当分析はCAPAが2017年11月3日に発表した
Japan Airlines: seven months since growth restrictions ended. New flights, partners and fleet plans
をJAMRが全文翻訳したものです。
JAL:規制解除から7か月=新路線、提携先そして保有機材計画
日本航空は長い間心待ちにして居た、拡大規制の終了から7ヶ月が経ち、今や、以前に予告して居たよりも、大きな拡大を展開する為に、各要素を組み上げて居るところだ。2017年4月1日、JALは、もはや、国が支援した政府の再生計画の期間中にANAよりも有利な特典を得た事に対抗するよう設計された、自から出来る投資や、事業の発展に対する政府の規制を受ける事が無くなった。
これまでにJALは、東京/羽田と成田の空港間で、便を移行し、増便(ロンドンとバンコク)を行い、新規路線を開設(メルボルンとコナ)して居る。同社は、新たな、そして進行中の拡大計画を支えるため、ベトジェット、アエロメヒコそしてハワイアンとの提携を結んで居る。
JALはまた、基幹であるアメリカン航空との共同事業を改良して居り、間もなくアマデウスのアルテアをカットオーバーしようとして居る。JALはこれから、北米大陸の既存市場や、まだアジアへの航空便を持たない北米都市など、全く新規の市場で拡大するために、蓄積して来た能力を示そうとして居る。
JALの拡大規制終了後、最初の路線網変更は、毎日2便の成田=ニューヨーク線の1本を、明らかに便利で、ずっとより高い収入単価を惹き寄せることの可能な都心に近い空港、羽田に移す事だった。
規制のあった期間に、JALは便を増やす事は出来たし(例えばボストン、ヘルシンキ、そしてサンディエゴ)、成田から羽田へ便を移行する事も出来たが、これらは例外で、難しい変更だった。規制の終了以来、JALは新たな便を追加したが、その概要は以下の通りだ:
東京成田=メルボルン、2017年9月1日、毎日1便、ボーイング787-8:
これはシドニーへのデイリー便に次いで、JALの2つ目のメルボルン行きのデイリー便である。JALは経営破綻後のリストラ期間中に成田=ブリスベーン線を取りやめたが、歴史的に日本発需要ブームの時代には、もっと多くの便を豪州線に飛ばして居た。
豪州はアジア=北米と日本=欧州というJALの主要な国際線戦略にとって核となる地域ではないが、需要はある。豪州発日本行きの需要も伸びて居り、豪州は日本発旅客にとって安全で信頼できる目的地と見られて居る。
かなりの豪州=日本間の需要が、他のハブを通って、特にシンガポール航空とキャセイパシフィックで動いて居た。JALはANAがメルボルン線を開設する事を懸念して居た。JALの豪州での存在は、モスクワ線とともに、JALが共同事業相手なしで独自に運航する唯二つの長距離路線である。JALはカンタスからあった豪州=日本共同事業の打診を袖にして居る。
東京成田=コナ線、2017年9月15日、毎日1便、ボーイング767-300ER
ハワイの目的地は依然として日本発レジャー市場として絶大な人気を保って居るが、いずれの便もホノルル発着である。JALはハワイと日本の間でエアラインとして最大の存在である。コナはそれだけで、そしてANAが3機のA380を使って日本=ハワイ間市場での存在感を大きく高めようとして居る時に、JALの足跡を拡大してくれる。
東京羽田=ロンドンヒースロー、2017年10月29日、毎日1便、ボーイング787-8
JALの2本目のロンドンへのデイリー便(現在の成田=ヒースロー便を補完)はJALの拡大規制期間を利用して、商機について大したチェックも無く、大きく拡大したANAに対し、JALが勝利した稀な例である。
ANAはヒースローへ毎日1便を飛ばして居るが、その共同事業相手(ルフトハンザグループのメンバー)は英国=日本間に直航便を持って居ない。JALの共同事業相手の一つである英国航空はヒースローと東京の間に2つのデイリー便(成田に1便、羽田に1便)を持って居るので、ANAの1便に比べ、共同事業で併せて毎日4便を飛ばして居る。
ANA=ルフトハンザグループの共同事業は、依然としてJAL=英国航空=イベリア=フィンエアより規模が大きいが、JALはこの高収益な都市組合せに於ける強い立場には喜びを隠せない。且ては共同事業のメンバー企業間で供給席数の限界があり、JALはロンドンについては、英国航空の近距離路線網を使う代わりに殆どを地点間単純往復として売って来た。
理論的にはフィンエアとその「ヘルシンキハブ」はJALにとって欧州の小都市に行くにはより便利な選択肢ではあるが、ヒースローとBAには、フィンエアの飛んで居ない欧州内目的地に便がある事などの優位性がある。
<関連記事参照>日本航空、ロンドン毎日2便目を運航へ=ANAに対する、数少ない戦略的優位を得る 26-Jul-2017
東京成田=バンコク、2017年10月29日、毎日1便、ボーイング787-8
JALはバンコクへの季節便(北半球の冬季のみ)を追加した。この便はJALの主要な北米の接続時間帯に何れの方向にも繋がって居らず、より地元市場向けである。JALにとっては、両地域間で成長する旅客需要を摘み取ると同時に、北米線への送客のために、東南アジアで更に拡大する好機がある。ANAは東南アジアでは既にJALに追いついて居るのだ。
東南アジアからの訪日客数:2006年~2016年
Source: CAPA - Centre for Aviation and JNTO.
