当分析はCAPAが2016年7月6日に発表した
Long haul LCCs in ascendance: Scoot prepares to fly to Europe in 2017, the world’s longest LCC route
をJAMRが全文翻訳したものです。
6-Jul-2016
長距離LCCの運航の実現を疑って居た向きには、長距離の未来が変貌しつつあると言う証拠が積み上げられて居る。今や、11社を超えるLCCが7,000kmを超える定期路線を運航し、787とA350の就航によりこれが加速して、更に増えようとして居る。また意味深いのは、そのうち5社はフルサービスエアライングループの一部門であるか、子会社なのだ。
シンガポール航空(SIA)の中長距離低コストエアライン子会社であるスクートは2017年第2四半期に欧州線の開設を準備して居る。スクートはマレーシアのエアアジアXが2012年に欧州線を休止して以来、最初の10,000kmを超える路線を運航するLCCになりそうだ(エアアジアXも欧州線を復活させると話して居るが)。
クルーバンクを装着した4機の787-8を受領して、欧州はスクートにとって、次の拡大の段階の焦点になるだろう。スクートは現在、11機の787を運航し、2016年にもう1機の通常装備の機材を追加し、現在の、8つの新たな中距離目的地路線を1年以内に開設する事を中心とする急速な拡大の段階を完了する計画である。
スクートは現在の拡大段階を2016年10月に完了する
長距離LCCであるスクートの欧州への拡大は、2017年4月に同社13機目の787を受領した後に始まり、2018年3月までに、3機の追加機材の納入とともに続いて行くと見られる。フルサービスの親会社からスクートに移管の可能性のあるものを含めて、複数の欧州の目的地が、新たな準保有機群のために検討されて居る。
スクートは、現在は、375席の787-9を6機、335席の787-8を5機使って、シンガポールなど21地点に飛んで居る。またスクートは、2016年10月早々に、同社の目的地を23地点に増やす、ジャイプール及び札幌線を開設する前に、6機目の787-8を受領する計画である。
CAPAが嘗て注目した様に、ジャイプールと札幌を追加する事で、2015年10月後半に始まった、急速な拡大の段階が完成する。スクートは、それ以来、保有機数を7機から11機に増やし、6つの新地点を開設して居る。
また、スクートは2015年7月に、同社の7番目の機材を受領した後、2つの目的地を開設して居る。2013年12月から、2015年7月までは、新規開設はせず、保有機数も6機を維持した。
2012年6月に運航を開始して、スクートは2014年と2015年上半期には、更なる成長を追求する前に、これから受領する、新しく、より効率の高い787が到着するまでは待ったほうが良いと決め、拡大を中止する事にしたのだ。
スクートは、保有機全機の787への移行を完了して
以来、黒字である
この決断は、スクートが保有機全機の787への移行が完了して以来、ずっと黒字である事から功を奏したと言える。スクートは2015年12月31日までの四半期に最初の黒字を計上、2016年3月31日までの会計年度で最初の通年営業黒字を記録して居る。
<関連記事参照>
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スクートの最長路線は2016年5月にSIAから引き継いだ、シンガポール=ジェッダ線である。
ジェッダはスクートのアジア、豪州以外では唯一の目的地である。
シンガポール=ジェッダ間は7,355kmの距離がある。現在11社のLCCが、少なくとも7,000km以上、または9時間以上の定期便路線を飛んで居る。9,000kmを超える路線を飛んで居るのは、ユーロウイングズとノーウエジアンの2社だけである。
ユーロウイングズは、2015年遅くにケルン=バンコク及びプーケット線を開設した。ケルン=プーケットは現時点では9,386kmで世界最長のLCC路線である。ケルン=バンコクはそれより僅かに短い。
欧州=東アジア路線を飛ぶLCCは、ノーウエジアンとユーロウイングズだけ
ユーロウイングズは、東アジア=欧州間市場で、わずかに2番目のLCCとなった。ノーウエジアンは2013年に787-8でバンコクへの路線を開設し、現在ではバンコク行き便をコペンハーゲン、オスロとストックホルムから運航して居る。ノーウエジアンは、2012年にエアアジアXがクアラルンプール=ロンドン、パリ線を運休して以来、東アジア=欧州間市場に参入した最初のLCCとなった。クアラルンプール=ロンドン間は10,600kmある。
