、そこでは、しばしば政府が、より広範な旅行業界とそれに伴う大きな経済効果にではなく、そのエアラインの利益を確保する事に強い利害関係を持って居た。
これに加えて、エアアジアが生み出し、主導した、低コストの域内運航の急速な拡大は、ビジネスの繋がりを伴った、観光が栄える中で、地区内の統合を刺激することに大きく貢献した。
エアアジアは、この地区にとって素晴らしい成功物語
同社が、全ての困難(そして「専門家」の意見)を物ともせず、本の15年ちょっとの間に、潰れたマレーシアの小さな航空会社から、アジア最大のエアラインになると言う、同社の齎した素晴らしい影響を達成するためには、何よりもまず、馬鹿馬鹿しいほど広がった想像力の必要があった。然し、その目標を達成する事には、幾つかの要素があった。
主たる勢いは、トニー・フェルナンデスと言う、一人の男の夢と異常な行動力と想像力(それを支えるチームの後押しが必要だったが)からやって来た。
然し、そのはずみと言っても、タイミングが必要だった。
タイミングは完璧だった。東アジアは経済的に上り調子であり、域内の市場を支配する、頑強で保護主義的な体制が崩壊する時期が熟して居た。
フラッグキャリアー各社とその国の政府は、長距離航空便、フルサービス運航に対する自由主義的な体制に対して極めて協力的で、以前には近距離便にはその様な熱意を示した事がなかった。この地区の保有機群は、広胴機が支配的で、多くの便数、近距離低コスト便(低価格と言うだけでなく)には全く不向きであった。
全く新しい有権者にとって超低運賃の即座に与えた影響は、市場へのアクセスについて新たな自由主義を引き起こし、政府周辺の考え方にも影響を与えた。
エアアジアは拡大を許された;即ち、そうすることが大衆への利益になることが明らかだった。ASEAN(東南アジア諸国連合)を通じ、欧州共同体の自由主義的な体制に似た、加盟国間でオープンスカイを創り出す、基礎となる、然し未だ実現しない、多方面の動きが既にあったのだ。
未だ国際的で、強く規制された業界に於いて、重要なイニシアティブの1つが、国境越え共同事業(地元が過半を所有し、エアアジアブランドを着けた国内エアライン)を設立すると言う、幾つかのエアアジアの計画を容認する事だった。これが、ASEAN域内そして更にその先への両方で、複数の国際的な繋がりを、そして効率性を可能にした;然し、それはまた現時点で財務状況の回復をより複雑なものにして居る。
ASEANは何年もの間、オープンスカイ体制について協議して来た。今や、行動に移す時だ
これらの共同事業は、エアアジアがコロナウイルス問題により齎された、財政的な難題に直面した現在、重要になった特徴である。タイ・エアアジア、フィリピン・エアアジア、インド・エアアジアそしてその他の共同事業は、多分それぞれの国のレベルで、資本の再構成、或は売却の過程にある。
そして、その暫定的な動きが、エアアジアの拡大を触媒とし、同時にそれを支援したASEANにとってエアアジアの世界が縮小されるのはこの地域の発展の為には大きな後退を記すことになる。
世界的な危機のこの段階で、多面的な行動を願うことは、多分、希望的観測だろうが、シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナム、そしてフィリピンの様なASEANのリーダーたちが歩み寄って、エアアジアとその他のエアラインの将来の為に、継続可能な枠組を支える事が大切だ。
どの国も自国の事に集中して居る一方で、何処にでも属し、だが何処にも属して居ない(2020年第1四半期に市場占有率が60%だったマレーシアを除き)エアアジアの様な多面的な企業体は、容易にナショナルフラッグキャリアに次ぐ2番手になる事が出来る。
必然的に、エアアジアの将来に最大の利害を有して居る国、マレーシアには、資金的にか、或は企業としての解決策を仲介してかは極めて不確かではあるが、演ずべき核心的役割がある。
市場が、そして需要が徐々にに再開するにつれ、エアアジアは、現在、2019年の同じ時期の約1/3の供給量で運航して居る段階へと供給を増やしつつある。
エアアジアの供給(2020年7月13日の週)は対前年で2/3以上、落ちて居る
Source: CAPA - Centre for Aviation, OAG.
然し、これらの水準は、出血を止めるために必要なものに比べ、遥かに低い。そして、国境が再開される進度を巡っての不確実な状況は、あらゆるエアラインにとって、自社の回復の軌道を計画するために少しも助けになって居ない。
それはまた、エアライン各社が自ら充分と考え、そして、再び収益を上げられる資金投入の水準を見積もる事を、ほぼ不可能にして居る。
すぐさま必要なのは、少なくとも2020年末までを守ってくれるために、充分に大きな弾薬庫を創り上げる事だ。それ以降に起こる事が、エアアジアに限らず、世界中のエアラインの将来を決める事になるだろう。
以上