注)東南アジアには、ベトナム、シンガポール、マレーシア、フィリピン、及びタイのみを含む。
ANAとJAL東南アジア目的地比較:2010年と2017年
Airline |
Southeast Asian Destinations – 2010 |
Additions |
Withdrawals |
Southeast Asian Destinations – 2017 |
ANA |
● Bangkok |
● Hanoi (2014) ● Jakarta (2011) ● Kuala Lumpur(2015) ● Manila (2011) ● Phnom Penh(2016) ● Yangon (2012) |
Nil |
● Bangkok ● Hanoi ● Ho Chi Minh ● Jakarta ● Manila ● Yangon |
JAL |
● Bangkok ● Denpasar Bali ● Hanoi ● Ho Chi Minh ● Jakarta ● Kuala Lumpur ● Manila ● Singapore |
Nil |
● Denpasar Bali (2010) |
● Bangkok ● Hanoi ● Ho Chi Minh ● Jakarta ● Kuala Lumpur ● Manila ● Singapore |
Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG.
JALの拡大の殆どはアジア=北米回廊(ハワイ、海洋リゾート市場を除く)の核となるビジネスチャンスを支えようとするものだ。これは日本=北米間の地元需要と共に、日本以遠から北米への乗り継ぎ需要から成り立つものだ。
JALは太平洋横断はアメリカン航空との提携の一部として運航するので、新たな便の開設には双方にとって、合意し、促進するために、時間を要するかも知れない。
JALの国際線旅客収入内訳:2017年第1四半期
Source: JAL.
JALは現在の北米市場を拡大し、新たな市場を追加する事になりそうだ。現在の市場に於いて、JALは毎日2便の、低密度でプレミアム構成の大きな機材を飛ばして居るに過ぎない。アジア中の競合他社は、より密度の高い航空機を使って、主要市場では毎日2倍、或はそれ以上の便数を飛ばして居る。
ANAとその共同事業提携社であるユナイテッドは、東京とユナイテッドのハブを結んで居るが、JALとアメリカンには、まだこれからハブからハブへの運航を開発できる可能性がある。業界ではJALの次の北米目的地として可能性があるのは、フィラデルフィアかマイアミかと議論して居る。
アメリカン航空は、JALにとってフィラデルフィア以遠への乗り継ぎを助ける、自社のフィラデルフィアハブを増強する計画である。米国北東部では、JALはボストンに毎日1便と、ニューヨークJFKに毎日2便飛ばして居るが、両方とも、アメリカンの国内線乗り継ぎに強いハブとは言えない(ボストンではJALはジェットブルーと提携して居る)。現在のフィラデルフィア周辺の旅客需要はしばしば、東京とその他のアジアの都市に便のある、ユナイテッドのニューアークハブを使う事を選択して居るので、フィラデルフィアはユナイテッドとニューアークの対抗馬となり得る。
東京=マイアミ線はアメリカン航空とJALが長年考えて居たものだった。これは部分的には地元需要を取り込む事と同時に、マイアミにあるアメリカンのラテンアメリカハブを獲得する事を意味して居た。然し、これに代えてアメリカンは、主要都市に便を持つダラスの自社のラテンアメリカハブ(マイアミほど多くは無い)を強調して居る。このため、東京=マイアミの繋がりは幾らか緊急性を失って居るが、マイアミはアジアへの直航便を持つ事に非常に熱心である。報道によれば、同空港は、複数のアジアのエアラインと真剣な交渉をして居る。
JALはまた、インドでの足跡を拡大することに興味を持って居る。インド=日本間のビジネス、観光は共に伸びて居て、JALはインド線を北米線の助けにも使える。インド=北米線は湾岸エアラインのために、競争が激化して居るが、それは主としてエコノミークラス旅客で、JALは、インド=北米間の業務渡航の分野で、より強い役割を演じる好機がある。需要はあるものの、実収単価は難しい問題だ。JALは、インドで事業を展開し、日本の航空会社の直航便と言う選択肢を求める日本企業からの強力な支えが必要だろう。