オスロ=バンコクは8,665kmで、ストックホルム=バンコク、コペンハーゲン=バンコクより僅かに長い。然し、ノーウエジアンの大西洋横断の最長路線であるコペンハーゲンからロサンゼルスより少し短い。コペンハーゲン=ロサンゼルスは9,024kmであるが、バンコク=オスロは飛行時間では、より長い便である。
バンコク=オスロがノーウエジアンの路線網中で片道では最長の路線
コペンハーゲン=ロサンゼルスの11時間20分に比べて、バンコク=オスロ間のブロックタイムは12時間20分で、バンコク=オスロがノーウエジアンの路線網中で片道では最長の路線である。唯一プーケット=ケルン間が12時間30分で、LCCの飛ぶ路線としては、飛行距離と、時刻表上の飛行時間の双方で最長となる。
上の表で示した様に、LCCとしてはジェットスター航空とエアカナダ・ルージュがユーロウイングズとノーウエジアン以外では8,000km以上の路線を飛んで居る。
メルボルン=ホノルル線は、ジェットスターの最長の路線で、これも787-8で運航されて居る。トロント=アテネがルージュの最長路線で、2016年6月に767-300ERで開設されたばかりの新しい季節便である。
SIAグループは、スクートを使って、アテネ線を復便する可能性あり
アテネは、スクートにとって、可能性のある欧州の目的地の一つである。SIAは以前にシンガポール=アテネ線を運航して居て、同グループとしては、ギリシャでの存在感を再構築したいと真剣に考えて居る。アテネは基本的にはレジャー市場であり、スクートは、可能性として、親会社SIAが飛ぶより現実的な考え方と言える。
SIAはまず、2011年10月に通年の定期運航を止めた。2012年には、そして2014年と2015年にも北半球の夏のピーク月間に季節運航を行って居る。2016年は、夏の季節運航をしない事と決め、現在シンガポール=アテネ間に定期便は全く飛んで居ない。
スクートであっても、アテネへの通年定期運航は難しいと思われる。然し、定期的季節運航を開始すれば、同グループにとってはギリシャでの事業を再構築する好機を与えてくれ、魅力的である。シンガポール=ギリシャ間は、小さな市場であるが、アテネは豪州などSIAの戦略的に重要な市場の幾つかでは人気の高い目的地である。
スクートが欧州に可能性のある目的地を検討して居ることから、SIAグループ内での接続可能性は極めて重要だ
スクートが欧州に可能性のある目的地を検討して居ることから、SIAグループ内での接続可能性は極めて重要だ。アテネには、スクートは自社での豪州乗継が可能であるが、親会社SIAから、また、フルサービス域内子会社シルクエア、そして近距離LCC子会社タイガーエアからの送客も必要である。
シンガポール=アテネはほぼ9,000kmの距離があり、ケルン=プーケットより僅かに短い。SIAが最後にこの路線を運航した時のブロックタイムは、出発便で11時間20分、帰り便で10時間55分だった。
シンガポール=バルセロナが、世界最長のLCC路線になる可能性あり
スクートがギリシャの市場に参入すると決めても、アテネはスクートに取って、最長の欧州路線にならないだろう。スクートには、10,000km或は12時間以上の飛行時間となる複数の候補路線がある。少なくともその内の1つが2017年中に開設されるのはほぼ確実である。SIAが既に2016年10月から、バルセロナ=サンパウロの運休を決めている事から、欧州長大路線候補の中では、シンガポール=バルセロナが、多分、最も理にかなって居るだろう。SIAは、現在、週間3便の777-300ERによるシンガポール=バルセロナ=サンパウロ路線を運航して居る。また、週2便のミラノ経由バルセロナ便も飛ばして居る。
今の所、SIAは、サンパウロ線の運休の後は、バルセロナへの週3便直航便と、週2便の経由便を維持する計画である。然し、バルセロナは、基本的には、レジャー目的地であり、グループに取っては、スクートの長距離商品の方が、長期的には、より良い解決策だろう。
シンガポール=バルセローナより約500km長い、シンガポール=マドリッドもスクートの選択肢のひとつだ。SIAは10年以上前にパリ経由で飛んで居たマドリッド線を運休して居る。
タイ航空は2015年9月にマドリッド線を運休して居る。キャセイパシフィックはタイ航空の運休で空いた穴を埋め、2016年6月にマドリッド線を開設して居る。中国国際と大韓航空が矢張りマドリッド線を運航して居る。
マドリッドは、欧州トップ15空港の内、SIAがまだ飛んで居ない4空港の1つである
マドリッドは、欧州トップ15空港の内、SIAがまだ飛んで居ない4空港の1つである。
その他の3空港は、ヘルシンキ、ストックホルムそしてウイーンで、スクートを惹きつける可能性はやや低いと思われる。
