日本航空、ロンドン毎日2便目を運航へ=ANAに対する、数少ない戦略的優位を得る

当分析はCAPAが2017年7月26日に発表した 

 

 

 Japan Airlines to operate a second daily London flight – gaining a rare strategic advantage over ANA

 

 

をJAMRが全文翻訳したものです。

日本航空、ロンドン毎日2便目を運航へ=ANAに対する、数少ない戦略的優位を得る

26-Jul-2017

JALは、経営破綻、リストラに伴い、政府の課した活動制限のくびきから解き放たれて以来、成長を続けて居る。JALは、メルボルンへの新サービスを発表し、いくつかの国際線を成田から羽田に移行させた。

 

JALは今や、2017年10月からロンドンヒースローへの毎日2便目を計画中である。この便は東京からロンドンに朝到着する唯一の便になり、そして英国はJALがANAより大きな存在感を持って居る欧州で唯一の優良市場である。ANAは、ロンドン線第2便を導入しようと試みたが上手くいって居ない。

 

日本=英国間の市場は、2016年には、訪問旅客が増えて居るが、直航便の供給席数は減って居り、JALに都合の良い需給不均衡が生じて居る。2便目は、また、JALとは共同事業を行って居る英国航空(イベリア、フィンエアーと共に)の拠点であるロンドンを使って、欧州の他の地点へのハブとする事が出来ると言う更なる商機をJALに齎すことになる。

 

JALは2017年10月、羽田=ロンドン毎日2便目を開始

 

2017年10月29日、JALは東京=ロンドン/ヒースロー毎日2便目をスタートさせる。この追加便は、また羽田から出るが、早朝の6時25分にヒースローに着くよう、午前2時頃に出発する。これは東京=ロンドン線でヒースローに早朝に到着する唯一の便となる。JALの他の便、BAの2便、そしてANAはもっと遅い到着だ。JALの新しい便は朝9時半に出発し東京に6時25分(冬季)か5時15分(夏季)に戻って来る。

 

JALは公にはロンドン/ヒースローの発着枠の状況については触れて居ない。JALの過去の毎日2便目は現在の便と同様にロンドン到着、出発とも昼間から午後遅くであった。新しい便はロンドンの朝の発着枠を使用するのだ。

 

日本=英国間の訪問者数はこの10年間の頂点に達したが、英国発にシフトして居る

 

2016年に、日本=英国間市場は2007年の規模を超え、2016年の双方向の訪問者数は2007年よりも約1.6%増となった。2016年は訪問者数の規模が2007年の水準を超えた最初の年だ。日本市場で明確に起こって居る様に、日本人の出国需要から日本への入国需要へのシフトがある。2014年まで日本人の訪問者は日本=英国間市場の凡そ55%を占めて居たが、今や46%で、英国人訪問者が過半数となって居る。

 

この所ずっと英国発日本行きの需要が強く伸びて居たが、JALには重要な日本人の出国需要が伸びを見せ始めて居る。2016年の日本人の英国訪問者は2007年の水準に比べ、20%減ではあるが、日本の出国需要市場は2008年にかなりの減退を示し、2014年まで大きな変化が無かった。2016年の日本発英国への訪問者は2008年から2014年までの平均に比べ6%多くなって居る。

2015年から2016年への訪問者の伸びは、バージン・アトランティックの撤退(次章参照)の結果として起こった日本=英国間直航便の供給席数減にも関わらず生じて居る。これは第6の自由需要を増やして居り、JALはこれを取り戻そうとするだろう。

 

JALにとっては、需要は伸び、直航便の供給が減って居るという、好都合な扉が開いて居るのだ。日本人の出国市場は外国人市場に比べ、JALに高い運賃割増を払うのを厭わないし、2016年には、この羨ましい需要が過去8年に比べ伸びて居るのだ。また、英国航空(その他)との共同事業により、英国発の市場にもいくらかの商機がある。その上、拡大する需要である日本=英国間市場は、供給減を目の当たりにして居るのだ。

 

 

英国への日本人訪問者数、日本への英国人訪問者数と双方向合わせた日本=英国間訪問者数(左軸)及び日本発需要の市場占有率:2007年~2017年

Source: CAPA - Centre for Aviation, JNTO and Visit Britain.

 

日本=英国間市場は2009年のピーク前より低いまま

 

JALの毎日2便は、BAの毎日2便(成田と羽田に1便ずつ)に追加される。JALとBAはイベリアとフィンエアとともに共同事業を行って居る。その他のエアラインとしては唯一ANAが毎日1便を飛ばして居る。

 

バージン・アトランティックは、2015年2月に毎日1便の成田便(日本への唯一の便)を撤退させた。日本=英国間の便数の合計は、2018年には2014年の水準に戻るが、使用される機材の小型化および/または低密度化により、供給席数は10%下がって居る。2018年の日本=英国間市場は、毎日6便が飛び(2018年は5便)、供給席数は毎日凡そ1,400席(2018年は1,100席)あった、2009年のピーク前より低い状態である。

 

ロンドン/ヒースロー=日本間 毎日の便数(左軸)と供給席数(右軸):毎年4月2007年~2018年

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG.

