当分析はCAPAが2020年8月14日に発表した
Pandemic’s second wave: risk to Japanese domestic aviation revival
をJAMRが全文翻訳したものです。
2020年8月16日
04-Aug-2020
日本の国内旅行の再活発化は、アジア太平洋地区で最も印象的な出来事の一つであった。然し、この国のCOVID-19感染者数が、その回復のペースにブレーキをかけようとして居る。
日本の国内線供給は、COVID前の平常水準に向かって、跳ね返って居た。国内旅行は、他国に比べ、同じ程度に完全シャットダウンにはなって居なかったのだが、それでも政府の移動制限により、劇的に削られて居た。
日本市場の転換点は、2020年6月19日、政府がこの国の緊急事態宣言を解除し、国内旅行の制限を緩和した時だった。これが、各社のサービス強化再開に拍車をかけた。
然し、現在、感染の第2波が、特に要となる東京市場で、懸念を呼んで居る。各社が2020年8月の夏休み期間が、需要を更に盛り立ててくれるのを求めて居た事から、タイミングは、理想からは遥かにかけ離れたものだった。エアライン各社は、予約が落ちて行くに連れ、供給拡大計画を元に戻す事を決めて居る。
政府は、大規模な旅行プロモーションで国内旅行の勢いが続いて行くように手筈を打って居るのだが、やはり、この計画もいくぶんか引き戻さざるを得なくなって居る。
概要 Summary:
● JALとANAは、2020年8月に、ほぼ国内線の全便を復便する計画であった。
● 新たなCOVID蔓延が需要を抑圧し、僅かに退潮をもたらして居る。
● 日本のエアラインは、自社の国内線路線網に史上前例の無いほど、依存して居る。
● 最近の感染急増は、政府の国内旅行キャンペーンを混乱させて居る。
● 国際線便は少しずつ戻ろうとして居るが、極めて低い水準からである。
下の図表は、2020年6月に国内旅行制限が解除されて以来、ますます早く上り続け、日本航空の供給席数の着実な上昇を示して居る。
日本航空:週間国内線供給席数、2017年〜2020年
Source: CAPA and OAG.
2020年5月下旬から6月上旬の最低点に於いて、同社は国内線のたった28%を運航した。運航率は7月の後半には68%に上昇し、同エアラインは、2020年8月の末までには90%までになるだろうと予想した。
供給ほどの率では無いが、需要もまた上昇した。国内線の需要は、2020年7月の後半で、通常水準の50%、そして2020年8月には70%へと増加すると予想されて居る。
然し、JALは2020年7月晩く、日本に於けるCOVID感染の新たな波が予約に影響を与えつつあるため、2020年8月前半の供給見積を僅かに削った。これは、2020年8月1日から8月17日の計画を同社の通常スケジュールの83%に減退させる結果となった。これより前には、同社はこの時期、同社のスケジュールの90%~93%を運航する事を目指して居た。
今の所、同社は2020年8月の後半にかけ、供給目標を調整せず、この月を90%で終えようと計画して居る。然し、最近の感染蔓延がどの位続くかによっては、これは今後のアップデートで変わる可能性がある。
全日空は、2020年7月の末までに、国内線の半数ちょっとを運航して居るだろうと見積もって居り、そして、これは2020年8月に88%に増えると予想して居た。
然し、ANAはまた、その見通しを最近、調整し、現在では、2020年8月はCOVID-19前のスケジュールの平均77%を運航することを計画して居る。この率は、月間を通じて、第1週の71%から、夏休み期間中の月半ばには、88%まで幅広く変化する。
また、ANAグループにはLCC子会社のピーチがある。このLCCは、親会社よりなお急速に国内線供給を取り戻して居り、その全国内線路線スケジュールを2020年7月晩くまでに、回復させて居る。ピーチは、2020年8月の夏休み期間の便数を、以前に計画して居た水準を超えて増やす計画であるとさえ予告して居た。
然し、フルサービス各社同様に、コロナウイルス感染数の上昇の所為で、このLCCもその野心を後退させざるを得ず、より多くの便をキャンセルした。
国際線サービスは、依然として、停滞状況であるが、極めてゆっくりと元に戻ろうとして居る。エアライン各社は、暫く、国際線から国内路線網への送客が、殆ど無い状態だろうから、日本の地元の旅客に頼るしかないだろう。
これは、日本における国内線と国際線市場の重要性の逆転の様なものを示して居る。
比較的に、停滞した人口増加と高速鉄道路線網の広がりは、日本のエアライン各社が近年の国内線の伸びを低く抑え、代わりに旅客数と路線網拡大の好機を求め、国際線市場に集中して来た事を意味して居る。然し、今や各社はその国内線部門に大きく依存して居る。
下図は、2020年7月下旬、日本市場の出発便の94.2%が国内線便だったことを示して居る。2020年1月、COVIDが猛威を振るい始める前は出発便の73.4%が国内線だった。
日本の国際線対国内線出発便数:2020年7月27日の週
Source: CAPA and OAG.
日本の政府は、地元の旅行業界を支援し、国内旅行を喚起するため、需要を更に刺激しようと試みて居る。2020年7月22日、一定の制限内で国内旅行のコストの半額まで補助する、「GO TOトラベル」と称するキャンペーンが開始された。
この1兆3,500億円と言う巨額のプログラムは、特に東京で、最近のCOVID-19感染者数の急増で、複雑な状況に陥って居る。政府は、一部の人々から第2波のリスクがある中で、国内旅行を盛り上げるべきなのかという批判に直面して居る。
これらの懸念の為に、政府は当面、東京市場を対象から除外し、計画を修正して居る。
海外旅行は、日本と日本のエアラインが飛ぶ諸外国に於ける、国境と検疫隔離の制限のため、国内に比べ、ずっとゆっくりと戻って来て居る。
JALは2020年8月には、国際線便のたった10%、そして2020年9月には11%を運航する計画である。これは、2020年7月に飛んだ7%からは僅かに改善して居る。
国際線便の運航率は、ANAもとてもよく似て居る。同社は2020年7月、同社国際線便の9%、2020年8月には11%を運航する計画である。便は4つの路線で復活し、その他の路線で増便が計画されて居る。
然し、意味のある国際線供給の回復は、依然、遠い見通しである。
日本:週間国際線供給席数、2017年~2020年
Source: CAPA and OAG.
日本での状況は、国内線供給が、通常の水準に戻りつつあってさえ、回復のペースも当然の事とは言えないのを表して居る。需要の改善はCOVID-19が存在して居る間は、不均等になるだろうし、一時的な逆転現象も予想されるだろう。これが共通の決まり文句になりつつある。
国内旅行を支援する事で、エアラインと旅行業界、とともにより広く経済を助ける事になるが、同時に避けられない再流行が発生した場合は、コロナウイルスの蔓延を助長するリスクも孕んで居て、各国政府は、細い綱渡りをしなくてはならない。政府の係官は、どの地域であっても閉鎖することは可能な限り遅らせたいだろう。
然し、政府が、或はエアラインが何としても見たくないのは、全国一斉の緊急事態宣言に立ち戻る事態だろう。
Pandemic’s second wave: risk to Japanese domestic aviation revival