当分析は、CAPAが3月24日に発表した
Tokyo Narita Part 2: low-cost terminal opening underlines airport's short haul low cost evolution
をJAMRが翻訳したものです。
2015年4月8日、東京成田は、大阪関西、沖縄那覇に次いで日本で3番目となる低コストエアライン専用ターミナル(LCCT)をオープンする。このLCCTは、ジェットスター・ジャパン、バニラエアと春秋日本、それに、ジェジュエアとジェットスター航空(豪州)の、5社のLCCを迎えて開業する。この5社は、成田に於けるLCCの全発着数の78%を、供給席数の74%を占める。また、この程、中国の昆明で開催された、「ルーツ・アジア会議」で成田空港会社がCAPAに語ったところに依れば、このLCCTは乗継サービス用の機能を備えて居る。
このLCCTはLCC各社とオープンスカイ協定を支持して居る、最近の日本の航空行政の枠組みの劇的な変化を示す新たな証明である。2015年、LCCは、国内線供給の67%を含め、成田に於ける供給全体の17%を占めて居る。これらの数字は何れも、2011年にはほぼゼロだったのだ。成田に於けるLCCの供給席数の1/3以上は、国際線であり、ジェットスター・ジャパンが成田からの国際線を開設し、タイガーエア台湾やインドネシアエアアジアXが成田に新たなサービスを開始することから、これは更に増えると予想される。
東京成田の焦点は徐々に変化して居る:フルサービス長距離から低コスト近距離へ
2008年まで、東京成田にはLCCが居なかった(そして最初に飛んだのは、外国社だった)。
OAGデータによれば、2015年、LCCは、供給席数のほぼ18%を占めて居る。これには、国内線供給席数の67%、国際線の8%の浸透率が含まれて居る。東京成田には、国内便の数が少ない。国内線は、国際線の旅客を日本の別の地点に繋ぐことを主に考えて居るからだ。羽田により多くの国際線発着枠が開かれると、国内送客便は減ることが考えられる。一方、JALは、より幅広い国内便を提供してくれる、ジェットスター・ジャパンの成田発国内線路線網でコードシェアをして居る。
東京成田に於けるLCCの供給席数占有率:2005年〜2015年
明確にして置きたいのは、成田は基本的にフルサービス国際空港であることに変わりは無いということだ。この10年の残りの期間に、羽田の発着枠が増えるとしても、限られた数だろうし、その配分は慎重になされ、しばしば政治絡みになる。仮に多数の発着枠が使用可能になったとしても、日本の航空当局はエアライン各社に、羽田で拡大するなら、成田の便を維持する事を求める(これは良し悪し入り混じった結果となって居る)。成田は最早、フルサービスの国際線供給だけに頼る訳に行かなくなって居るのだ。
国際的には、長距離便が今でも支配して居る。成田の国際線平均区間距離は2008年の5,114kmから2015年の5,046kmへと、ほんの1%短くなっただけだ。然し、全便合計の数字を見ると(国内線を含めて)、平均区間距離は2008年の4,696kmから、2015年の4,093kmへと、13%もの減少が生じて居る。
2005年、国内線の供給席数は全体の5%を占めるに過ぎなかった(しかも、しばしば低搭乗率だった)のに対し、2015年、その占有率は18%になろうとして居る
2015年、成田の供給席数は2005年に比べ2.5%減る事になるだろうが、区間距離でも見たように、その構成は変わって居る。2005年、国内線の供給席数は全体の5%を占めるに過ぎなかった(しかも、しばしば低搭乗率だった)のに対し、2015年、その占有率は18%になろうとして居る。
国内のLCCは全供給合計の11%を占め、国内のフルサービス・エアラインが残りの6%を死守して居る。国内フルサービス・エアラインは東京羽田の方が遥かに大きい。
東京成田、エアライン・タイプ別供給席数:2005年〜2015年
成田で、国際線LCC部門は拡大して居る。当初は、エアアジア・ジャパン(現バニラエア)だけが、国際線の便を提供して居て、ほとんどが外国のLCCの話だった。成田を基地とする他のLCC2社(春秋航空日本とジェットスター・ジャパン)のうち、春秋日本は国内線だけを飛んで居り、一方ジェットスター・ジャパンは2015年夏に、成田からの国際線を始める予定だ。ジェットスター・ジャパンは2015年3月、国際線を開始したのだが、これは大阪関西空港からだ。
関西を基地とするピーチ・アビエーションは成田に基地を開設しようとして居るが、現在のところ、国内線だけである。(ピーチは羽田から深夜帯の発着枠を使って、国際線開設を予定して居る。)
<関連レポート参照>ピーチ・アビエーション、東京を基地として日本の路線網を固める=春秋ジャパンは増資を図る 29-Jan-2015
2015年3月現在、東京成田のLCC供給席数の36%は国際線で、供給は年内に更に追加されるので、占有率は上昇するだろう。
成田は国際線旅客をいくらか羽田に奪われて居る。然し、その国際線旅客の退潮は、何も羽田だけの所為では無い。むしろ、エアライン各社は東京(そして日本)から完全に撤退して居るのだ。同様に羽田の国内線の拡大はエアライン各社が成田から羽田に便を移せると言う理由からだけでは無い。羽田の発着枠は、たぶん望まれたほどの新たな需要とは言えないとしても、新たな成長を生み出しているのだ。