ヘルシンキはとても地元市場が小さく、SIAとは親しくないフィンエアの送客があって初めて成り立つ所だ。ストックホルムとウイーンはスクートよりもSIAの方に合って居る。SIAは既に、シンガポール=コペンハーゲン線をカバーする共同事業をSASと組んで居て、現在、ルフトハンザグループとシンガポール=ドイツ、シンガポール=スイス間の路線をカバーする共同事業(これは将来的にオーストリアに延長も有り得る)を始める計画である。
注)SIAはモスクワ/ドモデドボ空港に運航。殆ど全てのモスクワ=東アジア便がシェレメチェボから運航され、ドモデドボにはSIAとベトナム航空しか飛んで居ないため、東アジア発着供給席数は週間約7,000席のみ。
Source: CAPA - Centre for Aviation & OAG
比較的に北アジアと上手く乗り継げるのに比べて、マドリッドには東南アジアへの定期的な直航乗り継ぎ便が無い。マドリッド=東南アジア間市場では、LCC商品は長期的には、より現実的な選択肢になりそうだ。
SIAは、ローマとマンチェスターをスクートに移管する可能性あり
スクートにとって、欧州でのその他の可能性としては、SIAのイスタンブール、ローマそしてマンチェスターの移管を受ける事もあり得る。シンガポール=マンチェスターはこれら可能性のある路線の中では、最長路線となるが、シンガポール=マドリッドより僅かに短い。
SIAは現在マンチェスター線に毎日便を飛ばして居るが、ミュンヘン経由のワンストップ便である。キャセイパシフィックは2014年遅く、香港発の直航便をマンチェスターに開設した。海南航空は、2016年6月に北京からマンチェスターへの便を開設し、マンチェスターには東アジアに繋がる2つの直航便が出来た。
マンチェスター市場での直航便の商品が入れば、SIAグループはキャセイパシフィック及び湾岸のエアラインとより強力に戦える事になるだろう。エミレ―ツ、エティハドそしてカタール航空はどれもマンチェスターから東南アジア及び豪州のいくつかの都市へ、競争力あるワンストップ便を提供して居り、一方、SIAは現在2地点経由の商品をマンチェスター=シンガポール以外の全都市の組み合わせで提供して居る。
SIAは季節により、イスタンブールに週5便から7便を飛ばして居る。SIAはまた、ターキッシュエアラインとのコードシェアを行って居るが、これが共同事業に格上げされれば、SIAとしてシンガポール=イスタンブール路線にフルサービスの存在感を維持出来る事になるだろう。共同事業に出来なければ、SIAにとってはターキッシュと戦うのは難しいため、路線をスクートに移管する事が現実的な代替案となるかも知れない。
ローマは現在、SIAが季節により週2便から3便のみの運航を行って居る。ローマ線をスクートに移管する事は、どの市場であっても、その程度の便数ではプレミアムな地位を保つ事は難しく、微妙な選択肢だ。
SIAグループは、スクートが欧州で存在感を高める事を必要としている
SIAは現在、欧州に13の目的地を持って居るが、2016年7月21日にはデュッセルドルフが加わり、新しいA350-900を使って14番目の目的地を開設する予定だ。グループは、このデュッセルドルフの開設でも明らかな様に、新たな欧州地点を加えるにあたり、フルサービスの親会社を使う事に未だ熱心である。
SIAの新しい保有機A350は、欧州でのSIAの新たな商機を開く
SIAの新しい保有機A350は、欧州でのSIAの新たな商機を開くが、それは、強いプレミアム需要のある市場に限られる。A350は777-200ERの後継機だが、それよりもわずかに小さい。然し、より大きなビジネスクラス用スペース及びプレミアムエコノミー用客室を持って居る。
スクートの787機材は、充分なプレミアム需要の無い、新たな(そして場合によっては現存する)市場に、より良く適合するだろう。SIAが777-200ERを退役させるにあたり、同社は、貧弱な欧州路線で、プレミアム席の供給を増やすのか、それとも路線をスクートに移管するのかの選択をしなければならない。
コペンハーゲンの様な777-200ERの路線の幾つかには、A350-900が明らかに正しい選択である。ローマの様な、それ以外の路線には、スクートの787が最善の選択だろう。
SIAは既に、2016年5月、シンガポール=アムステルダム線を777-200ERから、A350に変更して居る。SIAはコペンハーゲン線にA350を起用する事をまだ明らかにして居ないが、コペンハーゲンは比較的プレミアム需要の強い市場であり、SIAがSASと共同事業を実施して居て戦略的にも重要である事からも、その可能性は高い。
