当分析はCAPAが2020年1月30日に発表した
Why Wuhan's aviation impact will be vastly larger than SARS
をJAMRが全文翻訳したものです。
2020年2月11日
武漢の航空への影響が、何故SARSに比べ遥かに大きくなるのか
30-Jan-2020
今回のネズミ年は中国旅行界にとって、縁起よくは始まらなかった。今後如何なる事が起ころうと、武漢を起源とするコロナウイルスは、2003年のSARSに比べて遥かに大きな影響を地域の航空と旅行界に及ぼすだろう。
その理由は簡単で、2003年の中国の国際航空と観光界に占める役割は、今日の巨大な存在感の、色褪せた陰に過ぎなかったからだ。
この17年の間に、中国はこの地区の発電所となって居る。今日、その観光客はアジア太平洋地域の殆どの国にとって、国際線訪問客に最大の割合を占めて居り、彼らはまた、多くの場合、一人当たり消費額も最大である。そして一方、中国発着の航空便は何倍もの伸びを見せて居る。一つの強烈な例を挙げると、想像するのが難しいかも知れないが、2003年にはアジアには国際線を運航するLCCは無かったのである。今日では、地点間の便も、第三国を結ぶ便も双方で、中国線の主役は彼らLCCである。また、国際線を飛ぶ中国のエアラインの数は5倍に増え、一緒になって市場現場を、遥かにより競争の激しいものにして居る。
既に、中国では封鎖が継続し、エアラインの便が削られる中で、インバウンド、アウトバウンド双方の観光客は殆ど全面停止へとよろめいて居る。その衝撃は既に強大である。まだ未知なるままなのが、ウイルスの感染拡大がどの位長く、どの位広範囲に広がり続けるのかである。
良いニュースは、SARSからの全ての証拠によると、パンデミックが収束するや、各業界は次の年に極めて急速に息を吹き返した事だ。不安定な中国経済には、のしかかる長引く疑問がある事から、今回は他の種々の要素、特にコロナウイルスが中国で大きく広がるかどうか、も入り込んで来るだろうが。
概要Summary
● 武漢のコロナウイルスは、衝撃の最悪の部分は中国(と香港)の中で収まって居る様だが、未だに広がって居る。
● 然し、長期に亘り、広範なウイルスの感染拡大が、この地域の航空、観光業界に与える影響は、2003年のSARSより遥かに重大になるだろう。
● 中国は2003年に比べ、旅行観光業界の中で、遥かに重要な地位を占めて居る。
● エアラインの状況も変わって居る。2003年には殆どの航空便はフラッグキャリアーが担って居た。2020年には、エアラインへの衝撃は、LCCを含み、より幅広くエアライン各社の間に広がって居る。
● 安定した経済状況にあると仮定すれば、回復は迅速で徹底したものだろう。
一年中で最大の旅行時期である旧正月に、国の商売をほぼ閉ざしてしまった、直近の影響は、中国中の旅行と観光、そしてこの地域全体の活動双方の重要部分に大きな波を起こして居る。既に数百名の死者が報じられて居り、確認された中国国内の感染例は、SARSの時に経験した水準を優に超えて居る。
短期的には、北京の(目を見張る様な、そして極めて責任ある)中国全体の都市の封鎖が、人々の動きに最も重要な影響を及ぼしつつある。これはSARSの時には起きなかったため、ウイルスがより広く急速に蔓延してしまった。諸外国の政府は、旅行警戒令を発出し、多くのエアラインは便を止めるか、可なりの度合で中国と香港への供給を削って居る。
幾つかのアジア太平洋の国々にとっては、中国は観光客の重要な源泉である;2019年、タイの全国際線訪問客の28%に当たる1,100万人が、中国からやって来たし、国際線エアラインの供給席数の1/4が中国発着であった。ベトナム、韓国、日本そして台湾はほぼ同様に中国市場に結びついて居る。