西豪州の都市パースは、東京便の再開を熱望して居る。嘗ては、カンタスがパース=東京成田を運航して居た。報道に拠ると、パースは、JALとANA双方と話協議して居り、2社のどちらかが開設すると予想して居る。
JALは、2020年東京オリンピックに備えるため開放される東京羽田の新たなな国際線発着枠の公平な配分を確保したいと願って居る。過去には、羽田の発着枠について、JALはリストラの間に受けた政府の支援とバランスを取るために、不利な扱いを受ける様差別されて来た。追加される発着枠は、まだ明らかに限定的なものであり、JALは東京成田での国際線拡大を目指す必要があるだろう。
JALはベトジェット、アエロメヒコ、そしてハワイアン航空と提携する
JALは提携により路線網拡大の不足分を補おうとして居る。これらは市場毎に異なり、JALの加盟するワンワールドアライアンスの埒外で行われて居る。
ベトジェット:
JALのベトナム第2の規模のエアラインとの提携は、日本=ベトナムと北米=ベトナム間の旅客需要摘み取りを促進するために、ベトナム航空の少数株式を購入したANAと比べて、避けられないものだった。
JALのベトジェット提携は、ベトジェットの限られた足跡と限られた技術力から言って、より小規模なものとなるが、よく似た目的を持って居る。
<関連記事参照>日本航空、ベトジェットと提携=東南アジアから太平洋横断路線への送客を押し上げる為に 31-Jul-2017
JALは、ANAと比較する事を避けられない、もう一つの提携であるスカイチームのアエロメヒコと提携して居る。ANAは、東京成田=メキシコシティ便を開設し、米国の南に飛ぶ唯一の日本のエアラインになって居る。(JALは、嘗て、北米のその他の都市から、以遠地点としてメキシコシティと、サンパウロに飛んで居た。)
JALは、現在オンラインの北米都市からの経由便を含め、ラテンアメリカの便を検証して居るが、今の所、ANAがとって居るほどのリスクを取ることには消極的である。ANAのメキシコシティ参入以来、初期の供給過剰状態がある。アエロメヒコは、メキシコと日本を結び、当初はJALは、この便や、JALのオンライン都市であるロサンゼルスからの便にもコードシェアをするだろう。
アジア=メキシコシティ間の便には、次第に関心が集まって居る。中国南方は、バンクーバー経由で、メキシコシティ線を開始した。中国東方は、新世代航空機で、メキシコシティ直航便に意欲を燃やして居る。この様な新世代機が他のアジアのエアラインに納入されると、各社もメキシコシティ線に参入の可能性がある。
<関連記事参照>
アエロメヒコ 第1部長距離路線供給は40%拡大=アジア路線が倍増し、787保有機数が増加して 21-Jul-2017
中国のエラアイン、ラテンアメリカに於ける存在感を拡大=中国東方航空、メキシコシティを検討 04-Jun-2017
ハワイアン航空は、ANAとのコードシェアをやめ、その代わりJALとコードシェアを、そして共同事業を始める。ハワイアンは、全収入の14%を占める日本市場で、より緊密な関係をずっと模索して居たのだ。
日本は、ハワイアンにとって飛び抜けて最大の国際線市場である。特に関心が有るのは、ハワイアン航空が地元のエアラインに比べて認知度の低い、日本の副次的な都市から、ハワイへの直航便を売るのをJALに助けてもらう事だろう。ハワイアンは、ホノルル以外のハワイの目的地を売るのを助ける事が出来る。2017年10月25日の週を見ると、ハワイアンとJALは、ホノルルと日本間の全供給席の50%以上を占めて居る。
ANAは、ユナイテッドと共同事業を形成して居る為に、ハワイアンとの提携を深化させる事が出来なかった。ユナイテッドは、ハワイ=日本間市場に便を飛ばして居るが、JALの提携社アメリカンは飛んで居ない。日本からハワイへ北米大陸から乗り継ぐのは極めて遠回りになるため、アメリカンに対する心配は殆ど、或は全く無い。
