当分析はCAPAが2017年7月5日に発表した
LCCs reach 10% market share in domestic Japan. Partnerships become likely - but complex
をJAMRが全文翻訳したものです。
LCC日本国内で市場占有率10%に達する=企業提携が有りそうだが、複雑
05-Jul-2017
LCCは、世界第5位の規模の国内線市場、そして、アジアで中国、インドネシアに次いで第3位の国内線市場でもある日本で、基盤を創りつつある。
現在のLCCの潮流は、2012年に始まり、懐疑的な向きが、LCCは機能しない、或は儲からないとずっと言い続けて来た日本で、今日、10%の市場占有率を持って居る。今や、LCCは、2000年代に開業しながら、ずっと伸び悩んで居る、日本の新規航空各社を追い越そうとして居る。
これからのLCCの成長は、解き放たれる可能性が有るが、統合、或は少なくともある種の協力体制が益々話題になって行くだろう。現在、LCCは4社あり、目下5社目が準備中である。以前はLCC各社は、自分の本拠地からのみ運航して居たが、今はどんどん重複する様になって居る。
ピーチは、姉妹エアラインであるANAのLCCバニラエアが、ANAの実験台として中/長距離の基盤へと移行して行く中で、現在の立場を保つ事になりそうだ。ジェットスター・ジャパンと春秋日本は、互いに、日本国内線と日本=中国線での強みを利用し合う事が出来るかも知れない。エアアジア・ジャパンは、現在開業待ちであるが、独自のスケールメリットを追求するだろう。
日本のLCC各社は、開業7年目に入って居るピーチアビエーションが、2012年3月に運航を開始し、2017年3月に就航6年目を完了した。ジェットスター・ジャパンは2012年7月に続いた。それ以来、エアアジアグループが大株主として(それでも過半にはならないが)撤退したのに伴い、エアアジア・ジャパンはバニラエアとして復活して居る暫く運航を休止したが。また春秋航空日本(スプリングジャパン)も、参入して居る。
これら、4つのLCCが日本の国内線市場で10人に1人の旅客を運んで居る。ピーチアビエーションは、ずっと着実に黒字を計上して居り、今や悠々とIPO(株式公開)を考慮して居る。
この10%の市場占有率は、如何に日本人旅客はLCCに興味がないかと言われて来たことを考えると大変な達成である。日本のLCCは他所のLCCに比べて確かにコスト高であるが、それでも従来の航空各社に比べれば強力な優位性を持って居る。
日本のLCC「エアラインが多すぎる、統合合併の時期ではないか」CAPA大阪・関西LCCサミット2017年6月Source: CAPA TV.
6年間で10%の市場占有率を達成と言うのは、大したことでは無い様に見えるかも知れないが、これは、インフラの容量制限と、旅客がANAとJALにベッタリである現状を反映して居るのだ。
LCCは、2016年3月末迄の1年間(日本の会計年度)に、10.1%の市場占有率を達成した。これが、2016年12月末迄の9ヶ月間には、9.7%に落ちて居る。1年間の総計値が待たれるが、この僅かな下落は、日本の、そして外国の航空当局の認可が下り次第、国内線の供給を国際線に切り替えた動きを反映して居る。従来のエアラインの一つ、スカイマークは、2016年3月末迄の年は、リストラ計画の一貫で、かなり存在感を失って居た。スカイマークは、今や、そのプログラムを終え、拡大を再開して居る。
これらの数字は、旅客の輸送実績を使って居るので、供給席数のデータより現状を反映して居る。何故なら日本のフルサービスエアラインの搭乗率は、LCCに比べ、かなり低いためだ。
フルサービスエアラインのグループは、ANAとJAL子会社JTAを含むからなるが、一方、新規航空会社はスカイマーク、ソラシド、スターフライヤーそしてエアドゥが構成する。LCCグループはピーチ、ジェットスター・ジャパン、バニラそして春秋日本からなる。日本の小規模・地域航空会社はレポートから除外した。
年間国内線旅客数、エアライングループ 別(左軸)及びLCC占有率(右軸):2012年〜2017年(2012〜2016年3月末及び2016年12月末までの9ヶ月)
Source: CAPA - Centre for Aviation and MLIT.