 

2便目はJALにとってロンドン/ヒースローをハブとしてもっと活用する好機をもたらす。JALがロンドンに1便しか持たず、午後到着のスケジュールだった間は、JALは、地元市場への供給を強いられて居た、何れにせよ、午後の到着は乗り継ぎの機会を妨げるものだった。今や、2便目があり、朝の到着である事で殆どすべての乗り継ぎ機会が開けて来るし、ヒースローは位置的には殆どの乗り継ぎが後戻りを要するものの、JALはより多くの乗り継ぎ旅客を見込める。

 

ヘルシンキ線を開設して以来、JALは欧州乗り継ぎにはフィンエアのハブを使って来た。BAはヒースローから68の西欧の都市に便があるが、一方フィンエアはヘルシンキから58の西欧都市に飛んで居る。またBAとそのヒースローハブはJALに新たな市場を与えてくれる:即ちヘルシンキからフィンエアが飛んで居ない、38の西欧都市にBAは便を持って居るのだ。

 

ロンドン:JALがANAより大きい、稀な市場

 

JALの毎日2便目は、JALがANAより大きな運航体制を持つ、稀に見る優良市場を齎してくれる。ANAはフランクフルトに毎日2便を飛ばして居るのにJALは1便である(ドイツでANAは他にも2地点に毎日飛んで居る)。

 

パリにはANAとJALは1便ずつ。JALはANAの飛んで居ない2つの市場(ヘルシンキとモスクワ)に飛んで居るが、ANAはJALの便が無い3市場(ブリュッセル、デュッセルドルフとミュンヘン)に便を持って居る。

 

ANAとJALの欧州線毎日の便数(注記が無い限り):2018年4月時点

Source: CAPA - Centre for Aviation, OAG and Great Circle Mapper.

 

JALは、事業の規制を解かれて拡大する

 

JALの新しい東京/羽田=ロンドン/ヒースロー便は、管理監督者の目から見れば、今年2017年になって、リストラ後に課せられた規制から解き放たれたから可能になったのだ。この規制は、JALが、国家の保護のもとでリストラをした事でJALが得た特権を制限する意図で作られて居る。

この規制は、JALが、新たな事業分野に進出する事を禁じて居るが、想像されるほど、黒白が明確では無い。即ち、JALは、全く新しい、ボストン線と、サンディエゴ線を開設、そして何年も前に休止した、ダラス線を再開する事は出来た。然し、ニューヨーク線を成田発でなく、羽田発に移行する事は禁じられた。JALは、規制が終わってはじめて、成田発ニューヨーク線の1便を羽田発に移した。また、規制解除後の新規事業の一部として、メルボルン線の開設などの路線網の変更を発表した。

 

JALは、ロンドン/ヒースロー便を2014年3月、羽田の新たな昼間帯の発着枠が付与された際に、成田発を羽田に移す事が出来た。JALがロンドン2便目を、規制のある間に開設(再開)することが出来たのか否かは不明だ。

 

<関連記事参照>

 

   日本航空、成長を再開へ:着実な拡大が加速する可能性あり=労務問題がクリア出来れば 30-May-2017

   日本航空の米国路線再編、新たな拡大の開始を表す=政府の規制終了の後に 8-Feb-2017

 

JALは2009年にロンドン毎日2便目を運航して居た

 

 JALのロンドン線の展開は、どこか、便再開物語の様で、2009年には毎日2便飛ばして居たが、それからの年月で、市場は大きく変わった。即ち、JALはリストラし、円は弱くなり、そして、日本の旅客ミックスは、出国需要から、どんどん伸びる入国需要へと変貌して居る。

 

2009年3月29日まで、JALは大阪/関西=ロンドン/ヒースロー線を毎日運航して居たが、便は東京に移行して、東京=ロンドン毎日2便目が実現した。この毎日2便目は、2009年12月7日に休止し、JALは、全路線網からロンドン(そして全英国に対し)毎日1便しか運航しないことになった。

 

 

JALの日本国内空港から、毎日のロンドン/ヒースロー便:各年4月の例、2007年〜2018年

Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG.

 

ANAはロンドン毎日2便目を求めて来た

 

ここ数年来、ANAはロンドン毎日2便目が欲しいのだが、発着枠が問題なのだと言って来た。ヒースローの発着枠は、多分嬉しく無い価格だが良い時間帯へ、など枠の交換により、所有者が移り変わって来て居る。ANAにとってこの金銭と枠の問題は初耳では無いだろう:即ち新設便のためにメキシコシティの枠を得るためにANAは商業的取り決めをしたと語って居る。ANAはフランクフルトに毎日2便を飛ばして居り、パリには安全問題への懸念から出国需要が弱まるまで毎日2便を飛ばして居た。

 

欧州=日本間の全体としての伸びは共同事業に縛られて居る様だ

 

JALの追加便(復便)があっても、JALの欧州での存在感は過去に比べて小さくなって居る。これは、一部、日本の市場が安全問題を懸念して日本全体で便を減らしたパリの所為でもあるだろう。

 

より差し迫った日本=西欧間市場の話題としては、共同事業の問題がある。

 二つの共同事業(ANA/ルフトハンザ・グループとJAL/BA/IAG/フィンエア)は直航便供給席数の67%を占めて居る。第3の企業であるエアフランス-KLMグループは更に市場の20%を占める。この集中の水準(3つのグループで87%)と言うのは、大西洋横断市場に比べてさえも高いのだ。

 

更には、最近ワウとノーウエジアンの参入があった大西洋横断市場よりも参入障壁が高い。

まだ実証的な正式な調査は無いが、逸話として運賃がかなり上がって居る;その上、中くらいの乗り継ぎの選択肢は僅かであり、多くは、概して遠回りの選択肢なのだ。

 

以上

 

 

Japan Airlines to operate a second daily London flight – gaining a rare strategic advantage over ANA