<関連記事参照>ハワイアン航空、JALとの提携深化を目指す=ユナイテッドとサウスウエストを排除しようとする中で 01-Nov-2017
JALとアメリカン航空、共同事業を推進できる;JALのアマデウスへの切り替えでメリット
JALの提携の展開は、どれもワンワールドの加盟員資格の枠の外で起こり、主たるアメリカン航空との提携に取って代わろうと言うものではない。JAL-アメリカンの関係にはまだいくらも改善の余地がある;即ち、この共同事業はANA-ユナイテッドの共同事業に比べ、ずっと結合力が低いものである。
JALとアメリカンは、彼らの状況が変わるに連れ、より統合を強めて行く兆候がある。アメリカンの商品とサービスの改善はもはや提携相手、JALを悩ませる様なものではない。アメリカンは、商品で大飛躍を見せ、今や、JALから、総合的にJALに強力に高い実収単価を齎して来た、各種のより細かい問題について学ぶ事が出来る。
一方で、JALは、アマデウスのアルテアへの大きなITシステム変換をしようとして居る。アメリカンはアルテアを使って居ないが、アルテアの進んだ能力は、JALを助けるだろう。アメリカンの他の主要な提携相手は、殆どがアルテアを使って居り、アメリカンにとって、JALとより良いITリンクを進めるのが容易になる
筈だ。旅客はこれまでしばしば、JALとアメリカンの間のITの統合の欠如に不満を募らせて来たのだから。
JALの社長、植木義晴は、2017年9月、ブルームバーグに答えて、JALはA350の25機のオプションの一部を使うかも知れないと語って居る(JALは2019年から、31機を発注済みである)。JALの発注した13機のA350-1000は、777-300ER13機と、ほぼ1対1の更新に充てられる。JALは、商品としては大きくアップデートされたが、最古の777-300ERを何機か保有して居る。JALのA350-900(18機が発注済み)は、国内線便に(そして、設計を下げたタイプだろう)、と同時に国際線に(通常のタイプ)使われる予定だ。
JALのその他の広胴機の受領待ちは、14機のボーイング787である。
日本航空の保有機群概要:2017年10月30日現在
Aircraft |
In service |
In storage |
On order |
Total: |
Source: CAPA Fleet Database
発注数は、2017年10月30日以降。運航会社からの直接、そして運航会社に指名されたリース会社からを含む。
JAL fleet plan detail: FY2017-FY2020
Source: JAL.
展望:JALは考え方を変えれば、そしてより多くのパイロットが居れば、
もっと多くの事を達成出来る
JALは、自信のある拡大を促進するために、労働問題のハードルをクリアしなければならないが、短期的には実現可能だ。
長期的には:日本の企業の典型的な例で、JALの予測は極めて保守的であり、しばしば、時として、かなり大きな上方修正がなされる。JALにはもう一つの要素があって、経営破綻してからは、リスク嫌いとなり不必要に保守的となって居る。JALは自分が持って居る好機を、遅まきながら理解し始めて居る。
JALがより多くの日本経由の第6の自由需要を狙いながら、日本発着で比較的低いシェアしか獲得できて居ない現状を見ると、同社は、国際的により競争力を高めるために、更なる考え方の転換が必要だろう。
<関連記事参照>
日本航空、成長を再開へ:着実な拡大が加速する可能性あり=労務問題がクリア出来れば 30-May-2017
日本航空の米国路線再編、新たな拡大の開始を表す=政府の規制終了の後に
8-Feb-2017
ANAとJALの国際線ASK:2008年~2016年実績、2017年~2020年予測
Source: CAPA - Centre for Aviation, OAG, ANA and JAL.
以上
Japan Airlines: seven months since growth restrictions ended. New flights, partners and fleet plans