アムステルダムのA350移行に伴い、コペンハーゲとイスタンブールは、依然として777-200ERで運航されて居る最後の欧州線となった。バルセロナとマンチェスターは、現在、より大きな777-300ERで運航されて居るが、両地点とも、別の目的地と組み合わされて居る(バルセロナはサンパウロ、ローマと。マンチェスターはミュンヘンと)、これを端末化する為にはSIAのA350か、スクートの787が必要となるだろう。
スクートは、また、自らの拡大を継続する為に、戦略的にも欧州を必要として居る。同社は、発注済みの、残り9機の787を受領するに当たり、アジア太平洋に完全に依存する訳に行かない。
スクートが既に4地点に就航して居る豪州には、拡大の余地は限られて居り、中東では、就航済みのジェッダ線以外の路線が認められそうにない。南アジアでは、スクートは、更なる拡大を考える前に、最初のインドの3路線(全て2016年に就航)を成熟させる必要がある。北アジアでは、依然として拡大の余地はあるが、既に、スクートが比較的に上手く就航して居り、残りの発注済み機材を充てる程の規模にはならない。
スクートは、2017年4月からの会計年度中に受領が予定されて居る4機の787にクルーバンクの装着を選択して居る事で、基本的には欧州線の拡大には既にコミットして居る。この機材の最初のものは、2017年4月に受領が予定されて居り、シンガポール市場で夏場の出国需要のピークが始まる直前の、2017年5月頃に欧州線開設に使われるものと思われる。
次年度に納入される予定の4機の787−8は、主に、或は完全に、欧州線に使用されるだろう。これらの航空機は、メインデッキ上の天井にあるクルーバンクへの階段を装着するために、現在の787−8よりも座席数が少なくなる予定だ。座席設定の密度が低いことから、これらの機材を現有のどこかの路線に使う事は、理想的とは言えない。スクートには、現在のところ、10時間を超える路線は一つもないので、この乗員の休息スペースは必要として居ない。
クルーバンクを4機の航空機に装着したまま運航すると決めるのは、かなりの投資をも意味する。SIAは、SIAエンジニアリング社からの改修提案も検討したが、メーカー側の選択肢のままとする事に決めて居る。
スクートは、最初の欧州路線の開設の約6カ月前には、開設発表と販売を開始する準備をして居る。従って、最初の1~2路線についての決断は向こう数カ月中になされる模様だ。これで、スクートは未だ無名のブランドである欧州でのマーケティング活動を始める時間を確保できる。
戦略的に、スクートは自らを長距離エアラインとして確立する必要がある
欧州線への拡大には難題が多く、同社は、全体として収益性を保つ事が難しい事態になるかも知れない。然しながら、戦略的に、スクートは自らを長距離エアラインとして確立する必要がある。
スクートは、仮に燃油価格が今より高い環境下にあっても、長距離路線を黒字にする可能性のある、コスト構造と適正なタイプの航空機を持って居る。充分な航続距離を持つものの、機材として充分に効率が良いとは言えないスクートの最初の保有機である777-200を、欧州線に投入する検討は一切されなかった。
スクートは東南アジア=欧州間市場で猛烈な競争に直面するだろう
スクートは東南アジア=欧州間市場での唯一の新らしい競合社では無い様だ。エアアジアXが2018年にA330-900neoを受領した後に、欧州線の復活を検討して居るところである。
エアアジアXとスクートは幾つかの市場で重複する可能性があるが、SIAが強固なフルサービスの地位を維持する計画であるロンドンでは無いだろう。
スクートは、欧州で急速にその存在を確立し、東南アジア=欧州間市場での主導的LCCになる好機を迎えて居る。然し、SIAグループは2つの長距離ブランドを注意深く管理し、スクートの欧州路線の全てで、充分な送客が上手く行われるのを確かめる必要がある。
他のLCCとの競争は比較的限られて居る
他のLCCとの競争は比較的限られて居るが、東南アジア=欧州間市場で、積極的拡大を進めて来た、中東のフルサービスエアラインに対しては、激しくなるだろう。
SIAの、欧州での拡大にはスクートを使うとする決断は、東南アジアの他のLCCに対してと言うより、中東のエアラインに対応したものだ。東南アジア=欧州間及び、豪州=欧州間の市場の底辺で、SIAは、日常的に安い運賃を提供するフルサービスエアラインと戦うには、スクートを、より効果的に使えるし、一方で、SIA自らは、よりプレミアムの分野と、より実収単価の高いエコノミー旅客に的を絞ろうとするのだ。
以上
Long haul LCCs in ascendance: Scoot prepares to fly to Europe in 2017, the world’s longest LCC route