特に旧正月と言う、年間の最繁忙期に、観光がほぼ全面停止することは、必然的にこれらの又その他の国の幅広い範囲の観光関連事業に、可なりの痛みを発生させるだろう。
業務渡航はエアラインの収入に、極めて重要な水準を占めて居る。そこでは、渡航計画が、雇用者が注意義務を認識し、中国や香港の様なウイルスが進入して居る都市を発着する飛行機旅行を取り消さざるを得なくなるため、相当期間、中止されかねない。
以前に感染して居た地域でも、急速に低運賃に引き寄せられ戻って来る、個人旅行者と異なり、企業はより慎重な取り組みをする必要があるだろう。
2003年のSARSの時は、エアラインの市場はフルサービスエアラインに支配され、アクセスは比較的に固く統制の取れた体制だった。今日では、ずっとより自由な市場へのアクセス体制で、LCCが地域における航空業界の成長の最大の牽引車であり、市場に参加する者の数は、大きく増加した。
一方で、長い歴史を持つ外国のフルサービスエアラインは、よりゆっくりと拡大し、近距離、域内路線便では、可なり大きな市場占有率をLCCに譲って居る。
最大の変化は、今や国際線を運航して居る、多くの中国のエアラインから生じて居る。今日、大体30程の中国エアラインが、主としてアジア域内で飛んで居る。17年前、それはほんの一握りだった。(例えば、CAPAの記事、中国エアライン:急速な国際線拡大が外国エアラインに衝撃を参照)
これには、幾つかの意味合いがある。エアラインにとっては、負担が、より広い範囲に広がって居る事を意味し、これは多分、金融市場が、最大の影響を受けて居るエアラインの株価が、今週、2020年1月3日までの週に僅か5%ほどの下落(更なる下落の兆候はあるが)と言う、かなり穏やかな反応をして居る理由だろう。
LCCは中国発着の、国際線供給席数のほんの5席に1席を占めて居るに過ぎないけれども、その数字でさえ、SARS時代に飛んで居た、国際線全供給席数の合計を優に越えて居る;そして、他地域市場に於けるその存在は、遥かにより大きいのだ。
現在、中国発着で、より多くのエアラインが飛んで居て、従って競争の水準は遥かに上がって居る。これの意味する事の一つは、ひとたび、ウイルスが制圧され、旅行者が、市場に戻る様にするためには、少なくとも数週間は、可なりの運賃割引が必要となるだろう。結果として巻き込まれたエアラインは、引き続き財政的な痛手を経験する事になりそうだ。
立ち直り:SARS後、回復は早かった
2003年、キャセイ太平洋は、SARSのピーク時に飛行機はガラガラで、完全に運航停止するまで、ほんの数日の問題だった。その頃の一つ違う点は、この香港のエアラインが、中国発着の乗り継ぎ旅客に、遥かに大きく依存して居たことで、一方、今日は、直航便が中国旅行のずっと大きな割合を占めて居る。
香港空港にとっては、然し、逆転は、まだ長引くSAR(香港特別行政区:Special Administrative Region)のデモの影響から、空港がよろよろと立ち直ろうとする最中にやって来ることになる。
2004香港は2003年SARSで最大の打撃を受けたが、2004年に急速に立ち直った
中国国内では、その頃航空旅客の約90%が国内線だったが、北京首都空港は2004年に43%増と跳ね上がり、この絵柄が、この地域では多かれ少なかれ繰り返された。
武漢の後、似た様な回復を予想する事を阻む警告が、ひとつある。旅行が極めて急速に跳ね上がった2004年には、世界の経済が拡大して居て、中国はほぼ2桁の経済成長を経験して居た。
現在は、経済成長は下降しようとして居り、経済が一体何処へ向かって居るのか疑問がある。
もし、武漢のウイルスが広がり続けると、各国の経済に対する否定的な影響は、比例して、より強く響く結果になるかも知れない。
Why Wuhan's aviation impact will be vastly larger than SARS