東京地区空港の国際線(羽田と成田)の旅客数は2014年に、2008年に比べて16%増えて居り、2013年対比では4%伸びて居る。
東京羽田と東京成田の国際線旅客数:2008年〜2014年
2014年、羽田の国内線旅客総数は2008年に比べて3%落ちて居る。2014年、東京地区の国内線旅客数合計では、2008年対比で4%増加して居る。羽田で減少した主な原因は、成田でLCCの供給が伸びた事では無く、供給削減を引き起こしたJALのリストラである。
東京羽田と東京成田の国内線旅客数:2008年〜2014年
Source: CAPA - Centre for Aviation and MLIT
東京成田には13社のLCCが就航。国内線LCCは新たな目的地を追加している
OAGデータに拠ると、2008年4月、東京成田には国内9空港への便があったが、2015年4月には17空港に増えて居る。LCCが8つの国内目的地を追加したのだが、成田からその地点に飛んでいるのは彼らLCCだけである。
それでも2008年4月に48地点、2015年4月には49の目的地を持つ、東京羽田に比べると小さなものだ。目的地の数で見ると、2008年には成田は羽田の19%だったが、2015年には35%になる予定である(目的地の数だけの話であり、便数や供給席数では無い)。
東京成田からの国内線目的地:2008年対2015年
Airport |
2008 |
2015 |
Amami |
- |
Vanilla |
ANA, JAL |
ANA, JAL, Jetstar Japan,Peach |
|
ANA |
ANA, Spring Airlines Japan |
|
- |
Jetstar Japan |
|
Komatsu |
ANA |
ANA |
Kumamoto |
- |
Jetstar Japan |
Matsuyama |
- |
Jetstar Japan |
ANA |
- |
|
ANA, JAL |
ANA, JAL |
|
- |
ANA |
|
Oita |
- |
Jetstar Japan |
Okinawa |
ANA, JAL |
ANA, Jetstar Japan, Vanilla |
ANA, JAL |
ANA, JAL |
|
Osaka Kansai |
- |
Jetstar Japan, Peach |
Saga |
- |
Spring Airlines Japan |
Sapporo |
ANA, JAL |
ANA, JAL, Jetstar Japan, Peach, Vanilla |
ANA |
ANA |
|
Takamatsu |
- |
Jetstar Japan, Spring Airlines Japan |
Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG
2015年3月現在登録されているスケジュールに拠ると、2015年4月、東京成田には13社のLCCが就航する予定だ。
目的地は主として、北アジアと東南アジアだが、ジェットスター航空(豪州)が豪州まで飛んで居る。ジェットスター航空は、エアアジアX、スクートとタイエアアジアXに加えて、成田で広胴機を運航するLCCの一つである。間も無く、スクートのタイに於ける子会社ノックスクートがこれに続く予定だ。
セブパシフィックはA330を運航して居るが、東京成田には飛ばして居ない。同社はA330を主として中東、豪州そして幾つかの域内区間に使って居る。最近の長距離LCCであるインドネシア・エアアジアXは、日本に就航する予定だが、現在、当局の認可を待って居る。アジアで、残る唯一の広胴機を運航する長距離LCCである、ジンエア(1機、777−200を持って居る)は、日本に777で運航する計画は明らかにして居ない。
日本からのLCCの目的地
LCC |
Destination(s) |
Busan |
|
Eastar Jet |
|
Jetstar Airways |
|
Jetstar Japan |
Fukuoka, Kagoshima, Kumamoto, Matsuyama, Oita, Okinawa, Osaka Kansai, Sapporo, Takamatsu |
Fukuoka, Osaka Kansai, Sapporo |
|
Scoot |
|
Spring Airlines Japan |
Hiroshima, Saga, Takamatsu |
Vanilla Air |
Amami, Hong Kong,Kaohsiung, Okinawa, Sapporo, Taipei Taoyuan |
Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG
<関連レポート参照>
タイのノックスクート、日本、中国、そして韓国乗入れ準備整う=開設の遅れが乗り越えられれば 16-Feb-2015
LCCが日本・香港間の観光需要減退を取り戻せる=香港からの訪日客も拡大 14-Nov-2014
バニラエアとANA、二枚看板戦略を採る=東京-香港線で 13-Nov-2014
新しい中華航空の子会社タイガーエア台湾、急速な拡大を目指す=台湾初のLCCとなって 31-Oct-2014