LCCは、「新規」ハイブリッドエアラインに取って代わろうとして居る
純粋なLCCは、開業が2000年代初頭に遡る「新規」ハイブリッドエアライン各社に比べ、歴史は遥かに短いが、日本に凡そ6年間存在して来た。
より短期間しか存在して居ないにも関わらず、彼らは急速に 地歩を獲得して居る。2016年3月31日迄の1年間に、LCCは「新規航空会社」の86%の国内線旅客を輸送した。2016年12月末迄の9ヶ月(入手できる最新のデータ)では、LCCは、「新規航空会社」の78%の国内線旅客を運んで居る。前述した様に、これは、「新規航空会社」であるスカイマークが拡大する一方、LCCが、国内線から国際線市場に供給を移した為である。
(彼らが、かなりの規模で、国際線事業を展開した一方で、新規航空会社はして居ないため、国内線の実績値が、LCCの影響を過小評価して居たことだけを考えても)
新規航空会社は国内線輸送実績でも、全社合わせて年間1,100万人近くで高原状態になって居る。一方、LCCはどんどん成長を続け、ずっと古い既存エアラインを今にも追い抜こうとして居る。
然し、この2つのグループは全く違う即ち、LCCは幹線で、また、より小さな路線でもどんどん旅客需要を刺激して居る。新規航空会社は、そもそもが地方の一定地域に絞って居るエアドゥなら北海道、スターフライヤーは北九州、ソラシドなら宮崎、一方スカイマークは東京・羽田において第3の規模のエアラインである。
グループ間の直接比較は難しいかも知れない新規航空会社は、最早や経済成長を刺激して居ない様に見えるが、地元の経済活動の大きな牽引役なのだ。LCC各社は需要を刺激して居る。LCCはまた明らかに、より大きな拡大への自由を持って居るが、4つの「新規航空会社」は全て、ある水準までANAと提携・出資関係にある。
近年、日本の2大主要エアラインANAとJALは、合わせて年間旅客数7,300万人を輸送して居る。毎年ほぼ変わらない数字だが、JALがやや縮小気味なのに対し、ANAが僅かに伸びて居る。
エアライングループ別年間国内線輸送実績2012年〜2016年3月末まで
Source: CAPA - Centre for Aviation and MLIT.
目下準備中のエアアジア・ジャパンはこの国の5番目のLCCになるだろう。
日本のLCCの初期段階では、新規参入組はそれぞれ独自の縄張りを持ち、発展する事が、結局は過密状態を招く事にならない様にして来た。然し、必然的にではあるが、彼らは拡大し、互いの足を踏み合う様になって来た。
ピーチとバニラエアそして先代のエアアジア・ジャパンマーク1は、彼らがともにANAが株主である事から、それぞれの独自の戦略を説明するのに最も苦労した。ANAは現在、ピーチの過半の大株主であり、バニラの100%株主である。
初期段階では、ピーチは大阪・関西、一方バニラは、東京・成田からだけ飛んで居た。然し、今や、ピーチは東京にも進出し、幾つかの国際線を、都心から近くて便利で、バニラの飛んで居ない、東京・羽田空港から運航して居る。バニラは大阪・関西からも飛んで居る。
ジェットスター・ジャパンは大阪・関西でかなりの便数の運航をして居り、エアアジア・ジャパンが基地として路線開設を計画中の名古屋でも拡大して居る。春秋日本もやはり東京・成田を基地として居るが、中国の都市とともに、主として副次的な国内線市場に便を飛ばして居る。
統合の可能性あり:ジェットスター/春秋が共同事業の利点を考える一方で、バニラエアはANAの新戦略を主導するかも知れない
CAPAの2017年6月に大阪・関西で開催した北アジアのLCCサミットでは、日本の市場ではエアラインが飽和状態にあるのか、もしそうなら、どのタイプのエアラインが統合すべきなのかを討議した。