インドネシア・エアアジアX、当局の認可のハードルと遅延に直面=然し、ついにメルボルン線就航認可を獲得 10−MAR−2015
LCCT、第3ターミナル(T3)が5社のエアラインと乗継施設とともに開業
成田の低コストターミナルは、2011年にLCC各社が成田に就航する計画を発表した際に検討された。そのターミナルが、当初13のLCCのうち5社(ジェットスター・ジャパン、ジェットスター航空(豪州)、ジェジュエア、春秋航空日本、そしてバニラエア)が使用する形で2015年4月8日に開業する予定である。成田に新たなハブを築いたピーチ・エビエーションは、恐らく部分所有者であるANAとの乗継サービス提供のために、引き続き第1ターミナルを使う予定だ。(ANAはLCCTを使う予定のバニラエアの100%所有者でもある。)
LCCTは12の国内目的地と海外の9地点への便を提供する。
OAGデータに拠れば、T3を使う5社は成田におけるLCC便の発着の78%を構成し、LCCの供給席数の74%を占める。ピーチは供給席数と便数では、成田に於ける第3の規模のLCCである。発着回数ではピーチは9%を占める。矢張りLCCTを使わない予定のタイ・エアアジアXは発着回数では、ジェジュエアと同じだが、高密度の座席仕様のA330を使うので、A320のジェジュエアに比べるとほぼ2倍の供給席数を持って居る。
東京成田のLCCの発着回数占有率:2015年4月
LCCTの処理能力は、年間750万人。2015年3月現在のスケジュールに拠れば、現在成田に就航して居るLCC13社は、2015年にほぼ800万席強を供給する。80%の搭乗率と仮定すると、彼らの運ぶ旅客は2015年、640万人になるが、これは彼らが増便などで供給を拡大すること、或いは、成田に就航する計画はあるが、まだスケジュールを登録して居ない、新規のLCC(タイガーエア台湾とインドネシア・エアアジアX)については含んで居ない。
東京成田、LCCの供給座席占有率:2015年4月
Source: CAPA - Centre for Aviation and OAG
LCCT、第3ターミナル(T3)は、多くのLCCが現在過渡的に使用して居る、第2ターミナルの北側500mの位置にある。第2ターミナルは、主としてワンワールドに加盟するエアラインが使い、第1ターミナルは、主としてスカイチームとスターアライアンス加盟社が使って居る。
このLCCTは、使用料の割引をする予定だ。
東京成田のターミナル配置図:2015年4月
(各アライアンスはターミナル内に独立したエリアを配分されて居る)
T3は、当初、4箇所の国際線用、5箇所の国内線用の駐機スポットを持つ計画だ(別の情報によると、一度に10機までのハンドリングが可能との事である)。成田空港に依れば、広胴機も収容可能で、ターミナルは将来的には更に拡大できる様になって居る。搭乗橋(ジェットウエイ)は設置されて居ないが、各駐機スポットに行く部分は殆ど屋根に覆われて居る。
乗継サービスは可能である。これらは嘗ては不必要と考えられて居たが、LCCはますます、ハイブリッド化して居るのだ。
LCCTの詳細図:2015年4月
T3は床面積が66,000㎡ある。この中には、3階の1,200㎡の出発免税店(カフェに加え)、2階メイン出発ロビーの小売店エリアとフードコートがある。
成田空港に依れば、このフードコートは日本の空港で最大の規模で、400人を収容出来る。
出発ロビーには24時間営業のコンビニ(成田にはカーフューがあるにも関わらず)、本屋やその他商店が開店する。
LCCTのフロアプラン:2015年4月
Source: Narita
LCCTの外観:2015年4月
Source: Narita
<関連レポート参照>CAPAエアライン・リーダー誌より
東京成田には発着枠がある=そして割引料金は重要である
東京羽田ではもう拡大が出来ないエアラインに対して、成田はビジネスを獲得しようと懸命に働きかけて居る。料金の安い地上交通機関を推進し、宿泊の選択肢を増やし、新たな人口分布を見せる回教徒の為に、ハラルの資格を持ったレストランを用意することさえ厭わない。成田は2015年の北半球の夏のシーズンに、新たな発着上限の毎時68回を記録する予定で(2020年までには72回に増える)、(カーフュー時間帯以外の)17時周辺を除く全ての時間帯に発着枠が入手可能だ。
料金割引も大きい:追加重量に対して5割引、そして新規路線に対して大きな割引率を適用
料金割引も大きい:追加重量に対して5割引、そして新規路線に対して大きな割引率を適用する。エアラインにとっての新たな路線は(ANAの成田=ヒューストンの様な)初年度に20%の割引、2年度目に10%の割引がある。成田にとって、全く新しい路線は(エチオピア航空のアジスアベバ線の様な)、初年度、更に30%、2年度目に15%の割引がある。合計すると、新路線は初年度に100%のリベートをもらえる事になる。
東京成田の収入実績は最強ではないが、米国エアラインの供給が減って行き、新世代が拡大するなど、それには多くの要素が介在して居る。上手く行けば、大阪関西、沖縄那覇両空港に次ぐ、このLCCTが今後の成長を支えて呉れるだろう。それは、全く異なった性格のものだが、大きな成長の可能性を秘めた分野である。アジア各国の多くの空港が、今でもその受け入れに四苦八苦して居る時に、成田はLCCの可能性を認識したのだ。
以上