統合には幾つかのシナリオがあるが、業界関係者に最も受け容れられたのは、ピーチとジェットスター・ジャパンが主たる国内線LCCになることだった。
2017年3月、ANAはピーチの持ち株を増やし、少数から多数株主になった。この事はANAが2つのLCC、ピーチとバニラを統合するのではという憶測を呼んだ。これは、第1印象としては、合理的だと見えるかも知れない。が、それが起こりそうにない理由が2つある。
まず、ANAは未だにバニラエアの存在の外見を意識して居るANAは、部分所有者だったエアアジアがエアアジアとANAの共同事業「エアアジア・ジャパン」から撤退した時、このLCCを救ったのだ。ANAはこのエアラインをバニラエアとして再生させた。ANAはバニラエアをやめる事は面目を失う事であり、エアアジア・ジャパンマーク1を再生させるべきで無かったと証明する事になってしまうと考えて居るのだ。
第2に、ANAは、ますます、中長距離LCCがフルサービスエアライングループの中から生まれて来る事に興味を持つ様になって居るのだ。これは、特にルフトハンザグループのユーロウイングズとIAGのレベルを睨んでの事だ。
ANAは近年、急速にそのフルサービス事業を拡大して居た。ANAのフルサービス拡大の熱が冷めるに連れ、新たな中長距離の舞台と言う領域がある事が明らかになって来た。ANAは熱心にこの領域を実験したいと考えて居て、バニラエアを中距離レジャーエアラインに変えるかも知れない。ANAはこれを慎重に行うだろうから、バニラエアが幹線を担当する様になるまでには何年もかかるかも知れない。
ジェットスター・ジャパンと春秋
ジェットスター・ジャパンと春秋航空日本は、それぞれ独立を保つが、ジェットスター・ジャパンの強い国内線路線網と、春秋日本の日本=中国路線網を組み合わせる提携をするのだ。春秋航空本社が後日、絡んで来る事は考えられるが、当面の間は、ジェットスター・ジャパンと春秋日本が、日本の地点と中国の都市の間で旅客を乗り継がせるチャンスは十分にある。両社とも東京・成田の第3ターミナルを基地として居るのだが、提携はまだ先の話だろう。
2つのケースとも、結果としてエアアジア・ジャパンが競争相手になるだろう。その他の幾つかの理由の中には、エアアジアグループは中国で共同事業を計画して居て、いつかある日、日本と中国の共同事業の点を結ぶ事になるだろうと言うものがある。
関連記事参照
エアアジア中国:共同事業のモデルを作り上げる中国の複雑な航空市場の中で23-May-2017
展望:統合は未だ先の話かも知れない、が提携には大いに理がある
理に叶った統合のシナリオがありそうに見えるかも知れないが、日本のLCC各社はまだ数年の間、少なくとも新たな成長モードにある間は、独立を守る事になりそうだ。
その間、彼らが成長し、市場が更にLCCに慣れて来るに連れ、統合する事の優先順位は変わって来るかも知れない。可能性としてのエアアジア・ジャパンの役割についてはまだ定まらないが、同社はピーチ、ジェットスター・ジャパンに次いで、日本の3大LCCになろうとするだろう。
日本のLCCの拡大は、他の市場に比べ、それほど早くは無かったが、日本はいつも違ったものになって来た。インフラと当局の規制と言うしがらみが緩和されれば、そしてLCCが旅というものの固定観念を変化させ続ければ、大きな成長の可能性が未だたくさん残されて居る。
然し、より強靭な市場での足場を確立しようとする国際線エアラインの提携の傾向が広がって行くのを見ると、ますます競争が激化する日本の市場は、この動きを歓迎する事に成るだろう。
以上
LCCs reach 10% market share in domestic Japan. Partnerships become likely - but complex